きつねとべっつりコーラのブログ。

きつねとべっつりコーラの2匹が、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。生物多め。

灯台下暗し?水族館に10年以上前からいたエビが実は新種だったと判明した件

美ら海水族館の新種エビ

……そろそろ節足動物の話はやめにして、他の話題を探そうと思ったのですが……。


どうにもこちらに戻ってきてしまうのですね。


沖縄県にある美ら海水族館をご存知でしょうか。

ここはマンタやジンベエザメを世界で初めて長期にわたり飼育し続けたことで知られており、私も昔修学旅行で行ったことがあるのですね。

前々からいろいろ話を聞いていたので、噂のマンタとジンベエザメが巨大水槽の中を泳ぎ回るのを実際に見たときは非常に感動しました。


……さて……、問題の節足動物です。


この美ら海水族館で長年飼育されていたエビが、実は新種だったと最近になって判明したそうです。

こちらに地元の新聞である琉球新報さんの記事があるのですね。

this.kiji.is


どうやら水族館で10年以上にもわたり「ミナミツノコシオリエビ」というエビとして展示されていたエビが、実は全く新しい種類だったというのですね。

事のてんまつはことし2月に「ズータクサ(Zootaxa)」に論文として発表されたようです。


ズータクサは以前書いた「皇居で新種のダニが発見された」という記事にも出てきた動物分類学の学術誌です。

「Zoo(動物)」+「taxon(分類)」で「Zootaxa」なのですね!上手い!(?)

分類学の学術誌だなんて、私としては非常に興味をそそられてしまうのですね。


とりあえず、論文自体はここから読めるのですね。

www.mapress.com


……相変わらず「字が小さくて読めない!」……のですね。

また全文を読むには案の定会員登録が必要なのですね……とりあえず「Abstract(概要)」だけならこのままでも読めますが……。


なんにせよ問題のエビは2匹いるようで、今回新たに「シマツノコシオリエビ(Eumunida balteipes)」という名前が与えられたようです。

……琉球新報さんの記事には「じつは新種の『シマツノコシオリエビ』だったということが判明した」というように書かれていますが、そもそも新種だとわかった時点では名前が無いはずなので(だから新種なのですが……)、この名前は新種だと判明した後で付けられたものと思われます。


とりあえず、現在展示されているこの2匹の子たちは10年以上前、久米島沖水深612メートル地点に設置されている沖縄県海洋深層水研究所さんの取水口からくみ上げられ、その後美ら海水族館で飼育されるに至ったようです。


………ポンプでくみ上げられた……。


なんともシュールで唐突な出会いなのですね。

まるで「夕食のおかずを釣りに行ったら魚じゃなくてベッツリコーラが釣れた」というのと同じくらい唐突なのですね。


……出会いも含めてなんだか色々と気になるシマツノコシオリエビなのですね。


それにしても一体どういうエビなのでしょうか。


それを知るためにはまず上位分類である「コシオリエビ」というエビについて知る必要がありそうです。

なのでまずはそこから調べてみるのですね。


コシオリエビについて

コシオリエビとは、

動物界-節足動物門-甲殻亜門-軟甲綱(エビ綱)-十脚目(エビ目)-異尾下目(ヤドカリ下目)

のうち、

コシオリエビ上科(Galatheoidea)
ワラエビ上科(Chirostyloidea)

……に属する甲殻類の総称なのですね。


……「ヤドカリ下目」という分類を見てわかる通り、エビと言いつつ実はエビではなくてヤドカリの仲間なのですね……。


……上で思い切り「エビ」と呼んでしまったのですね。
これからは「ヤドカリ」と呼ぶようにせねば……。


それにしても紛らわしい。
この仲間にはタラバガニやヤシガニという「ヤドカリなのに名前に『カニ』と付いている」ものがいますが、このコシオリエビも「ヤドカリなのに名前に『エビ』と付いている」のですね。


……おそらくヤドカリ下目はカニとエビの中間を行く分類群に違いありません。


ちなみに英語ではsquat lobster(シャガミウミザリガニ)」というそうです。……スクワット……。


なんにせよコシオリエビは、その名の通り腹部が常に曲がっているのが特徴で(まさに「海老」?ヤドカリなのに!)、カニのような長いハサミと、見た目は6本しか見当たらない歩脚(足)があり、触角は長いのですね。


……なんともカニとエビのいいとこどり」をしたようなデザインですが、あの長いハサミは個人的にはカニというよりプテリゴトゥス科のウミサソリの鋏角に見えるのですね……。


とりあえず、これらが「コシオリエビ」という生き物の共通の特徴のようです。


シマツノコシオリエビ

さて、問題のシマツノコシオリエビなのですね。


美ら海水族館の子たちはコシオリエビの中でも「ツノコシオリエビ」というグループに属し、分類階級としては

ワラエビ上科-ワラエビ科-ツノコシオリエビ属

となるようです。


水族館の子たちが間違われていた種である「ミナミツノコシオリエビ(Eumunida pacifica)」も、今回の発見である「シマツノコシオリエビ(Eumunida balteipes)」も、和名の通り同じ「コシオリエビ属」に属しているのですね。


また琉球新報さんの記事によると、この「ツノコシオリエビ属(Eumunida属)」は全世界で25種発見されており、今回発見されたのは26種目となるのだそうですが……。


……Wikipediaの記事には「ツノコシオリエビは29種が発見されている」と書かれているのですね。
こちら、ツノコシオリエビ属に関する記事なのですね。

en.wikipedia.org


残念ながら日本語版が存在しないのですね。
まぁこの程度の英語なら読めますけど……。

なんにせよ、Wikipediaの方が正しいのだとすると、これは世界で30種目のツノコシオリエビ属となるのですね。


……Wikipedia琉球新報さん、どちらが正しいのかはこの際置いておくとして、今回のシマツノコシオリエビが新種であることには変わりありません。


また、「シマツノコシオリエビ」という名前は、脚部の「縞模様」に由来するようです。

つまり、「縞角腰折り海老」なのですね。

……てっきり漢字表記は「島角腰折り海老」で、沖縄で発見されたからこの名前になったのかと思っていました……。

見た目はミナミツノコシオリエビとよく似ており、両方とも足に縞模様があるところまでは一緒なのですね。


……きっとこんなにそっくりだから、10年以上も間違えられてしまったのですね。


美ら海水族館で会える!

さて、ここまで調べたからには、この子たちに会いに行きたくなってしまうのですね。


2匹は10年以上前から美ら海水族館にいるといいますから(けっこう長生きなのですね!)、昔私が修学旅行で現地に行った時には既にいた可能性がありますし、もしかしたら遭遇していたのかもしれません。

ですが当時はこのような新種だとは誰も思ってもいませんでしたし、私自身も遭遇したとしてもごく普通の「エビ」としてスルーしていた可能性があるのですね……。


なので当時の雪辱を晴らすべく(?)、改めて美ら海水族館に行ってみたいのですね。


……ですが沖縄県……。

場所が場所だけにとてもじゃありませんが気軽に行くことはできません。

以前書いた和歌山県のエビとカニの水族館ですら行くのをためらうほどなのに……。


……とりあえず、残念ながら私は当分ここには行けなさそうです。


ですが近くに住んでおり、また甲殻類に興味がある方は是非行ってみるといいと思うのですね。


海洋深層水研究所のポンプでくみ上げられたコシオリエビ……おまけに新種だなんて、面白すぎるのですね。