消えゆく昆虫
突然ですが、みなさんは昆虫と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
……などというポジティブな意見から、
- 気持ち悪い
- 作物を荒らす
- ジャポニカ学習帳の表紙をクビになった
- 教科書から消えた
……などのネガティブな意見、はたまた
- 血を吸う
- 毒がある
- 病気を媒介する
- たまにファストフードに入ってる
- 標本箱
- ムイムイ
などという当たっているようで的外れな意見まで、いろいろと出てくると思うのですね。
中でも2012年頃からかの有名な「ジャポニカ学習帳」の表紙から消え、「お花」に取って代わられたということは皆さんも記憶に新しいかと思います。
ですが、事態はもはや、それほど楽観視できるような状況でもないのですね。
今まさに、ノートの表紙どころか世界中から昆虫が消えつつあるのですね。
どうにも最近世界の全昆虫が急激に数を減らしつつあり、近い将来その3分の1が、数十年後には昆虫そのものが絶滅する恐れがあるとの研究結果が発表されたのですね。
ことし4月に論文が学術誌「バイオロジカル・コンサベーション(Biological Conservation)」に掲載される予定なのだそうです。
……おそらくこれを見て、「なんだと!そいつぁ一大事だ!なんとかしねぇと!」と思う人は昆虫や環境のことをよく理解していらっしゃるのですね。
ですが残念ながら何がそんなに深刻なのかイマイチわからないという人もいるかもしれません。
そもそも昆虫という生き物そのものについてイマイチ理解できていない人も多いのではないでしょうか。
昆虫とは
動物界-節足動物門-六脚亜門-昆虫綱
に属する動物の総称で、この地球の生態系は彼らが支えているといっても過言ではないのですが、実際のところ昆虫綱以外に属する生き物……たとえばクモやサソリ、ムカデ、ダンゴムシ等の他の節足動物、はたまたプラナリアやでんでんむしなどもはや節足動物ですらない生き物たちをも、昆虫だと思っている人は結構多いのですね。
いや、この際分類は本質から外れますから気にしないことにしましょう。
呼び名や分類はともかく、問題なのは彼らが自然界においてとても重要な役割を担っていることを割と多くの人が知らない、ということなのですね。
とりあえず、そういった人たちに事の深刻さを理解してもらうためにも(?)、今日はこのニュースについて書いていこうと思うのですね。
昆虫がいなくなると、どうなるか
……その前に、まずはここから書くのですね。
なぜなら「昆虫がいなくなるとこんなに悪いことが起こる」ということを理解する前に、「昆虫を絶滅から救え!」などと言われてもイマイチピンとこないのですね。
と、いうわけで、まずは昆虫という生き物が私たち地球生命にとってどれほど重要であるのか、もしいなくなってしまうとどうなるのか、それらを書いてみようと思うのですね。
まず、前提として……。
そもそも昆虫は生態系の中でこのような役割を担っているのですね……。
- 花粉を媒介して植物を支える
- 大型の動物の食料となる
- 分解者、他にも
花粉を媒介して植物を支える、というのは……言葉の通りなのですね。
植物は花から花へ、より正確に言うのならばある花の「雄しべ(花粉を作るところ)」から、別の花の「雌しべ(花粉を受け取るところ)」へと花粉を渡すことで「受粉(≒受精)」し、次の世代となる種(たね)を作るのですね。
これは動物が交尾をすることによって卵(もしくは子供)を産むのと同じですね。
ですが動物と違い、植物は自分で動くことができませんから、直接相手のところへ動物の「精子」に当たるものである「花粉」を届けることができないのですね。
(そのようなことができる凄い植物もいるようですがこの際話が逸れるので置いておきましょう。)
なので必然的に花粉は「誰か」に「運んでもらう」必要があるのですね。
ある種の植物では、その「誰か」は「風」なのですね。
風に乗って飛んだ花粉が、この季節一部の人や動物たちに対して深刻なアレルギー症状を引き起こすことはよく知られています。
ですが風だけでなく、動物に運んでもらう植物もあるのですね。
というよりそちらの方が多数派で、被子植物のうち実に80%以上がこれなようです。
