例の如く備忘録です
いつか8つの分類階級についてのメモ書きなるものを書いたのですね。
当ブログでは割と頻繁にマニアックな用語が出てきたりする上に、毎回その解説をしている余裕もないので、知らない人が見ると多分、かなりわかりづらいのですね。
なのでとりあえずよく出てくる用語に関しては個別に解説用の記事を設け、解説したい時はそのリンクだけを引用すればいいかな~などといういかにもプログラマーが考えそうなことを考えたわけなのですね。
きつねは元々プログラマーですからその辺の考え方は仕方がないとしても、実際この「メモ書き」は(当ブログの記事にしては)そこそこアクセスもあったので、これはこれでなかなか上手い方法かもしれないと思ったのですね。
……と、いうわけなので。
これからも「メモ書き」シリーズを増やしていくことにしたのですね。
……第2弾……つまり、今回は「節足動物」なのですね。
………きつね、小さいころから虫が好きでして……。
「節足動物」という用語自体は結構メジャーだと思うので、敢えて解説を書く必要性を感じなかったのですが、節足動物にまつわる意外に知られていないあれこれも自分の中でメモとして残しておきたかったのでとりあえず書いてみるのですね。
なじみの無い方の手助けとなり、また私のように物好きな一部の方が見てニヤニヤしてくれれば幸いなのですね。
節足動物
さて……節足動物というのは、その名の通り動物の仲間なのですね。
特徴としては名前のとおり(?)「節のついた足」を持つことで、わかりやすく言うとエビやカニ、昆虫などが属するグループなのですね。
この仲間は皮膚が硬く、鎧のようになっているため、われわれ脊椎動物と違って外から見ると関節が目立つのですね。
この硬い皮膚は「外骨格」とも呼ばれ、名前のとおり皮膚であると同時に体を支える「ホネ」の役割を持っているのですね。
脊椎動物で言うところの体の内側にある「ホネ」は無く、「外骨格」のみで体を支えます。
筋肉はその内側にあり、「内側からホネを引っ張る」ことで体を動かすのですね。
……筋肉が「外側から骨を引っ張る」ことで体を動かす脊椎動物とはちょうど逆ですね。
体の構造としては「背板(はいばん)」つまり背中側の鎧と「腹板(ふくばん)」つまりお腹側の鎧の2枚の板から成る「体節」と、それに1対の「付属肢(ふぞくし)」がついたユニットが、いくつも連続して繋がるというまるで電車のような構造を持っているのですね。
この辺はムカデをイメージするとわかりやすいのですね。下にも書きますが彼らの仲間は節足動物の基本的な姿を受け継いでいるのですね。
それぞれの体節は必要に応じてお互いに癒合し……つまり、複数個がくっついてひとつになり、また付属肢も必要に応じて「触覚」「鋏角」「あご」「歩脚」などに形を変えたり場合によっては無くなったりします。
また体節自体の数もものによって変わってしまうのですね。
この辺脊椎動物の「背骨」と似ているのですが、背骨は体の中にあるため、このような変化が起こっても外からは違いが分からないのですね。
なんにせよ脊椎動物はみんな似たような構造をしていますが、節足動物はこのようにカスタマイズ性に優れた仕組みのためか、触角やあご、翅の有無、足の数など、体のつくりも分類によって大きく異なり、その結果様々な環境に適応することができるのですね。
また「小型化」に関しては目を見張るほどの能力があり、体を小さくすることによって限られたスペースや食料を有効活用できるようです。
逆に言うと「大型化」にはあまり適さないのですね。
「表面が硬い外骨格に覆われている」という構造上、成長するためには一度外骨格を脱ぎ捨てなければならず(脱皮)、その後は軟らかい「新しい外骨格」が硬くなるまでの間、しばらく「骨格が体を支えられない状態」が続く上、呼吸の仕組みに由来する問題もあり、一定以上の大きさになることができません。
……この辺り「大型化に適した」つくりを持つ脊索動物(脊椎動物)とは真逆なのですね。
循環系……つまり、血液を流すシステム……は「解放血管系」といって、われわれ脊椎動物のような「毛細血管」を持たず、心臓の動脈から送り出された血液は、そのままじかに「体の中のスキマ」を流れ、また静脈に吸い込まれて心臓にもどる仕組みになっています。
節足動物の心臓は「背脈管(はいみゃくかん)」とも呼ばれ、背中を通る1本の大きな動脈なのですね。
