きつねとべっつりコーラのブログ。

きつねとべっつりコーラの2匹が、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。生物多め。

ヤドカリ、家泥棒を防ぐためにアレが発達!?アメリカの大学助教授が発表したって……

ヤドカリさんの体……

お馴染みの生き物である「ヤドカリ」について、なにやら面白い研究結果が発表されたようです。

それによるとある種のヤドカリのオスは貝殻の盗難を防止するため、自分の生殖器を長く発達させたというのですね。

………なんだかいきなりきわどい話題になってきた気がするのですが……あくまで「生物」の話でありそれ以外の意味はないということを強調しておきます。

………と、いうより、「生殖器を発達させると貝殻を守れる」って……意味がわかりません。

なんにせよこの研究を真の意味で理解するためにはまず「ヤドカリ」という生き物について知る必要があると思うので、まずはそこから調べてみようと思います。

色々と目からうろこな情報が出てくるかもしれないので、「ヤドカリなんて知ってるよ!」などと思わず最後までお付き合いいただけると幸いです……。


ヤドカリ

まずは今回の「主役」の再定義から……。

動物界-節足動物門-甲殻亜門-エビ綱-エビ目-エビ亜目-ヤドカリ下目-ヤドカリ上科

に属する動物のうち、「貝殻を背負って生活するもの」をヤドカリというのですね。

つまり、文字通り「宿を借りて」いるものをこう呼ぶのであって、タラバガニやハナサキガニ、ヤシガニなど、おなじ「ヤドカリ上科」に属していても貝殻を背負わないものは「ヤドカリ」とは呼ばないのですね。
ヤシガニは小さい頃は貝殻を背負って生活しますが……。)

ヤドカリはエビやカニと同じ仲間ですが、貝殻を背負うという独特な生活スタイルに特化したため、退化した歩脚や貝殻に合わせて右巻きに巻いた軟らかい腹部など、その体のつくりが大分他のエビやカニとは異なるのですね。

エビやカニに同じく1対2本の鋏脚(ハサミ)と4対8本の歩脚(歩く足)がありますが、目立っている歩脚は前の2対だけで、後ろ側の2対は小さく退化しているのですね。
これは貝殻に入りやすくするために小さくなったというのと、貝殻にたまったゴミを掻き出す役割があるというのと、貝殻を固定しておくのに使うというのと、色々な意味があるようです。

また腹部は軟らかくなり、節足動物の特徴である節が目立たなくなっています。
軟らかくて節が無いだなんてなんだかクモの腹部を彷彿とさせますが、ヤドカリの場合は右巻きが多い巻貝に合わせて腹部も右に巻いているのですね。

エビやカニに同じく腹部にも「腹肢」と呼ばれる付属肢があるのですね。

エビの場合、腹肢は泳ぐためのヒレとして発達していますが、カニの腹肢は常に折り曲げられた腹部と頭胸部の間にあってほとんど使うことがないため退化しているのですね。
(メスの場合は卵を抱くのに使うためそれなりに発達しているようです。)

ヤドカリの場合はというと、なんと左側にしかないのですね。
ヤドカリの腹肢は退化していますが、右巻きの巻貝に合わせて右側が特に退化したものと思われます。

またエビやカニに同じくメスの場合は卵を抱くのにも使うため、卵を抱けるように腹肢が大きくなっているのですね。

また腹部の先つまりお尻には、腹部よりも硬い尾節と尾肢(エビでいう尻尾の部分)があり、これも貝殻を固定するのに使われているのですね。
……どうやら種類によってはこの部分が無いものもいるようですが……。

なんにせよヤドカリというのは文字通り「貝殻を背負うために特化した体つき」をしているのですね。


軟らかい腹部を保護するために貝殻を背負っているのか、それとも貝殻を背負っているうちに腹部が硬い必要がなくなり軟らかくなったのかは謎なのですね………どうしてこうなった。


また、貝殻の大きさはずっとそのままですから、ヤドカリは自分の成長に応じて体の大きさに合った貝殻を選んで交換していくのですね。

オカヤドカリなど一部のヤドカリでは自分の貝殻をより住みやすいように改造(リフォーム?)するのだそうです。


ところで、ヤドカリだけでなくエビやカニもそうなのですが、彼らの生殖器は歩脚の付け根にあるのですね。

具体的にはオスの場合は第5胸脚(ハサミも含めて前から5番目の歩脚……つまり、いちばん後ろの歩脚)、メスの場合は第3胸脚の付け根に、それぞれついているのですね。

歩脚は全て頭胸部……つまり、頭と胸が一体となった部分についていますから、当然生殖器もここについていることになります。

……なんと、エビやカニやヤドカリは胸から卵を産むのですね!
きつね、てっきりお尻から産むのかと思っていました……。


また、当然左右の足の付け根に1つずつあるわけですから、卵を産む穴も精子を出す器官も、それぞれ2つあるのですね。

……こういうところ、ちょっとクモに近いのですね。

甲殻類は分類上ではクモよりも昆虫に近いはずなのですが……昆虫は普通にお尻から卵を産みますし、生殖器も1つだけなので、こういうつくりだけ見ると昆虫とは程遠い感じがします……。
どうにも昆虫の生殖器と彼らのそれとは由来が根本的に異なるのかもしれません。

