きつねとべっつりコーラのブログ。

きつねとべっつりコーラの2匹が、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。生物多め。

イレギュラーな「コウモリ風恐竜」が気付かせてくれる色々なこと

コウモリ風恐竜

私が小さいころ、恐竜の皮膚の質感や色に関しては謎が多く、また復元するにしても普通の爬虫類のように鱗に覆われた姿で描かれるのが当たり前でしたが……。

最近では技術の進歩に伴い様々な様相が浮かび上がって来ているのですね。


さらに一部の恐竜では表面が羽毛に覆われてもふもふだったということが既に当たり前となってきているようです。


このブログでも以前「アライグマ風恐竜」などというものを取り上げたのですね。

blog.kitsune-vetulicola.net


当初は鱗に覆われていると考えられていたシノサウロプテリクスがこんなにもふもふでかわいい姿に!


おそらく現在の恒温動物のような風貌をした「~風恐竜」シリーズが今後も続々と発見されるのだろう…………などと思っていたら、案の定また新たなる発見があったようです。


今回は中国で「コウモリ風恐竜」なるものが見つかったのだそうです。

以下、ナショジオさんの記事です。

なんとご丁寧に動画まで載っているのですね。

natgeo.nikkeibp.co.jp


こ、これは……………

…………翼竜じゃないのか……………。


いや、翼はなんとなく「翼竜っぽい」ですが、姿形はどう見ても恐竜です。

おまけに尻尾の辺りはなんだか鳥っぽい……。


一体何なのでしょう、この中途半端に鳥と翼竜と恐竜とをミックスして絶妙な加減でごっちゃにしたような珍妙な生き物は。


なんだかファンタジーとかによく出てくる「翼は翼竜っぽいけど足腰の付き方はどう見ても恐竜」な生き物……「いちおう翼竜のキャラなんだけれども本当の翼竜の足腰だとちょっとガニマタでかっこ悪いし二足歩行もできないからその辺はアレンジして恐竜っぽくしてみた」という製作者側の意図が透けて見えるデザインの生き物みたいなのですね。


てっきりファンタジー世界だけの産物かとおもっていましたが、現実にいたというのですから驚きです。


なんにせよ、これは脊椎動物の翼というものの多様性を改めて浮き彫りにしてくれる大発見なのですね。


このコウモリ恐竜の翼は翼竜のものとはだいぶ違いますし、もちろんコウモリの翼とも違います。

言うまでもなく鳥の翼とはかけ離れているのですね。


おそらく翼竜、鳥、コウモリに続く第4の「翼勢力」であるに違いありません。

 

アンボプテリクス・ロンギブラキウム

さて……このコウモリ恐竜、どうやら名前を「アンボプテリクス・ロンギブラキウム(Ambopteryx longibrachium)」というそうです。

日本では基本的に古生物は和名を付けずにそのまま学名で呼ぶので、例の如くこの恐竜の名前も学名をそのまま仮名文字で表しただけです。

学名はラテン語ギリシア語のハイブリッドで、意味は「両翼・長い腕」なのですね。


……………そのまんまじゃん。

 

いや、これも学名としては別に普通のことなのですね。

初見で意味が分からず、またなんとなくかっこいい印象を受けるラテン語なのをいいことに、母国語にしたら割と「そのまんま」な名前をさもすごい名前であるかのごとくドヤ顔で付けてしまうという現象が、古生物の世界では割とよく起こるようです。


なんにせよこのアンボプテリクス、分類学的には

動物界-脊索動物門-脊椎動物亜門-爬虫綱-双弓亜綱-主竜形下綱-恐竜上目-竜盤目-獣脚亜目-スカンソリオプテリクス科-アンボプテリクス属

………に属するのですね。


記事の中でアンボプテリクスの発表論文の筆頭著者である中国科学院古脊椎動物学・古人類学研究所(IVPP)の王敏さんも仰っているように、やはりこの恐竜は恐竜というものが「さまざまな方法で飛べるようになったことを示唆するもの」なのだそうです。