この動脈が筋肉の力で後ろから前へと拍動することで、お尻側から頭側へと血液が送り出され、血液循環が行われるのですね。
もちろん動脈の中にはいくつも弁が付いており、血液が逆流してしまうことはありません。
また中枢神経……つまりわれわれの脳や脊髄に当たる神経は「梯子神経系」と呼ばれ、その名の通りはしごのように左右1対となっており、各体節ごとに小さな脳である「神経節」が1対ずつあるのですね。各「神経節」はそのまま「付属肢」に対応しており、真ん中で左右が繋がっています。
なんだか「右脳と左脳」みたいな関係ですが、おそらくたくさんの付属肢を1つの脳だけで制御するのではなく、各体節ごとに小さな脳を設け、そこに制御を委託することで役割分担をし、中央コンピュータである脳の負荷を減らしているものと思われます。
頭にはもちろん大きな神経節である脳があるわけですが、この大きな脳と、付属肢の付け根にある小さな脳とが連携することにより全体が一体となって動くとは見事なネットワークなのですね。きっと彼らは体の中に頭部サーバを中心としたIoTシステムを備えているに違いありません。
なんにせよ彼らの中枢神経はわれわれのとは違い「お腹側」を通っています。
どうにも脊椎動物の背中を作る遺伝子と、節足動物のお腹を作る遺伝子が共通のものらしいのですね。つまりわれわれは背中側に神経、お腹側に心臓がありますが、節足動物ではその配置が逆になるのですね。
また節足動物は分類階級的には「門」にあたり、その位置づけは
真核生物域-動物界-真正後生動物亜界-左右相称動物-前口動物-脱皮動物上門-汎節足動物-節足動物門
……となっているのですね。
間にイロイロ挟まっていますが、普通は単に「動物界-節足動物門」といえば通じるのですね。
下位分類としては4つの「亜門」に分かれており、
- 鋏角亜門
- 甲殻亜門
- 多足亜門
- 六脚亜門
がそれぞれ所属しています。
鋏角亜門はいわゆる「鋏角類」で、クモやサソリ、カブトガニなどの仲間なのですね。節足動物の共通祖先から最も初期のころに分岐し、独立したグループ(亜門)になったと言われています。
甲殻亜門はいわゆる「甲殻類」で、エビやカニ、ダンゴムシやグソクムシなどが含まれますね。
多足亜門はいわゆる「多足類」で、ムカデやヤスデの仲間が含まれます。ここから分れて甲殻類が生まれたのですね。この多足亜門は同じ形をした体節がいくつもつながるという、節足動物の最も基本的な形態を受け継いでいるグループですね。
六脚亜門はいわゆる「六脚類」で、昆虫が属しています。この4つの中では最も最後に、甲殻類から分れて進化したのですね。
最も初期に分かれた鋏角亜門以外の亜門をまとめて「大顎類」などと言ったりします。
その名の通り「大あご」があるのですね。
節足動物の口というとクワガタのあごのように左右に開くハサミのような形を想像しますが、あれが大あごなのですね。
この大あごのひとつ後ろに「小あご」が、昆虫ならば1対、多足類や甲殻類ならば2対あります。
いずれも付属肢が変わったもので、これらのあごを前後交互に動かすことで食べ物を噛むのですね。
またムカデの仲間はこのさらに1つ後ろに前脚が変わった「顎肢(がくし)」と呼ばれるあごのような器官を持ち、獲物に毒を注入するのに使います。
……いわゆる「ムカデの毒牙」ですね。厳密には「牙」ではなく「爪」なのですね。
ですが「鋏角類」にはこれらのような構造は無く、代わりに「鋏角」と呼ばれる片方だけでカニのハサミのような形をした付属肢があります。(クモの場合はハサミではなくナイフのような形になっています。)
この鋏角を左右交互にガジガジ動かすことで食べ物を噛むのですね。
つまり、サソリやクモなどの鋏角亜門には「左右に動くハサミのようなあご」はありません。よくフィクションなどでどういうわけかクモやサソリのキャラクターに「左右に動くあご」があったりするのですが、あの描写は誤りなのですね。
………なんにせよ、分類を見てわかる通り節足動物にはいわゆる「ムシ」と呼ばれる生き物たちが含まれるのですね。
ただ「ムシ」という言葉そのものはひじょうにあいまいで、節足動物は全てムシなのかというとそういうわけでもなく、また節足動物以外にもムシとよばれるものがいたりするのですね。