そして花粉を運ぶ動物の中でも重要な役割を果たしているのが昆虫なのですね。
つまり、もし昆虫がいなくなれば、ほとんどの植物は「受粉」ができなくなり、次の世代を残せなくなってしまうのですね。
そして植物というものは言わずと知れた「酸素の生産者」であり、「動物の食糧」であり、「生態系に無くてはならない」存在ですから、植物がいなくなれば動物は酸素が吸えなくなり、食べるものが無くなり、生態系も崩壊してしまうのですね。
……もちろん花粉を運ばない昆虫もいますが、なんだかこの時点でアブナイ匂いがプンプンなのですね。
大型の動物の食料となる……というのは、今さら説明の必要もないでしょう。つまり、より大きな動物の食べ物となる、ということです。
肉食の昆虫やクモ、サソリ、ムカデなどの節足動物、または脊椎動物……モグラ、コウモリ、キツネ、タヌキ、アナグマ、ネコ、人間……などの哺乳類、カエルなどの両棲類、トカゲ、イモリ、ヘビなどの爬虫類……言うまでもなく鳥さんたちやお魚……など、昆虫が大好きな生き物は山といるのですね。
もし昆虫がいなくなってしまえば、彼らの健康で文化的な食生活が破たんしてしまいます。
また、他の生き物が出した自然界の「ごみ」……動物のご遺体やふん、植物の枯葉、倒木……その他諸々……などを食べものとする昆虫もいるのですね。
彼らがいるおかげで、「小さな動物は大きな動物の食糧になり、大きな動物は死後分解されて自然界に戻る」という一連のサイクルが成り立っているといっても過言ではありません。
もちろん分解者は昆虫以外にもいますが、もし昆虫がいなくなればこれらのサイクルに大きな悪影響が出てしまい、おそらく成り立たなくなるのですね。
たとえて言うなら「ごみ処理業者さんがいなくなってしまった町」と同じ……きっと地球全域が「ごみため」になってしまうに違いありません。
そうなれば各地で衛生上の大きな問題が発生し、きっと得体のしれない病気が蔓延し、残された生き物たちもバッタバッタと死んでいくのだろう。
そしてその遺体がさらに環境を汚染し、大きな悪循環を呼び込むに違いない!
………これは一大事ですね。
紙面の都合上(?)、ほとんどざっと書いただけですが、これだけでも昆虫の減少と絶滅は大きな悪影響をはらんでいるということがわかるのですね。
……昆虫についてよく知らない人でも、ここまで読んでいただければおそらく冒頭の絶滅の危機が一体どれほどマッズ~イことなのかがわかると思います。
……たぶん。
……わかる……よね!?
………なんにせよとある研究によれば、もし昆虫がいなくなったら、地球は3日と持たないのですね。
つまり、「昆虫の絶滅=世界の終末」なのですね。
6度目の大量絶滅、救えるのは……?
さて……冒頭で言っていた「絶滅」に話を戻しましょう。
一度に多くの生物種が絶滅してしまう現象のことを「大量絶滅」と言います。
以前に「地球上において、過去に5回の大量絶滅(ビッグファイブ)が起こった」という記事を書きました。
敢えてこの時は書かなかったのですが……実は6回目があるのですね。
その6回目の大量絶滅は、今現在、まさに進行中です。
……我々が生きているこの時代は、6回目の大量絶滅の真っただ中なのですね。
そしてどうにもこの昆虫の大量絶滅もその一環らしいのですね。
私が見たのはAFP通信さんのニュースなのですが、それによるとどうやら毎年全昆虫種のうち1%が絶滅危惧種の仲間入りをしているのだそうです。
……これは驚くべき数字なのですね……。
ですがバイオマス……つまり、「地球上の全ての昆虫の体重の合計」はもっと深刻で、毎年2.5%ずつ減っているのですね。
つまり、絶滅危惧種にはならなかったとしても、全体として昆虫の数そのものが減りつつあるのですね。
そしてこのまま昆虫が減り続けてしまうと、数十年後には昆虫という生き物自体が地球上から姿を消してしまうかもしれないのですね。
そうなれば上で書いたような深刻な事態がいよいよ現実のものとなってしまいます。おそらく世界は滅んでしまうでしょう。
そして人類が行動を起こさねば、この昆虫大量絶滅は回避できないのですね。
……つまり、世界を救えるのは人類だけ、なのですね。
……今こそ……地球を救いに行く勇者が立ち上がらねば……!
