一緒にお墓に入れない?
けさ新聞を読んでいてなんだか気になる記事を見つけたのですね。
曰く、「ペットと一緒にお墓に入りたいと希望する飼い主がいるが、現状では難しい」のだそうです。
…………なんと。
日本では今のところ600個所ほどのペット専用のお墓、いわゆる「ペット霊園」があるのだそうですが、飼い主さんと一緒に入れるお墓となると、まだまだ普及していないようです。
一緒に入りたいと希望しても、ほとんどのお墓では断られてしまうのだそうです。
……飼い主とペットが一緒にお墓に入るだなんて、考えたこともありませんでした。
ですが改めて言われると……きっとみんな、そうしたいのですね。
でも、「ペット=家族」と考える昨今の日本で、そのようなお墓が一体どうして普及していないのでしょうか……。
何か一緒に入るとまずい理由があるのでしょうか……。
一緒に入れない理由は仏教のルール?
とりあえず、現状では「ペットのお墓」と「人間のお墓」はあっても「ペットと飼い主のお墓」というのはないのですね。
つまり、もしペットと飼い主さんが一緒にお墓に入るのなら、普通の(人間の)お墓にペットが間借りして一緒に入る、という形になるようです。
ただ、人間のお墓はあくまで人間専用のもので、ペットを一緒に入れることを認めていないことが多いのですね。
……単に「人間用のお墓に動物を入れることに対する抵抗感」がある、というだけのことなのだろうか……。
それならばいっそのこと「ペットと飼い主のお墓」というものを新たに別に建造してしまえばいいのではないかと思うのですが、そういうわけにもいかないのだろうか……。
などと思っていたのですが、それだけではないようです。
日本のお墓は基本的に仏教のルールに基づき運用(というのだろうか)されていますが、どうやらそこに問題があるようなのですね。
つまり、仏教の世界観において全ての生きとし生けるものは、
の6つの世界、いわゆる「六道」において輪廻と転生を繰り返すとされており、この中で「成仏」することができるのは「人間道」に住んでいるもの……つまり、「人間」だけだと言われているのですね。
「成仏」の定義は宗派によって違うようですが、一般的には仏となることでこの6つの世界から抜け出し、新たに第7の勢力である(?)「仏の世界」に生まれるということなのですね。
一度「仏の世界」に行った後は、もうこの6つの世界に戻ることはないのですね。
それぞれの世界において生前に良いことをすれば生まれ変わった後より上の世界に行くことができ、反対に悪いことをすると下の方に行ってしまうと言われています。
そしてペットなどの動物は「畜生道」に属しており、悪いことをすると人はここに堕ちるなどと言われているのですが……。
……つまり、「人間が悪いことをすると、生まれ変わった後動物になってしまう」ということなのですね。
………なんだか動物が「劣化版人間」みたいな扱いになっているのですね。
宗教とは人間を救うためにあるものですから、人間に都合がいいように作られているのは仕方がないとしても、これは私からしてみると相当失礼なのですね。
人間だって生物学的にはただの「動物」ですし、イヌやネコやキツネに同じく「系統樹の動物の枝の末端」のうちの1つに過ぎないのですね。
つまり、誰だろうが生き物である以上等しく「系統樹のどっかの枝の末端」であるわけで、そこには「劣化」も「優化」もありません。
それに「悪いことをしたから動物になった」などと言ってしまっては、人間から動物になってしまった「ポケモン不思議のダンジョン」シリーズの主人公の立つ瀬がありません。
彼らは悪いことをしたからではなく、世界を救うためにポケモンになったはずではなかったのか!
だいたい一体どうやって生前の行いが「悪いこと」だの「いいこと」だのと判断するのでしょう。最新鋭のAIでも駆使するのでしょうか。
それにしたってAIの判断基準は「教師あり学習」に由来するでしょうから、作る側が善悪を判断して事前にAIに教え込まなければなりませんし、その作る側が人間ではなく神様や仏様だったとしても、結局誰かの独断と偏見ときまぐれで善悪を判断することになってしまうことに変わりはないのですね。
………「六道」というシステムの問題点に関してはこの際置いておくことにして、なんにせよペットが飼い主さんと一緒のお墓に入れないというのは、どうやら仏教のルールに原因があるようです。
人間道以外は成仏ができませんから、畜生道に属するペットは当然お墓に入っても成仏できないのですね。
……つまり、成仏ができないと一緒のお墓に入れない……ということなのかも……?
偉い先生方は「一緒に入れる」と言っている?
ところで、「ペットは成仏できるのか」という件に関しては専門家である僧侶の間でも意見が分かれているようです。
新聞の記事には、浄土宗では「ペットが極楽浄土に行けるのか」という議論が続いている、とあります。
実際にことし2月に東京の増上寺にて「ペットは往生できるのか」というテーマで200人以上の僧侶が集まる浄土宗の公開講座があったのだそうです。
単に「往生」と言えば普通は「極楽往生」のことであり、「極楽往生」とはすなわち「仏の世界である極楽浄土に行って仏になる」ということですから、「成仏」とだいたい同じ意味なのですね……一般的には。
……なんにせよ案の定大きく「往生できない派」と「往生できる派」とに分かれたようです。
京都市にある佛教大学の元准教授で、「できない派」の安達俊英さんは、「動物は念仏を唱えられないので往生できない。次は(成仏できる)人間に生まれ変われるように、供養の時に願うべき」と主張したのだそうです。
他方、東京の大正大学の教授で「できる派」の林田康順さんは、「供養すればすぐに往生し、あなたの思う最も理想的な姿で浄土に生まれ直すことができる」と反論したのだとか。
……一体ナニを大真面目に……。
いや、大切なことですね、もちろん。
また、かんじんの「そもそも一緒に同じお墓に入っていいのか」という質問に対しては、2人とも「問題無い」と答えたのだそうです…………あれ!?
……六道だの成仏云々だのという話……もしかして全然関係無かったりして……。
と、いうことは……
なんだか論点がずれてきているのですね!
そもそも知りたいのは成仏云々じゃなくて、一緒にお墓に入れるのかどうかだったはずなのですね!
でもこれはエラい大学の先生方が「大丈夫」と言っているのだから、仏教のルール的にはきっと問題無いのでしょう。
ということは問題なのはそれが全国的にまだ浸透しておらず、今のところ「一緒に入れていいのかわからないからとりあえず禁止にしておこう」となっている、ということなのでは……。
なんにせよ、僧侶側としても皆のペットロスの悲しみに答えなければという考えがあるようで、じっくりと議論を重ねて答えを出す必要があるようです……。
今後も議論を深めていくとのことなので、もしかしたらそのうち「ペット同伴のお墓」が当たり前になる日が来たりするのかもしれません……。