……早い話が分類階級関係なく「ムシ」だったりそうでなかったりするので、「ムシ」の定義がもうよくわからない今日この頃なのですね……。
……近いうちに「ムシ」という言葉についての記事を書こうと思いますし、それについてはそこでじっくり考えようと思うので、とりあえずここでは省くのですね。
また、われわれ脊椎動物は「脊索動物門」に属していますが、「節足動物」はしばしばこの「脊索動物」の「対極」のように言われることがあるのですね。
単にホネが体の「内側」にあるものと、「外側」にあるもの、という意味での「対極」ではなく、両者の間にはもっと深い「違い」があるのですね。
……それを説明するためにはもう少し深いところまで掘り下げる必要があります。
前口動物と後口動物
まず、前提として……。
地球生命の最小の単位は「細胞」なのですね。
どんなに小さく単純で、また小規模な生き物でも最低限「細胞」を1つ持っていますし、現時点では「細胞」を持たない生物は発見されていません。
そしてそれがたくさん集まったものがわれわれ「多細胞生物」なわけですが、逆に言えば人もキツネもカニもムシも、それだけでなく動物も植物もキノコも全部すべて、多細胞生物というものは全て、個体が1つの生き物ではなく、「細胞」という小さな生き物が沢山集まった大きな「チーム」なのですね。
最初は単に複数の単細胞生物の「集合」にすぎなかったものが、長い年月を経て一体化・分業化し、細胞同士の関係が密接になり、もはや一つ一つの細胞だけでは生きることができなくなった状態……それが現在の多細胞生物ですね。
時代と共に「個」の役割がどんどん細分化されていってひとりでは生きられなくなるって……なんだか人間の社会に似ているのですね。
なんにせよ細胞の数は人間で37兆個あると言われていますから、簡単に言えば1人の人は37兆個の命を持っていることになるのですね。
その37兆個の命がそれぞれの役割の中でそれぞれの任務をこなし、全体で1人の人を形作っているのですね。
……我々は個であり、全体だ。
しかしどの多細胞生物も、発生段階……つまり「生まれる時」は、最初は「ただの細胞の集合」なのですね。
それぞれの細胞にはまだ具体的に役割が決まっておらず、またその全体(身体)には前も後ろも右も左も上も下もありません。
……会社にたとえるなら初期メンバーは集まっているのに部署が決まっていない状態か知らん。(なんか違う気が……。)
それが時間と共にそれぞれの細胞に変化し、役割を決めていくのですね。
……このへんプロセスが複雑すぎて説明し出すと1つの記事が書けてしまう……というかそれでも終わらなくなってしまうので、詳細は省きます。
なんにせよ動物の場合、如何なる種でもまずはたった1つの受精卵が細胞分裂を始め、最初に中が空洞になったボールのような形になるのですね。
そしてやがてその表面の一部が内側に向かって沈み込んでいき、ボールに「穴」が開くのですね。
この「穴」を「原口(げんこう)」というのですね。
「ハラグチ」ではありません、「ゲンコウ」です。
そしてこの「原口」がその後どうなるかにより、動物は大きく「前口動物」と「後口動物」とに分かれるのですね。(厳密には他にもいるのですがややこしくなるのでとりあえずこの2つで考えます。)
前口動物はこの「原口」がそのまんま「口」になります。
つまり、「原口」が「前」になるのですね。
肛門を持たないものもいますが、多くの種ではこの反対側に肛門が開き、お馴染みの「口→胃袋→腸→肛門」という「食物の通り道」が完成するのですね。
対して後口動物ではこの「原口」は「肛門」となり、その反対側に新たに「口」が開くのですね。
つまり、「原口」が「後ろ」になるのですね。
また「口」が「新たに」開くことから(?)後口動物のことを「新口動物」などと言ったりもします。
ちなみに前口動物は「旧口動物」とも呼ばれます。
……ややこしいのでこの記事では「前口動物」「後口動物」に統一するのですね。
なんにせよ発生のごく初期の段階で「どちらを前にしてどちらを後ろにするか」という「そこからか!」なレベルで2通りに分かれるところから、「前口動物」と「後口動物」は進化のごく初期の段階で枝分かれした、いわば「真逆の考え方を持つ」動物のグループなのですね。
そして今日の主役である「節足動物」は「前口動物」に、われわれ「脊索動物」は「後口動物」に、それぞれ属しているのですね。
