きつねとべっつりコーラのブログ。

きつねとべっつりコーラの2匹が、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。生物多め。

恐竜だけが古生物じゃない!恐竜時代の「その前」を描いた「古生物たちの不思議な世界」が面白い!

前回は「ゴジラ」という万人にとっての「お馴染みの映画」について書きましたが……今回は私の好きな分野のとある本について書こうと思います。


……要するに、「読書感想文」なのですね。


きつね、小さいころからこれが苦手でして……上手く書けるかひじょうに自信が無いのですが、とりあえず書いてみるのですね。

 

さて、問題の本ですが……こちらなのですね。

 

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はい出ました、古生物です。

裏表紙はこちら。

 

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いきなりマニアックな香りがしてきたと思うのですが、以前こちらの別の本を読んでからというものこの本がどうにも気になっていたのですね。

 

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こちらは新聞の広告に載っていて、気になったので買ってしまったものなのですね。

名前の通り古生物たちが「お馴染みの日用品と一緒に」置かれており、サイズが一目でわかるようになっているのですね。

 

最近恐竜を扱った続編が出たようですが、こちらの本についての記事はまた別の機会に書くことにして……。


……なんでこの本を見て「古生物たちのふしぎな世界」が気になったのかというと……2つとも作者が同じなのですね。

書いたのは土屋健さんというサイエンスライターの方で、この2冊以外にも古生物の本をいろいろ書いておられる、そっちの世界ではかなり有名な方のようです。

 

古生代の「歴史書

さて……、感想うんぬん以前に、そもそもこの本がどんな本なのかわからないことにはお話にならないと思うので、まずは本の内容をざっとかいつまんで説明するのですね。


「リアルサイズ古生物図鑑」はその名の通り図鑑であり、またこのイメージがあったので「古生物たちの~」も最初は単なる図鑑かと思っていたのですね。

ですが実際この本はただの図鑑ではなく、本全体を通じて古生代という時代にスポットを当て、その始まりから終わりまでの地球環境や生態系の変化を、そこに生きた動物たちを通じて解説するという、言ってしまえば「地球の歴史書」になっているのですね。


つまり、我らが日本史の中の戦国時代に織田信長だの豊臣秀吉だの数々の登場人物が出てくるように、地球の歴史の中の古生代という時代に登場人物としていろいろ出てくるのが、この時代の古生物たちというわけです。

 

……さて、私は今、何の気なしに古生代という言葉を使いましたが、そもそもこの用語がマニアックなのですね。

つまり、あまりなじみのない方にとってはいささかわかりづらいと思うので、ここでざっと説明するのですね。


地球が誕生してから今の今まで、およそ46億年の時間が経っていると言われていますが、この長いなが~い歴史の中で、「地層」として当時の記録が残っている時代のことを地質時代と呼ぶのですね。

そしてこの地層に含まれている生物などの痕跡……「化石」を元に、学者さんたちは当時の地球の様子を探っていくのですね。


……つまり、古文書を読むことによって日本史を紐解けるように、地球史においては「地層」を調べることによって過去の出来事を理解することができるのですね。


さて……、日本史に登場するそれぞれの時代に「江戸時代」だの「安土桃山時代」だのという名前がついているように、地球史に登場するそれぞれの地質時代にも名前がついているのですね。


地質時代は大きい方から順に「累代」「代」「紀」「世」という階層で分類されていきますが、生き物たちが現在の地球のような形で多様化した時代の「代」は古い方から順に

 


の3つに分けることができます。

新生代は今の私たちが生きている時代で、中生代はいわゆる「恐竜時代」。

そしてその前にある古生代が、この本で取り扱われている時代なのですね。


この本ではこの古生代にスポットを当て、その初めから終わりまでの変遷を、それぞれの時代に生きた生き物たちを通じて解説しているのですね。


それはつまり、「みんな大好き恐竜時代」の手前で本が終わってしまうということです。

恐竜好きな人たちは少々物足りなく感じるかもしれませんが、本の帯にもある通り「恐竜だけが古生物じゃない!」というスローガンのもとに、恐竜以前の歴史と生き物たちについて熱く語っていくのがこの本の趣旨なので(?)、この構成は的を射ているのですね。