……つまり、最終的に飛べるようになるためには「翼を生やす」必要があるわけですが、その翼の作り方がこの時代はまだ実に多種多様だったのですね。


現在の脊椎動物の「翼」は大きく分けると鳥のように「羽毛を束ねて作る」ものと、コウモリのように「長く伸びた指の間に皮膚の膜(飛膜)を張って作る」ものの2タイプに分かれます。


アンボプテリクスの翼は当然後者に含まれるわけなのですが、この「飛膜の張り方」が実にいろいろあるわけなのですね。


例えばコウモリは親指を除く4本すべての指を長く伸ばし、その間に膜を張ります。

対する翼竜は薬指のみを長く伸ばし、それだけを支えとして膜を張るのですね(翼竜の手の小指は退化していてありません)。


そしてアンボプテリクスはコウモリとも翼竜とも違う第3の「飛膜」……親指、人差し指、薬指の全てを翼を支えるのに使い、また特に薬指が長く発達しているようです(この仲間の手の指は3本しかありません)。

またそれとは別に手首から伸びた第4の「翼の骨」があるのですね。

「尖筆状突起(せんひつじょうとっき)」という名前があるそうなのですが……こ、これは……豆状骨………なのだろうか。


……よくフィクションなどで描かれる皮膚の膜の翼を持つドラゴンなどのキャラクターは、たいていは翼の描写に問題があり、ものによっては翼を支える骨が「肘から」伸びていたりするのですね。

そういう描写を見る度に「この作者はそもそも飛膜というものをご存知なのだろうか。翼の骨というのは要するに指であって、肘から伸びているなどということはあり得ないのだが」などと内心思ってしまうのですね。


ですが……豆状骨(らしきもの)が長く伸びて翼を支える骨になるのなら、あながち間違いというわけでもないのかも。

ええ、まぁ、「豆状骨」というパーツのおかげでひじょうに説得力のある「手首から伸びる翼の骨」とは違い、肘にはそもそも「伸びるべき骨」がありませんから、アンボプテリクスを見て翼というものの多様性に触れた後から考えてみても、「肘から翼の骨が伸びている」という描写は違和感があるのですが。


でも、そんなことを言ってしまっては「そもそも翼というものは特殊化した『前脚』であり、それが本来の前脚とは別についている時点でドラゴンは脊椎動物のボディプランの範疇からはみ出てしまっている」ということになってしまい、「本来の前脚がそのまま翼になっている『ワイバーン』以外は脊椎動物として破たんしている」ということになってしまうので、敢えてそこにはツッコミを入れないことにしましょう。


きつね、翼をもつ西洋のドラゴンの中ではワイバーンだけが唯一「生物的に正しい姿」をしていると思うのですね。

……きっとワイバーンをデザインした人は生物学の常識について詳しい人だったに違いありません。


そういえばアンボプテリクスは小さなワイバーンのようなのですね。尻尾は鳥ですが。


イーが飛膜を持っていたことを裏付ける発見

そういえば思い出しました……アンボプテリクス以前にも、似たような恐竜が発見されていたのですね。

2015年に中国で発見された「イー・チー」という恐竜は、同じくスカンソリオプテリクス科に属し、学名を「Yi qi」というのですね。


…………これ、学名だったのですね……。


てっきり中国語名かと思っていたのですが……どうやらそれがそのまま学名になってしまったようです。

ということは「イー属 チー種」ということになります。

上記の「アンボプテリクス属 ロンギブラキウム種」と比べるとなんとなく短すぎる気がするのですね……。


また恐竜の名前は「アンボプテリクス」だの「ティラノサウルス」だの、一般的には「属名」で呼ばれますから、「イー・チー」も一般的には「イー」と呼ばれることになるのですね。み、短い……。


案の定全ての恐竜の中でもっとも短い名前を持つ種としてギネスブックにも載っているようです。


………ギネスブックのくだりは冗談ですが、もっとも短い名前を持つ恐竜というのは本当なので、きっとギネスブックに載るのも時間の問題であるに違いありません。


ちなみに漢字で書くと「翼 奇」なのですね。

「奇妙な翼」という意味の中国語の「奇翼」を、形容詞が後ろに来るというラテン語の語順に合わせてひっくり返しただけの、特に何のひねりも変哲もない名前なのですね。


きっと発見した人たちが元々内輪で仮に「奇翼」と呼んでいたものが、いざ学名を付ける段階になって

「こいつの学名どうしよう?」
ラテン語にするのめんどくさいしもうこのまんまでよくね?」

……などという展開になってしまったに違いありません。


……名前の長短はともかく、なんにせよこれが発見された当初、極端に発達した薬指と、手首から伸びる「尖筆状突起」から、この恐竜は風切り羽ではなく飛膜を持っていたのではないかと言われたのですね。


