IUCNレッドリストカテゴリ
さて……今日は気分転換も兼ねて(?)、きつねの備忘録、第3弾なのですね。
第1、第2は以下の記事で、それぞれ「生物の8つの分類階級」と、「節足動物」について書いたのですね。
そして今日はIUCNさんの「レッドリスト」のカテゴリについて書こうと思うのですね……ってまた生物ですね……。
IUCNとは「International Union for Conservation of Nature」の略で、「国際自然保護連合」のことなのですね。
1948年に設立され、スイスのグランに本部を持つ国際的な自然保護団体で、各国政府や政府機関、NGOなど様々な有志が集まり結成されているのですね。
文字通り国を挙げて……いや、世界を挙げて、自然を守ろうとする「自然の守護神」なのですね。
そして「レッドリスト(Red List)」というのはこのIUCNさんが発行している絶滅の恐れのある野生生物のリストで、正式名称を「The IUCN Red List of Threatened Species(絶滅の恐れのある野生生物の種のIUCNレッドリスト)」というのですね。
似たようなのに日本の環境省が発行する「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」や、「レッドデータブック」という名前のものがあります。
レッドデータブックとはレッドリストに乗った動植物に対しさらに詳しい情報を加えたものなのですね。
つまり、「さらに詳しいレッドリスト」なのですね。
環境省のリストはIUCNさんのレッドリストとは別ものですが、こちらも日本では「レッドリスト」と呼ばれます。
なのでそれぞれ「環境省のレッドリスト」「IUCNのレッドリスト」と呼んで区別しているようです。
なんにせよどのリストも絶滅の恐れのある野生生物の種を載せていることに変わりなく、またその「絶滅のおそれ」の度合い(保全状況)を以下の10個のカテゴリで表すのですね。
- EX
- EW
- CR
- EN
- VU
- CD
- NT
- LC
- DD
- NE
また、これらのカテゴリをさらに大きく分けると以下のような分類になるのですね。
- 絶滅
- 絶滅危惧
- 低リスク
- その他
この大きなカテゴリを何と呼ぶのかイマイチよくわからなかったので、とりあえずこの記事では「大カテゴリ」と呼びましょう。(勝手に呼んでいいのか知らん……。)
……さて……。
きのう「サメが食べ過ぎで絶滅しそうだ」という記事を書きましたが、元になったAFP通信さんの記事にこれらのカテゴリが登場したのですね。
ですがきつね、こちらの分類にはイマイチ疎いので、アルファベット2文字を見てもどういう状況なのかとっさに判断できなかったのですね。
なのでこちらの分類にも詳しくなろうと思い(?)、それぞれについて調べてみようと思ったのですね。
ひとまず大カテゴリごとに書いていきます。
とりあえず長いのでもくじを置くのですね。
絶滅 Extinct
まずは最も状況が深刻なものから……。
これはその名の通り「絶滅」で、ここに分類された動植物は文字通り「既にいなくなってしまった」ということなのですね。
この「大カテゴリ」の中には以下の2つの「カテゴリ」が属します。
- EX
- EW
それぞれ見ていきましょう。
EX 絶滅
EXとは「Extinct」のことで、つまり「絶滅」なのですね。
このカテゴリに分類された生き物は「既に地球上からいなくなってしまった」のであり、もはや「救いようがない」のですね。
恐竜をはじめとする数多の絶滅した古代生物たちはこのカテゴリに属しているに違いありません。我らがベッツリコーラも既にEXに分類されているはずなのですね。(古生物をわざわざ分類するのかはわかりませんが……。)
また、似たようなのに以下の「EW」というのがあります。
EW 野生絶滅
これは「Extinct in the Wild」のことで、「野生絶滅」なのですね。
つまり、「野生の状態では既に絶滅してしまっており、残っているのは人が飼っている個体だけ」ということなのですね。
また、「一応野生で生きてはいるが、元々の生息場所とは違うところで生活していて、本来の生息場所にはもういない」という場合もここに分類されているようです。
EXとは違って一応その種自体はまだ生きていますから、もしかすると野生に返すことで復活できるのではないか、という希望がまだあるカテゴリなのですね。
しかし完全に人の手で育てられた生き物は、本来の親から生き方を教わることができないため、野生の環境で繁殖できない場合があるのですね。
