奄美のマングースが間もなく終了のお知らせ
……どうにも微妙なニュースがあったのですね……。
沖縄本島や鹿児島県奄美大島で現在生態系を壊すとして問題になっている動物がいますね。
その名もマングース。
このマングースが環境省およびその依頼を受けた一般財団法人により、長年の苦労の末ついに島から根絶されようとしているのですね。
多い時では3000匹を超えていた捕獲数が、2018年度でついに1匹となり、間もなく奄美大島からいなくなりそうです。
もし島からマングースがいなくなれば、これで奄美大島の環境は保たれるのですね、多分。
……おそらく喜ばしいことなのだとは思うのですが、素直に喜べないのですね……。
そもそもどうしてこうなったか
さて……マングース。
もともと奄美大島には……というか日本には、いなかった動物なのですね。
奄美大島のマングースに限って言うなら、もともと1979年、ハブやネズミへの対策として奄美市名瀬に30匹が放たれたのが始まりなのですね。
……つまり、人が意図的に持ち込んだ動物なのですね。
そしてその後マングースは奄美大島全島に分布を拡大し、2000年頃には1万匹を超えるほどの集団と化してしまったのですね。
……たった30匹のマングースが、いつの間にか島全域を支配する勢いで爆発的に勢力を伸ばしてしまったのですね……。
凄まじい繁殖力に脱帽したいところですが、その結果アマミノクロウサギなどの在来種を食べてしまい、生態系に深刻なダメージを与えてしまったのですね。
……かんじんのハブやネズミはどうなのかというと、残念ながらマングースさんたちはあまり彼らを食べなかったのですね。
ネズミに関しては、どうにも彼らは木の上などのマングースの手の届かないところに住んでいるため、捕まえることができなかったようです。
また、ハブはマングースにとっても狩りづらい相手だったのですね。
そのためマングースはアマミノクロウサギなど、もっと簡単に捕まえることができる別の動物を獲物にしてしまったのですね。
……そもそもハブなんて、人間にとっても危険な毒蛇です。こんなの一体誰が好き好んで食べるのだろうか……。
一歩間違えれば自分がガブリ!
毒が回って即アウトです。
こんなに危ない生き物をわざわざ食べようだなんて思う動物はいませんよね。
サバンナ最強と噂されるあの動物ならば話は別かもしれませんが……。
……こんなに簡単なこと、どうして気付かなかったのだろうか……。
なんにせよ、増えすぎたマングースがハブを駆除してくれるどころか結果として他の動物を食べてしまい、奄美大島の生態系を荒らしてしまったのですね。
そのため2000年ごろから環境省が一般財団法人自然環境研究センターに捕獲・駆除業務を委託したのですね。
そして対策チームである「奄美マングースバスターズ」が中心となり、これまで駆除活動を進めてきていたようです。
……マングースバスターズの皆さん、本当にお疲れ様です……。
苦労の甲斐もあり、ピーク時には1万匹を超えたマングースは、17年度末で50匹以下にまで減ったと言われているのですね。
……50匹……。
まだ、油断ができない気がするのですが……。
だって、最初はこれよりもさらに少ないたったの30匹から全てが始まったのですね。
ここで油断すればまたこの50匹が爆発的に増殖してしまい、再び奄美大島が陥落してしまいますね。
ここは最後の踏ん張りどころ……島の環境を守るためにも、マングースバスターズの皆さんにはぜひ頑張って欲しいところです。
……正直微妙な気持ちですが……それが島の生き物たちのためになるのなら、仕方がありません。
奄美大島のマングース
とりあえず、奄美大島ならびに沖縄本島に住んでいるマングースについて調べてみたのですね。
彼らは分類学的には「フイリマングース」と呼ばれる種類なのですね。
動物界-脊索動物門-脊椎動物亜門-哺乳綱-ネコ目-マングース科-エジプトマングース属
に属するマングースの仲間で、学名は「Herpestes auropunctatus」というのですね。
上にも書いた通り、奄美大島には1979年に放たれたわけなのですが、実はそれに先立って1910年時点で沖縄本島に放たれていたのですね。
どうにも沖縄のマングースは動物学者の渡瀬庄三郎さんが、ガンジス川の河口付近で捕まえたフイリマングースを持ち込んだのが始まりのようです。
当初は那覇市と西原町に十数匹が放たれたのですね。
……なるほどこれが全ての始まりであったか……。
その後渡瀬さんの死後、沖縄本島から奄美大島にも導入されたようです。
……沖縄の生態系がこの時点でおかしくなっていて、またかんじんのハブが減らないことに気付かなかったのだろうか……69年も時間があったのに。
またこの渡瀬庄三郎さん、他にもウシガエルやアメリカザリガニの輸入も行っているのですね。
この時に輸入されたウシガエルやアメリカザリガニはその後逃げ出し、結果現在では両方とも野生化しており、日本の在来ガエル、在来ザリガニその他在来種の存在を脅かし続けているのはみなさん周知の事実ですね。
……なんと、マングース問題だけでなくウシガエル問題やアメザリ問題も渡瀬さんが原因を作っていたのですね。
あれ……。
……と、いうことは……。
…………………悪いのは全部コイツじゃん。
わ~た~せ~!!!!