そしてその時点で「恐竜の翼のタイプはいろいろあった」ということがわかってきていたのですね。


ただ、イーの発見当初ではまだ飛膜の痕跡が見当たらなかったため、「この長い指と謎の骨は果たして本当に皮膜を支えるものだったのだろうか」と疑問視する声もあったようです。


ですが今回発見されたアンボプテリクスの化石は、イーと同じ「長い指と謎の骨(尖筆状突起)」と一緒に飛膜の痕跡も残っていたのですね。


……つまり、骨格の形から「アンボプテリクスとイーは同じ仲間」であるということがわかり、なおかつ「アンボプテリクスには飛膜の痕跡があった」のですね。


……つまり、「同じ仲間」であるイーにも飛膜があったということが、この発見によって裏付けられたのですね。


なるほど……そういうことだったのか。


コウモリ風恐竜は少し前から見つかっていましたが、果たして本当にコウモリ風だったのかは確証が無かったのですね。

ですがアンボプテリクスの発見により、それが本当にコウモリ風だったということが分かったのですね。


私がいつか朝日新聞の記事で見かけた森の中を優雅に舞うイーの復元イラストは、実はあの時点ではまだ「不確定」なものだったのですね……。


でも結局残ったのは「羽毛の翼」?

さて……、恐竜時代、空を飛ぼうとした恐竜たちは結構たくさんおり、またその方法も様々だったということがわかりました。

手に飛膜を持った恐竜がいて、また足の間に飛膜を持っていた変わり種も最近どこかで見かけたのですね。


きっとこの時代、恐竜たちは色々と翼の形を試行錯誤しており、それに伴って一気に「恐竜の翼」の多様化が進んだに違いありません。


……まさに「翼のカンブリア紀」なのですね。


ですが結局今現在残っている「恐竜の翼」は、鳥類に引き継がれた羽毛の翼だけなのですね。


羽毛の翼を持った恐竜たち以外はその後「5度目の大量絶滅」により全て絶滅してしまったため、これらの「コウモリ風の翼」がさらに進化していればこの後どうなったのかという疑問の答えは永久に失われてしまったことになります。


もちろん絶滅の直接的な原因は白亜紀末にユカタン半島に落下した隕石であり、翼のつくりはおそらくぜんぜん関係無いのですね。


つまり、当時の条件がちょっと違っていれば、もしかすると今頃は恐竜時代の生き残りとして風切り羽ではなく皮膚の翼を持った鳥たちがそこらじゅうを飛び回っていた可能性だってあるのですね。

もしくは両者が共存していた可能性さえあるでしょう。


こ、これは………。

妄想がはかどるのですね。


こういう「絶滅した系統の動物がもし生き残っていたらどうなっていたか」というのをあれこれ想像してみると、また新しい生き物の姿や生態系の姿が浮かび上がってきますし、現在の生態系の姿がほとんど奇跡の上に成り立っているということもわかるのですね。


生き物の絶滅と生存は「偶然」によって分かれるものであり、それ以外の何物でもありません。

つまり、「すぐれた種」が生き残るのではなく、単に「運が良かった種」が生き残っているだけなのですね。


そしてそのような偶然が、原始生命体が誕生した40億年も前から今の今まで何度も繰り返され、その上で今を生きている私たちが成り立っている……。

これはまさに「40億年間ずっと『絶滅の貧乏くじ』を引かなかった」ということなのですね。


つまり、40億年間ずっと福引で「タワシ」を引き当て続けるほどの、相当高度なレベルの「奇跡」なのですね。


イーやアンボプテリクスの持つ「不思議な形の翼」は、そんな当たり前の事実を改めて気づかせてくれるのですね。