また、上で「代」の下には「紀」という時代区分があると書きましたが、古生代の中身も当然いくつかの「紀」に分かれるのですね。

それは古いものから順に

 


……の6つなのですね。


カンブリア紀以前の時代は「先カンブリア時代」と呼ばれ、生き物たちはそれほど多様化してはいませんでした。


………少なくとも化石記録としては残っていない、ということです。


それがカンブリア紀になり、生き物たちが一気に多様化し、現在生きている全ての生き物たちの体のつくりが出そろったのですね(厳密にはおそらく前から多様だったものが体が硬くなるなどしてようやっと化石として残るようになった。ちなみにこの変化を「カンブリア爆発」と言ったりするのですね)。


この本では、先カンブリア時代最後の時代であるエディアカラ紀に始まり、古生代最初の時代であるカンブリア紀から最後の時代であるペルム紀二畳紀)まで、各々の時代に各章を割り当てながら、順番通りにそれぞれの時代と環境の変遷、当時の生き物たちを……ついでに我々の系統である脊索動物がどうなっているのかを……解説しているのですね。


まさに古生代の歴史書です。

 


わかりやすい古生代年表

さて……問題の感想文なのですね。


一言で結論を言ってしまうと……私としては非常に大満足なのですね。


まず、古生代」という目の付け所が素晴らしいのですね。


カンブリア紀には現在の全ての動物の門(≒「背骨がある」だの「貝殻+軟体でできている」だの「関節の付いた足がある」だの、体のつくりの基本コンセプト)ができあがったと言われています(それどころか当時はもっと多くの、今では無くなってしまった「門」があったと言われています)。

なので、カンブリア紀に始まりペルム紀に終わるまで、古生代を丸ごと取り扱うということは、それだけで現在の生き物たちの「はじまり」を探ることになるのですね。


……つまり、単に昔の生き物の姿を垣間見るというだけでなく、現在の動物を知るという意味でも、この時代を取り扱うことは非常に大きな意味があるのですね。


その後の中生代(恐竜時代)もそれはそれで現在の生き物たち(鳥類など)の「はじまり」を知る手掛かりにはなりますが、本にも書かれている通り、中生代に生きている動物たちは既に「現代型」の動物であり、言ってしまえば「今生きている動物とあんまり大して変わらない」のですね。

……恐竜が今の動物と「大して変わらない」のかよとツッコミが来そうですが、古生代に生息していた妙ちくりんな生き物たちに比べれば、恐竜はまだまだ「今風」の動物なのですね。


つまり、中生代は動物全体の歴史から比べると「物語の中盤」であり、しかも大分「現在地点に近い位置」であるということです。


どんなにおもしろい物語でも、途中から読み始めてしまってはお話の内容はつかめませんし、それでは物語そのものの魅力をちゃんと理解することはできません。


同じように生き物たちの進化の歴史や、今現在どうしてそのような姿をしているのかといったようなことも、そのはじまりであるカンブリア紀(欲を言うのならばそのさらに前の時代であるエディアカラ紀)から知ることによって、初めて本当の意味で理解することができるのですね。


今まで私は古生物たちを解説した図鑑はいくつか持っていましたが、このように年代ごとに当時の時代背景を中心にして生き物たちを紹介してくれる本は初めて見たのですね。


まるで本全体が1つの大きな年表のようです。


これは私にとって記念すべき「地球生物史入門年表第一号」となってくれたのですね。


また冒頭にそれぞれの時代を順番に並べた年表があり、またそれぞれの章が各時代に対応しているのも非常にわかりやすい構成だと思います。


まさに初めから終わりに向かって順番通りに地球の生物の歴史という壮大な物語を書き記してあるのですね。


そしてそこに登場するそれぞれの登場人物たち(もちろん生き物たちのこと)の何と魅力的なことか……。


わざわざその時代を代表する「THE その時代」的な生き物たちを選んで登場させているようで、ここに作者のこだわりが感じられるのですね。

きっとこの本で初めて古生物の世界に触れる人たちは、彼らのその奇抜かつ魅力的な姿を前にメロメロになり、古生物ワールドにどっぷりと引きずり込まれて「古生物オタク」になってしまうに違いありません。

