論文を読んでいるけど……
今朝なにやらボーイングが「空飛ぶ車」の試作機を完成させてテスト中だなどという面白そうなニュースを見かけたのですね。
このようなSFに登場しそうな乗り物がいよいよ現実味を帯びてきているのですね。
また一般的にこれらの乗り物は「空飛ぶ車」と呼ばれていますが、「空飛ぶ車」だなんてちょっとした映画のタイトルになりそうな名前なのですね。
なんとなく「空飛ぶタイヤ」を思い起こしてしまうからだと思われますが、きっと気のせいなのでしょう。
「空飛ぶ車」についていろいろ書こうと思ったのですがとりあえず調べものに避ける労力の関係で今日は見送ってしまったのですね。
……この話題についてはまたの機会に。
それで、本日の話題なのですが……先日の記事で言っていた論文なのですね。
……そんなの読んでない?
……説明します。
実はきつね、ただいまとある動物に関する論文を解読中なのですね。
論文自体は2012年に書かれたもので、割と古い部類に入りそうだとは思うのですが、どうにも私の知らないことが書かれているようなので有意義に読んでいるのですね。
題材がひじょうにマイナーな生き物であるためおそらくここで名前を出しても「ナニソレ?」というのが大方の反応だと思いますし、敢えて内容には触れないことにしますが、なんにせよこれが難解なのですね。
……早い話が、読めない!のですね……。
学術的な論文というものは「世界中の研究者たちが読めるように」英語で書かれているのですね。
……この論文を書いた研究チームは殆どが中国人であり、英語圏のメンバーは1人しかいないようなのですが、それでも英語で書かれているのですね、中国語ではなくて。
きっとチーム内でも「ただ1人の英語圏のメンバー」が「みんなに合わせて中国語を使う」のではなく、「他の中国人のメンバー」が「ただ1人の英語圏のメンバーに合わせて英語を使っている」のだろう。
何だかいかにも英語圏民と非英語圏民との関係らしいですが、おそらくそれがこの世界の現状の縮図に違いない。
世界の人たちにとっては読みやすい?本当でしょうね……
また、前の記事でも書いた通り、論文が読めない原因は以下の3つなのですね……。
- 単語や熟語がわからない
- 内容がわからない
- 文法がわからない
あの時は「ふ~ん、そうなのかぁ」程度で済ませていたのですが、実際に読んでみてよくわかったのですね……出てくる単語が難しい!
ところできつね、よくチェスのサイトを使うのですね。
たぶんアメリカのサイトで、ひとりで詰将棋だの友達と対局だの色々なことができるのですが、その中に達人が親切丁寧に手取り足取りいろいろ教えてくれる機能があります。
……一応サイトは日本語モードにしているので、本来ならここも日本語になるはずなのですが、翻訳が追い付かないらしく最初から今の今まで英語のままなのですね……。
なのでいつもそれを読んで勉強しているのですね。
初めのうちは苦労しましたが、割と平易な文章で書かれているので、今では辞書さえ傍らに置いておけば割と気軽に読めるようになったのですね。
……ですが!
この論文の英語の難易度、これはもうチェスサイトの文章の比ではありません。
一文長い!
専門用語多すぎ!
というか、無駄に難しい!