具体的には、昆虫が減り続けているその原因を取り除かねばならないのですね。
おそらくそれを取り除ければ数十年後の絶滅は回避できる……と思います、多分……。
……もう手遅れだったりして……。
などというネガティブなことはこの際考えないことにします。
どうやら原因は森林破壊や都市開発、農地化……など、昆虫が住める環境が変わってしまったことにあるようです。
その次に農薬の使いすぎなどの「汚染」も含まれているようなのですが……圧倒的に大きな原因なのは環境なのですね。
こ、これは………。
つまり、住める場所が無くなってしまったため、昆虫の数が減ってしまったのですね。
つまり、逆に言えば住める場所を用意すれば何とかなるかもしれないのですね……!
……ただ、懸念もあります。
ここで世界の危機に気付いた一部の人たちだけが、一所懸命に昆虫が住めそうな場所を用意し、その数を回復させようと努力をしたとしても、おそらく何も変わらないと思うのですね。
たぶん、みんなが一丸となってそのような取り組みをしなければ結局はまた同じことになってしまうと思うのです。
と、いうのも……、私はこのような大量絶滅の原因は、多くの人たちの昆虫に対する無知と無理解であると考えているのですね。
昆虫は生態系にとって無くてはならない存在ですが、少し前までの人類ならば自然と密着して生活していたため、それくらいのことは言われなくともわかっていたのですね。
ただ、最近では文明の発展によって自然界との間に物理的な壁ができ、昆虫はじめとして自然や野生動物と触れ合う機会も減ったのですね。
それにより昆虫や自然について知らない人が増え……いうなれば、人類の全体とまではいかなくともほとんどが、そういった大事なことを忘れてしまったのですね。
このことはジャポニカ学習帳の表紙から昆虫が消えてしまった、という事実が象徴してくれていますね。
そしてその結果、彼らが生態系においてどれほど重要な役割を担っているかということまで忘れてしまい、彼らの住める場所を無くしてしまったらどれほどの悪影響が自然界に及ぼされるのかということにも気付けなくなったものと思われます。
むしろそれうんぬん以前に、彼らが「すぐそこに」住んでいる、ということにすら頭が回らなくなっているのかもしれません。
なんにせよそれらの要因が幾重にも重なりあい、このような事態になってしまうのではないかと思うのですね。
逆に言えば、みんながちゃんと昆虫のことを知れば、このような事態は防げるのですね。
これは昆虫に限らず全ての生き物に対して言えることだと思うのですが、大切なのはその生き物に関する正しい知識を一般に普及させていくことだと思うのです。
人間から見たら気持ち悪かったり奇妙だったりする生き物でも、自然界においては何かしらの大切な役割を持っているのであって、安易に死なせてしまえば当然環境に対して悪影響が出てしまいます。
また、一見すると誰も住んでいないように思える場所にも、いろいろな命が息づいている可能性があり、安易に壊してしまうと周りに深刻な影響を及ぼすおそれがあるのですね。
みんながもっと、生き物のことや生命の尊さを理解すれば、このような自然破壊は起きなくなると思うのです。
もし論文の予測が正しかったとすれば、向こう数十年の間に昆虫は絶滅し、それに伴い生態系も崩壊……結果、世界が滅ぶことになります。
これは巨大隕石が地球にぶつかるのと同じくらい深刻な状況です。
……もはや悠長なことは言っていられません。
はやく何とかしないと、本当に地球が滅びてしまいます。
今こそ皆が一丸となり、世界を救いに行かねば……!
世界を救うのはあなたです。
さあ勇者よ、今こそ台座に置かれた剣を引き抜くのです……!