……ただ、同時に渡瀬さんは生物学界に多大なる貢献もしていたようで、なんとあの我々の食卓にとってとてつもなく重要でなくてはならない存在であるすごい動物………「ホタルイカ」、の、名付け親でもあるのですね。世の中狭いものですね。
ホタルイカ、学名も「Watasenia scintillans」と、しっかり「わたせ」です。
いや、それだけすごいことなのでしょう。
それまでは単に「コイカ」「マツイカ」などと呼ばれていた淡く輝く小さなイカに「ホタルイカ」という立派な名前を与えるだなんて……。
これは生物学史上類を見ないとてつもない貢献です!
たとえマングースさんやウシガエルさんやアメリカザリガニさんを持ち込んで日本の生態系をめちゃくちゃにして、さらにその責任を環境省やバスターズの皆さん、ひいては当事者であるマングースさん、ウシガエルさん、アメリカザリガニさんたちに押し付け、彼ら「悪い悪い外来種たち」に「駆除」の名のもとに甚大なる死者を出したとしても、十分に許されてしまうほど素晴らしい成果なのですね!
こ、これは……!!
まさに「腕のいい動物学者は、何やっても許されるんだよ」、なのですね。
きっと渡瀬さんはその手腕を以て数々の動物たちを「片っ端から研究してやるよ」と研究し続けていたに違いありません。
他にも「シロアリさんたちを『駆除』する方法」や、養狐業……つまり、「お金持ちを満足させるための毛皮を取る目的でキツネを飼育し殺害する方法」などの偉大な研究を行っていたのですね。
……すごい……さすがに「腕のいい動物学者」は違います。こんなに素晴らしい研究をなさるだなんて。
シロアリさんたちを皆殺しにしたり、キツネたちを強制収容所よろしく劣悪な環境で育て、時が来れば「毛皮の為だけに」殺害する研究だなんて……本当に動物を愛している真の動物学者でなければまったくもってできませんし思いつくことすらもできないようなすごい研究なのですね!凡人の私には到底理解できません!
渡瀬さん……とってもすごい動物学者さんなのですね。
今のご時世、彼のようなことができる動物学者さんはおそらくいないでしょう。
それなのにきつねは「悪いのは全部コイツ」だなんて言って……自分が恥ずかしいですし非常に申し訳がないのですね!
言うまでもなくマングースが悪いわけではありません
さて……いろいろと脱線してしまいました。
このままではこの記事が渡瀬さんを「褒めちぎる」だけの内容になってしまいそうなので、話を元に戻しますね。
マングースさんたちは結果として島の生態系を壊してしまいました。
ですが、きっと皆さんならわかって頂けると思うのですが、決して彼らが悪いわけではありません。
言うまでもないことですが、彼らは自分たちが来たくて島に来たわけではありませんし、壊したくて生態系を壊したわけではありません。
全部すべて「偉大なる動物学者の偉大すぎる失敗」が引き起こした悲劇なのですね。
本来いるはずのない場所に彼らが来てしまったことも、その結果自然環境が壊れ、多くの生き物たちが危険な状態に陥ってしまったことも、また環境省やバスターズの皆さんが多くのマングースさんたちを泣く泣く死なせなければならなかったことも。
できればマングースさんたち……駆除するのではなくて元いた場所に返してあげられればいいのですが、コスト的な理由を除いたとしても、遺伝子汚染の問題からそれはできないのですね。
つまり、すでに日本で暮らすようになってしまった彼らは、日本の環境に適応して変化し、もともと住んでいたガンジス川の河口近くのマングースとはもはや違うものになってしまっているのですね。
ここでガンジスマングースたちの中に日本マングースたちを戻してしまうと、その時点で交雑が起き、今度はガンジスマングースたちが雑種化し、純粋なガンジスマングースがいなくなり、結果ガンジス側の環境がおかしくなってしまうのですね。
日本の環境を守るためにガンジス側の環境を壊してしまうのでは本末転倒です。
結果として…………皆殺しにするしかないのですね。
これはもう、何も考えないで他所の生態系から動物を輸入したことのツケを支払わされてしまっているのですね……マングースさんに食べられてしまう島の生き物たちと、やりたくもないマングース駆除に追われる環境省ならびにバスターズの皆さん、また駆除されてしまうマングースさんたちが。
とてつもない理不尽ですし、もはや悲劇としか言いようがないのですが……ですが、島の環境を守るためにはマングースさんたちに島からいなくなってもらうしかないのですね……。
非常に残念な結果なのですね……。