……そして両者とも「体に頑丈な骨格と関節を持ち」、それ故に「運動性能に優れている」という点では一緒なのですね。
他のグループと比較してみると一目瞭然ですが、これほど高い運動能力を持つ動物の「門」は、節足動物と脊索動物(脊椎動物)以外には無いのですね。
………イカやタコなどの一部の「例外」もいますが……。
彼らは「軟体動物門」なので、脊索動物でも節足動物でもない「第3の勢力」なのですね。
なんにせよ、「丈夫な骨格」を「筋肉で引っ張る」ことによって運動する、という機構を備えているというところでは節足動物も脊索動物も一緒なのですね。
ただ、進化のごく初期段階で枝分かれし、また骨格を外か中か、どちらに置くかでも真逆の選択をするなど、両者の離れようときたらかなりのものですね。
……これくらい書くと、脊索動物と節足動物が対極である、という意味がおわかり頂けると思います。
節足動物の創作においての扱い
さて………。
きつね、よく趣味で絵を描くのですね。
………現在多忙につきちっとも描けませんが、前にはよく描いていたのですね。
また私はキャラクターとしては動物を専門に描く、いわゆる「ケモノ絵師」の範疇に含まれるのですね。
そのためか動物のキャラクターを見ると、ついついどのように描かれているのかが気になってしまうのですね。
なのでここではそのような視点から、節足動物についてあれこれ書いていこうと思うのですね。
まず、前提として……。
あらゆる動物が「脊椎動物」……特に「人間」っぽく描かれるのが創作における「キャラクター」なのですね。
節足動物も例外ではなく、創作においては「できるだけ脊椎動物っぽくなるように」描かれていることがほとんどなのですね。
そして、それゆえか……これはあくまで私の独断と偏見なのですが……、節足動物は最も「それらしくない」描かれ方をする部類に入るのですね。
実際に節足動物のキャラクターを見てみると、特に顔は、どう見ても脊椎動物としか言いようのない口だの目だのを持っていることが多いのですね。
これはわれわれ哺乳類自身が「脊椎動物」であり、節足動物とは殆ど「真逆」の位置にいるため、その方が馴染みやすいのだと思われます。
と、いうより、こうしなければとてもじゃありませんが馴染めないものと思われます。
節足動物は分類的に脊椎動物の反対側にいるというだけでなく、見た目も外側が外骨格で覆われているため、脊椎動物から見るとどうにもメカニカルでロボットのような無機質な印象を受けるのですね。
実際は節足動物も鎧の内側は血の通った生き物であるはずなのですが、いかんせん外から見えるのは鎧だけのため、イマイチ実感がわきません。
また脊椎動物の「足」は決まって4本しかありませんが、節足動物はたくさんあるのが当たり前……われわれから見るとうぞうぞしていてどことなく奇妙な感じがします。
同じ「足」と言っても脊椎動物のそれと節足動物のそれとでは由来が根本的に異なるので、単純に数を比べること自体がそもそも間違いなのですが……。
なんにせよこれらの事情のためか、節足動物が苦手な人も多いようで(エビやカニは食べるのに?)、節足動物をそのまんま節足動物として描いてしまうと、どうしても好き嫌いが分かれてしまうのですね。
それゆえに創作の世界では
人間 →そのまま
脊椎動物 →ぬいぐるみ化
節足動物 →大改造して脊椎動物化
という描き方が既に「暗黙の了解」となってしまっている節があります。………節足動物だけに。
生き物はそのままの姿が最も魅力的であり、そのままで描くのが一番良い。
デフォルメするにしても「比率」を変えるだけで「形」は変えずに。
……という考えを持つ私としてはこの現状はひじょうに残念に思えるのですが、「そのまんま」が苦手な人もいるわけですから仕方がありません。
……なんにせよ私個人としてはそのまんま描きたいのですね………などということを描くと話が絵描き論の方にずれて行ってしまいますね。
ともあれ、節足動物は節足動物………われわれとは大分違いますが、これはこれで温かく見守ってあげればいいと思うのですね(?)。
慣れない人が見ると「ナニコレ動物?」だの「宇宙生物みたいだ」だのと思いがちですが(らしいですが)、彼らはれっきとした地球生命ですし、彼らについて知識を深めれば、そんなに「ナニコレ」とは思わなくなるのですね。