 

………作者の思惑通り………。

 

もちろん、単に文章のみの解説だけにとどまらず、殆ど全ての生き物たちが色付きの美しいイラストとして登場しているのですね。中には化石の写真だけのものもありますが。


この色付きのイラスト……難しい言葉で言うなら「復元図」にもまた秘密があります。


古生物の復元図というものはどうにも描く人の主観が混入してしまうため、同じ生き物でも復元する人によって大きく違っていたりすることがあるのですが、この本に登場する各生き物たちのビジュアルはのちに(2018年つまり去年に)発売されることになった「リアルサイズ古生物図鑑」のそれとおおむね一致しています。


……つまり、2冊そろえてそれぞれの生き物たちを見比べる時に、姿形が統一されているので迷わないのですね。


たとえばこの本でイノストランケヴィアという動物の絵を見て、「これ、リアルサイズだとどうだったんだっけ?」となった時に「リアルサイズ古生物図鑑」を開けばすぐに「ああ、これか!」と見つけることができるのですね!


また、当然ですがイメージが崩れません。


つまり、ある図鑑である古生物の復元図を見て「何このコ可愛い~!」なんて気に入って、それから別の図鑑を見た時にだいぶイメージの違う復元図で載っていたりすると、そのあまりのギャップに「ナニコレこのコじゃない……」などと幻滅してしまうことがわりとよくあるのですね。


ですが、この土屋健さんのシリーズは(私は今のところこの2冊しか知りませんが)、生き物のビジュアルが殆ど統一されているため、そのような「イメージ崩れ」が起きないのですね!作者が同じなんだから当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが。


なんにせよ……こ、これは……、


古生物ファンにとっては大変うれしいのですね!

 

もちろん絵だけではありません。文章もかなり工夫されています。


というのも、地球史や古生物学などというとなんとなく小難しい学問チックな「である」調のいかにも「門外漢は手を出すなかれ」と文章そのものが主張しているような文体になってしまいそうな気がするのですが、この本はそんなことは全然なく、むしろ初めての人でも肩の力を抜いて読むことができるのですね。


これは本そのものが「普通の人にも古生物の魅力を解りやすく届けたい(超訳)」みたいな趣旨で書かれているので当然かもしれません。


難しいものを難しい専門用語でそのまま伝えるだけでは、本当の意味で「説明している」とは言えません。

難しい用語をわかりやすい言葉に置き換えてこそ、初めてちゃんと説明したことになりますし、またそれができるのはその用語を正しく理解している人だけなのですね。

「わかりやすい文体」というのはこのようなわかりづらい領域を扱う書籍にとっては無くてはならない条件だと思いますし、この本は見事にそれを満たしているのですね。


……これは小学生でも読めます。


私は恐竜をはじめとする古い生き物(もちろん現在の生き物たちも)は昔から好きでしたが、当時の私は子供が気軽に読めるような本に残念ながらあまり出会えなかったのですね。


ですがこの本はまさに当時の私が読みたかった類の本であり、子供のころの私が見たら熱心に熟読して夜寝る時も一緒に寝たに違いないのですね。


こ、この本を……小さい頃の私に見せてあげたかった……。


ええ、まあ、この本の出版は2017年なので……とうてい時代が合いませんが……。

 


古虫類もでてくると……

さて……散々褒めちぎってしまったのですね。

もはや私の独断と偏見に満ち溢れたこの文章を感想と呼んでいいのか知らん。


ですが……やはりどんなに素晴らしい本であっても、欲を言うなら……みたいなところは多少なりともあるのですね。


個人的に1つ気になったのは……


………ベッツリコーラが出てこないのですね。


この本のカンブリア紀の章では、マーレラや三葉虫類、ヤウニクなどのメガキエーラ類、ご存知アノマロカリスやオパビニアなどの恐蟹類にカンブリア紀の名物ハルキゲニア、また知られている限り最古の魚であるミロクンミンギアやピカイアなどの脊索動物まで、さまざまな魅力的な動物が登場します。