私は生物が好きですから、自慢じゃありませんが生物学の専門用語は結構知っている方なのですね。
ですが日本語では知っている用語でも英語になるとわからないのですね……当たり前かもしれませんが。
わからない……というのはつまり、用語とそれが表す概念とのイメージがうまく一致しないのですね。
例えば日本語で「後口動物」といえば「後ろが口になった動物なんだな」となんとなくイメージすることができますが、英語で「Deuterostome」などと言われてもピンとこないのですね。
……たぶんそもそも英語じゃないと思うのですが……。
対義語に「前口動物」というのがあり、これは文字通り「前が口になった動物」なのですが、英語では「Protostome」というのですね。
2つ比べてみるとおそらく「stome」の部分が「口」という意味なのかななどと思うのですが、それも日本語と比べればの話なのですね。
「proto」だの「deutero」だの「stome」だの、そんな単語日常的な英語にはまず出てきません。
もっと簡単に「frontmouth」「rearmouth」だのと言ってくれればいいのですが、おそらくこれはラテン語やギリシア語の用語をそのまま英語読みしているのだと思いますし、外国語の単語をそのまま英語読みして「英単語ということにしておく」のは英語という言語の常套手段ですから、そういうわけにもいかないのでしょう。
なんにせよこういう単語がいろいろあるのでとっつきにくいのですね。
……英語圏の人たちも同じことを考えているのだろうか……。
と、いうか、専門用語以外にも難しい言葉が多すぎるのですね……。
簡単に説明できるはずの表現でもどういうわけか難しい言葉で書かれているのですね……。
まるで純文学でも読んでいるような気分になってきます。
「外から見た限りでは、初期状態での溝の長さは、最初の穴を格納するために突然幅が広くなる前の均一な開きを示している。」
………言語明瞭意味不明、ですね。
私の翻訳がまずいのでしょうか……。
と、いうより、そもそも原文が難しいからこういう翻訳になるのですが。
……むしろわざわざ好き好んで難しい言葉を使おうとしているような……。
論文というのは「世界中の研究者」に対して「読みやすいように」英語で書かれているはずなのに、わざわざ難しい言葉を使うんじゃぁ本末転倒なのではなかろうか……。
まるで「英語圏以外の人は読まんでいい」と言っているのではないだろうかと勘繰りたくなります。
結局は英語圏が得をしているだけじゃん
なんにせよ、1つわかったことがあります。
世界中の「非英語圏」の研究者たちは、こんなふうに悪戦苦闘しながら難しい文章を読んで研究しているのですね。
ですがそれはあくまで「非英語圏」の話で、「英語圏」の研究者たちはここまで手間取ることなくすらすら読んでしまうものと思われます。
……きつね、こういうときにはいつも、つくづく「不公平だ」と感じるのですね。
……論文をすらすら読めたら、一体どれだけ余った時間を有意義に使えるのでしょう。
あっという間に論文が読めるのだとしたら、残りの時間を早速研究に充てることができてしまいますね。
もちろんそんなことができるのは「英語圏」の人たちだけで、後の人たちはよほど英語が得意な人でない限り「論文に悪戦苦闘する」わけですから、その分の研究時間が割かれてしまうのですね。
きっとこんなことだから重大な発見や発明は英語圏に持って行かれてしまうのだろう。
……「世界中の人たちに読めるように」と言いつつ結局本当の意味で「得をしている」のは「英語圏」だけなのですね、最初からわかりきっていましたが。
もちろんこれは論文に限ったことではないのですね。
あらゆる業界において今や英語は事実上の「世界共通語」として機能してしまっているということは皆さん周知の事実なのですね。
……理不尽この上ありませんが。
英語なんて所詮は生みの親である大英帝国が武力に物を言わせて世界中を支配し、その後帝国の没落と共に衰退するはずだったのになぜか同じく英語を母語とするアメリカという強国が現れてしまい、そのアメリカが英語の衰退を経済力に物を言わせてストップさせてしまったため、今現在もこうして流行り続けているだけの言語なのですね。
……早い話が「世界共通語」でもなんでもなくて、「イギリスとアメリカがタッグを組んで無理やり世界中にばらまいた自分たちのエゴの塊」なのですね。
まるで過去に中国や韓国を支配して日本語をばらまいた大日本帝国のようだ。
あの時は日本語が中国の一部地域や韓国、台湾を支配しそうになり、現地の言語に深刻なダメージを与えて大変まずい展開になりましたが、それよりもさらにまずいことに英語の場合はそれが世界規模で、さらに帝国の支配が終わった後も衰退せず持続してしまっているということなのですね。
おかげで既に広い範囲でアイルランド語やスウェーデン語などの少数派の言語が衰退、果ては消滅の危機に瀕しているわけなのですが、このような世界規模の「言語帝国主義」は英語が史上初なのですね。