そのため一度「野生絶滅」となってしまった種を復活させるのは難しいと言われています。
絶滅危惧 Threatened
これは文字通り「絶滅が危ぶまれている状態」なのですね。
さらに以下の3つのカテゴリに分かれるのですね。
- CR
- EN
- VU
CR 絶滅寸前
「Critically Endangered」のことなのですね。
和約は「絶滅寸前」だの「近絶滅種」だの「深刻な危機」だの色々あるようで、また日本の環境省には「絶滅危惧IA類」とも呼ばれるようです。
……ややこしいんでここでは「絶滅寸前」で統一します。
その定義は「3世代以内に個体数が80%減少した、もしくは今後減少する可能性が高い種」となっているようです。
ただし環境省の「絶滅危惧IA類」は少し定義が違うようです。
ちなみに2016年9月版のIUCNレッドリストでは2582種の動物と2493種の植物がこの「絶滅寸前」カテゴリに分類されていたのだそうです。
……この数字を多いと思うか少ないと思うかはあなた次第、なのですね。
EN 絶滅危惧
「Endangered」のことなのですね。
和約は「絶滅危惧」や「絶滅危機」などがあるようで、環境省の分類では「絶滅危惧IB類」なのですね。
かんじんの詳しい定義は……よくわかりませんでした。
…………とりあえず、CR「絶滅寸前」よりも少しはマシな状態である、ということなのでしょう……。
……次、行きます。
VU 危急
「Vulnerable」のことで、環境省の分類では「絶滅危惧II類」となっています。
IUCNさんの定義によると、以下の条件のうちどれか1つでもみたすものは「危急種」という扱いになるようです。
- 3世代以内もしくは10年以内に個体数が30%以上減少
- 生息域・分布域の面積が250平方キロメートル以下、もしくは10000平方キロメートル以下
- 減り続けた個体数が10000頭以下、もしくは10年または3世代で10%以上個体数が減り続けた
- 個体数が1000頭以下
- 100年後には10%の可能性で絶滅しているかもしれない
2番目の条件はなぜか面積が2通りありますが、これはどうやら種の特長によりどちらの数字を採用するかが違うようです。
また最初のと3番目の関係って……どうなんだろう。
……とりあえず、この「危急種」は高い確率で野生絶滅しそうな種であり、環境の変化などのわずかな状況の変化によっていともたやすくEN「絶滅危惧」になり得る可能性があるのですね。
「絶滅危惧大カテゴリ」の中では一番マシな分類ではありますが、それでもかなりのリスクをはらんでいるのですね。
低リスク Lower Risk
さて……「リスク」という言葉が出てきたところで、次は「低リスク大カテゴリ」なのですね。
この「大カテゴリ」は以下の3つの「カテゴリ」に分かれるのですね。
- CD
- NT
- LC
それでは1つずつ見ていきましょう。
CD 保全対策依存
「Conservation Dependent」の略なのですね。
……実はこのカテゴリは2001年のレッドリスト3.1以降廃止され、現在では使われていないのですね。
なんと、カテゴリそのものがEXになってしまったのですね。
ですが2001年以前に書かれたリストの分類を直ちに新しい分類に書きなおすのは現実的ではないため、種によっては相変わらずこちらの分類で載っている場合もあるのですね。
その場合はカテゴリの横にバージョンを表す「Ver. 2.3(1994)」もしくは「Ver.3.1(2001)」などと書かれており、区別しているのですね。
なお、現在ではこのCD「保全対策依存」はNT(「準絶滅危惧」もしくは「近危急種」)に分類されるようで、環境省の分類でも「準絶滅危惧」となっているようです。
……なるほど、「低リスク大カテゴリ」にはCD、NT、LCの3つがありますが、2001年(Ver. 3.1)以降はCDが廃止されてNTとLCだけになったのですね。
また、「低リスク」以下の3つは以前は「LR(低リスク)カテゴリ」の「サブカテゴリ」として扱われていたため、それぞれ小文字で「LR/cd」「LR/nt」「LR/lc」のように書かれていたようです。
またかんじんのCDカテゴリの定義は……よくわからないのですね。
……廃止されているから資料が無いのか知らん……。
……次、行きます。
NT 準絶滅危惧
「Near Threatened」の略なのですね。
日本語では「準絶滅危惧」もしくは「近危急種」と呼ばれており、環境省の分類では「準絶滅危惧」のようです。