……ですが、我々の系統である脊索動物はともかく、そのほかの動物は葉足動物・節足動物が中心となっており、どういうわけかベッツリコーラやシダズーン、スケーメラをはじめとする「古虫動物」の類が出てこないのですね。


………彼らが出てくるかどうかは私にとってはとてつもなく重要なことです。


なぜならベッツリコーラが出てこない解説なんて、カンブリア紀の大事な所の半分をすっ飛ばしてしまっているようなものなのですね(※あくまできつねの感想です)。


大体そもそも最近の研究で……より正確に言うならば2014年にオーストラリアのカンガルー島で同じく古虫類であるネソネクトリスの化石が発見され、またその体の中から保存状態の良い「脊索」が見つかってからというもの、長年正体不明とされていたベッツリコーラをはじめとする古虫動物は実は立派な「脊索動物」だったということが判明しているはずです。

同じ脊索動物としてミロクンミンギアやピカイアを取り扱っているのに、ベッツリコーラが出てこないとは一体どういうことなのでしょう。


それに、その姿を初めて見た人たちはほぼ確実に思考停止を引き起こすであろう、古虫類たちの見た目のインパクトの強さはまさに「THE カンブリアン」……彼らを語らずしてカンブリア紀を語ることなどとうていできますまい(※くどいようですが、あくまで個人の感想です)。


そもそも生き物たちが試行錯誤を繰り返していたかのように「奇抜な姿をしていた」というのはカンブリア紀の大きな特徴ですが、この章でたくさん登場する生き物たちの殆どは「割とふつう」なのですね。

ええもちろん、ヤウニクやマーレラは現在の節足動物と比べると確かに奇妙ですが、古虫類に比べたら「割とふつう」です。


またアノマロカリスやオパビニアはともかくとして、当時「大いなる謎」とされていたハルキゲニアは最近の研究でやはり「割とふつうの生き物だった」ことが判明しているのですね。

当時は「THE カンブリアン」の代表格であったハルキゲニアが「ふつう」となり倒れた今(?)「普通じゃない」全盛期の彼の座を守れるのはもはやベッツリコーラしかいないのですね。

毎度おなじみ三葉虫に至っては―――――!!!(※しつこいようですが、あくまで個人の感想なのですね)

 

ですが……載らなかった理由はなんとなくわかります。


なぜなら……ベッツリコーラには眼が無いのですね。


カンブリア紀において生物の進化を爆発的に加速させた要因、それは「眼の誕生」だったのですね。


つまり、生き物たちが眼を持ったことにより各々の軍拡競争に拍車がかかり、そのことが進化を促し、化石に残るような硬い組織を持った動物に急速に変化していった……というのが最近のカンブリア爆発に関する通説のようです。


この本でもその「眼」の多様化という視点からカンブリア紀を解説しているわけなのですが……残念ながら眼を持たないベッツリコーラは、眼や視覚効果に関する進化を中心としたこの章の解説からは漏れてしまったのでしょう……。


……などと言ってしまえば「ピカイアだって眼が無いじゃないか!」という話になりそうですが、おそらく彼は我々脊椎動物の系統に繋がる「最古の魚の仲間」として特別に紹介されたに違いありません。


同じ脊索動物でもベッツリコーラは魚ではなくどちらかというとホヤに近い系統であるため、この「特別扱い」からも漏れてしまったのでしょう。


個人的にはひじょうに残念なのですが、仕方ありません。

あのシュールなフォルムを、この本の美しいイラストと素晴らしくわかりやすい解説付きで多くの人たちに見てもらいたかったのですが……。


……なんだか話がまとまらないのですね……。


と、いうよりそもそも私は読書感想文が苦手だったはずなのに、ここまでイロイロ余計なことが書けてしまうとは一体どういうことでしょう。

 

とりあえず、これ以上続けると色々と余計なことを書いてしまいかねないので、この辺りで終わりにしましょう。


ともあれこの「古生物たちのふしぎな世界」、とてもわかりやすくて面白い本です。

時代の新旧に関わらず生き物に興味のある人にはぜひ手に取ってみてほしいのですね!