もし彼らが当初から謙虚に「自分たちの言葉をばらまくのではなくて自分たちが外国語を学ぼう」と考えていれば、そもそもこのような状況にはなっていないものと思われます。
よく巷で「英語はシンプルで簡単だから広まった」などという意見を耳にしますが、英語の本質や支配言語の広まりのメカニズムというものをまったく理解していないのですね。
複雑な時制や中途半端な格変化があって綴りも不規則、また不規則動詞が100個以上もあるような言語を一体どうして「シンプルで簡単だ」などと言うことができるのでしょう。
そういう意見を言う前にまずは中国語やエスペラント語などの本当の意味で「シンプルで(日本人にとっては)簡単な言語」を学んでみてはどうかと提案したくなるのですね……。
ところで、今朝の新聞に面白い記事があったのですね。
とあるアメリカのシンクタンク研究員が、そういう現状も踏まえて日本の新聞記者に「アメリカ人は母語が英語だから得だよね」と冗談交じりに言われたのだそうです。
そして研究員は「英語しかわからないアメリカ人は世界の多様性が理解できない。逆に大きなハンデなんだ」と大真面目に反論した……のだそうです。
……そうでしょうとも。
確かに彼らにとってはそれは「深刻な問題」なのですね。
ですが、私たちから見れば結局そんなの「外国語勉強すりゃいいじゃん」というだけのお話なのですね。
要するに、「世界の多様性が理解できない」だなんて、非英語圏の人達の「英語を勉強するために大きな手間と時間を割かなければならない」というハンデに比べたら「大したことはないちっぽけな問題」だ!……なのですね。
むしろ「世界の多様性を理解していない」英語圏の人だからこそこのような「甘い」ことが言えるのではなかろうか……。
こんなちっぽけな問題を「大きなハンデ」だなんて……。
われわれ非英語圏の住人が日々どれほど苦労しているのか理解していればこのような発言はしないと思うのですね……。
そんなことも知らないでやれ「大きなハンデ」だのやれ「おれ達は外国語で内緒話ができない」だのと言っている英語圏民の、なんと多いことか。
こ……これは……。
ボーっと生きてんじゃねーよ!!
あらゆる業界において非英語圏の人が「英語の文献に悪戦苦闘」している間に一体彼らはどれほど「自分のやりたい研究」を進めることができるのだろうか。
やはり案の定世界的に見ても得をしているのは彼らなのだろう。
きっとこれから「言語的優位性」に物を言わせて、論文どころかありとあらゆるメディアが英語になり、それらのメディアに気軽にアクセスできる英語圏の人たちはあっという間に世界中の知識やらなんやらを吸収し、彼らの勢力はますます強くなっていくのだろう。
それにより研究や学問以外の分野でも非英語圏と英語圏との格差がますます大きくなっていき、やがては世界全体に修復不可能なほど深刻な「言語カースト制度」が生まれ、既にこの世界に存在する「生まれた環境でその人の人生が決まる」という深刻な社会問題にさらに拍車をかけてしまうに違いない!
英語を母語とする人たちは、その「言語的優位性」の上にあぐらをかいてますます外国語を学ぼうとしなくなり、やがては現在の日本を支配している「お客様は神様だ」に始まる「お客の甘え根性」と似たようなものが英語圏を支配し、「英語国民は神様だ」「みんな英語を話してちょ」みたいな考え方が蔓延していくのだろう。
また、「これよりも英語を母語にする方がいいから」と幾多の言語がその持ち主たちによって泣く泣く捨てられていき、それを止めようとする「母国語を守ろうとする人たち」が一斉蜂起して半ばテロリストと化し、「自分たちの言語を抑圧している英語を母語とする人たちおよび彼らを擁護する一部の自国の人々」をターゲットとした大規模な攻撃が始まるのだろう。
その結果世界中のあらゆる国々は「親英語派」と「反英語派」とに分断され、内戦を中心とした世界規模の大戦(おおいくさ)……「世界英語大戦」にまで発展していくんだ、絶対そうだ!
こ……これは……!!
…………いよいよ世界が滅んでしまいますね。
肝心の論文は
色々と妄想しましたが、肝心の論文解読はまだ終わっていないのですね……。
……とりあえず現状既に2日ほど費やしているのですが……実はまだ5分の1程度しか解読できていません……。
2日で5分の1ですから、途中に図が入っていることを考慮しても全部解読し終わる頃には1週間近くが経過していそうなのですね……。
……そんなにしてまで解読する必要があるものなのだろうか……。
これで苦労して解読して、その後実は「この論文の内容は既に日本語の書籍になっています!」などという無情な事実が判明するんだ、きっとそうだ!
なんにせよ、きっと初めて読む論文だからこれだけ時間がかかるのでしょう。
おそらくこれから先はもっとペースが加速していく可能性も考えられるのですね。
と、いうことは……。
この「最初の試練」が終われば次からはもっと早く自由に読むことができるようになるのだろう。
……少なくともこの分野においては。
とりあえず……気長に少しずつ解読していってみようと思うのですね……。