……前のカテゴリが(廃止されたCDを除くと)「VU 危急」なので、「準絶滅危惧」よりも「近危急」の呼び名の方がしっくりくるかもしれません。
上に書いたように、以前は「LR/nt」と呼ばれていたのですね。
IUCNさんの定義では、以下の「LC」とは違い、生息域に何らかの変化が生じると将来的に「VU 危急種」になってしまうと考えられている種がこの「準絶滅危惧・近危急」に分類されるのですね。
つまり、下手をするとすぐに危急になってしまうわけですから、IUCNさんはNTカテゴリに分類された種は定期的に調査・再評価をするべきだと言っているようです。
LC 低危険種
「Least Concern」の略ですね。
「低危険」もしくは「低懸念」などと訳されるのですね。
生息域の評価をしたものの、上記のどのカテゴリにも分類できないものがここに分類されるようです。
……要するに、「特に絶滅の心配はない」ということなのですね。
ちなみに一昨日ダウンロードしたリアルポケモン図鑑……じゃない、「LINNÉ LENS」によると、人間の分類も「LC」なのだそうです。
……キツネ(Vulpes vulpes schrencki)は……よくわかりません。
きっと絶滅の心配が無さそうな動物は調査がされていないのだろう。ではなぜ人間にカテゴリがあるのかは謎ですが……。
その他 Others
そういえば他にもカテゴリがあるのですね。
LCでいちおう「絶滅の心配が無い種類」ということになっていますから、そのさらに「先」があるのは何とも不思議な感じがしますが、以下の2つなのですね。
- DD
- NE
とりあえず、詳しく見ていくのですね。
DD データ不足
「Data Deficient」のことなのですね……こ、これは……。
……要するに、「よくわからない」ということなのですね。環境省の分類では「情報不足」となっているようです。
上のLCは「調査をした結果、どのカテゴリにも分類されなかった」でしたが、このDDはどうやら「調査をしてみたものの、どのカテゴリに分類するべきかよくわからない」なのですね。
………次、行きます。
NE 未評価
「Not Evaluated」つまり「未評価」なのですね。
上のDDは「調査をしてみたものの、どのカテゴリに分類するべきかよくわからない」でしたが、このEEは「そもそも調査をしていない」のですね。
…………キツネの分類もこれなのか知らん……。
とりあえず、「その他大カテゴリ」の中身はあんまり気にしなくてよさそうです……。
カテゴリでわかる生き物の状況
色々と書きましたが……これでカテゴリの内訳がよ~くわかったのですね(多分)。
今度から知らない生き物を調べるとき、見る目が変わりそうです。
1つのカテゴリでも日本語の名称が色々とあってヤヤコシイので……とりあえずラテン文字2文字のカテゴリと、それがどれほど危険なのかを覚えておけば問題はなさそうです。
それにしても「vulnerable」だの「threatened」だの、英語でチェスを学んだことがある人なら幾度となく目したことがあるような単語がいくつか出てきたのですね。
まさかこんな形でチェスとIUCNレッドリストが繋がっていたとは……。
きっと私がこのカテゴリを学ぼうと思ったのはもう謎の運命の赤い糸の仕業としかいいようがないのですね(?)。
さて……ここまで読んでいただきありがとうございました。
きっと読んでくれたあなたは生き物の保全状況について並々ならぬ興味を持っておられるのでしょう。
色々な人がこういうことに興味を持ち、周りの生き物たちに想いを馳せることができるようになれば、きっと状況は変わっていくと思うのですね。
と、いうより、絶滅の危機にさらされている生き物を救うには、国際機関の調査や専門家の努力だけでなく、みんなが関心を持つことがおそらく不可欠なのですね。
なぜなら……こういう言い方はいささか不謹慎だと思うのですが、IUCNさん初めとする国際機関や、世界中の専門家たちがどんなにがんばったところで、できることは限られていると思うのですね。
それよりも……いや、もちろんそれも大事ですが、それに加えて……やはり幅広い人たちが生き物のことを知り、自分たちにできることをしていくことこそが大事だと思うのです。
「誰かが何とかしてくれるだろう」などと他力本願な考えにはしらず、みんなが自ら何ができるのか考え、またそれを実行する……。
それこそが彼ら絶滅が危ぶまれる生き物たちを救うことにつながると、私は信じたいのですね。