クモの仲間やエビカニヤドカリの仲間の生殖器はどうやら「付属肢」が発達したものなのですね……。
つまり、「触覚」や「足」と同じものなのですね……。

昆虫は……どうだったかな。


……脊椎動物の常識からするとなんだかとんでもない構造な気がするのですが、彼らにとっては普通のことなのでしょう……。
また同じ脊椎動物でも網によって生殖器の由来は手足だったり尻尾だったりとまちまちですから、由来が変わるというのは一般的なことなのかもしれませんし、「足」に由来していたとしても不思議ではないのかもしれません。

なんにせよ生物多様性の神秘を感じます……。

ちなみに哺乳類の生殖器は尻尾の細胞に由来するのですね。
アレが尻尾から分れたって……なんだかヘンな感じがしますが……。

……哺乳類は哺乳類でトンデモ構造なのかも。


パブリックな財産とプライベートな局部

……さて……、ヤドカリについていろいろ調べているうちに多様性の神秘としか言いようのないトンデモな構造に出くわし、ほどよく混乱してきたところで(?)本題に戻ります。

今月16日つまり昨日、アメリカのダートマス大学の生物科学部助教授マーク・ライドレさんが、イギリス王立協会の「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス」という科学雑誌「パブリックな財産とプライベートな局部」と題して自身の研究結果を発表したのですね。


……タイトルが素晴らしいですね。
ランドレさんのネーミングセンスの高さを感じます。


上にも書いた通りヤドカリは普段貝殻を背負って生活していますが、常に他のヤドカリに取られてしまう危険にさらされているのですね。
また貝殻をリフォームして住みやすくしている場合ほど、取られた時の損害も大きいのですね。


そしてどうにも交尾をするときにこの貝殻が無防備になり、盗難のリスクが高まるようなのですね。
理由は交尾に夢中になっていて泥棒さんの襲来に気付かないというのと、また単純に交尾のために貝殻の外に出ているからというのがあるようです。

……胸に生殖器が付いていても、一旦貝殻から出なければ交尾ができないのだろうか……。


そこで出てくるのが「長い」生殖器なのですね。

ライドレさんはまず「生殖器が長ければ、体の他の部分はしっかりと自分の貝殻に入ったまま交尾相手と接触することができるので、交尾中の横取りから財産(貝殻)を守ることができるのではないか」と考えたようです。
……つまり、なにも貝殻から出なくても交尾ができる、ということなのですね。

これにより「オスとメスとが協力して命を繋ぐ情熱的な時間」を安心して過ごすことができる……のだそうです。
……つまり生殖器が長ければ安心して交尾ができるのですね。

そして仮説を裏付けるため、実際に博物館に行ってヤドカリの標本をたくさん調べて検証してみたのですね。
もし仮説が正しければ「貝殻をリフォームするヤドカリ」ほど生殖器が長いということになります。


……なんだか昔フジテレビでやっていた「トリビアの泉」という番組の「トリビアの種」というコーナーを思い出したのですが……。
あれは日常の素朴な疑問から生まれたくだらない問題を凄まじい手間と労力をかけて大真面目に検証していく、というものでした。

問題自体は実に些細な内容なのですが、毎回毎回検証に「そこまでやるの!?」と思うくらいの時間やコストがかかっていることがシュールな笑いを誘ったのですね。

………あれとは少し違っていますが、こういうことを大真面目に研究しているこの人もすごいですね……色々な意味で。

そもそもどうしてこんな研究をしようと思ったのだろうか……。


なんにせよ最終的に328匹ものヤドカリ標本を調べた末、仮説は見事に立証されたのですね!

……よくやるわ……。


標本のヤドカリは貝殻の使い方により3つのグループに分かれたのだそうです。

1つ目はリフォームした貝殻に住む仲間で、オカヤドカリなどが含まれるようです。
2つ目はリフォームしていない貝殻に住む仲間で、一般的なヤドカリがここなのですね。
3つ目は小さい時は貝殻を使い、大人になると使わなくなる仲間で、ヤシガニなどが含まれるのですね。

そして、結果1つ目のグループのヤドカリが最も大きくて長い生殖器を持っていたのですね。


ランドレさんは「ヤドカリの生殖器の大きさについて、全ての仮説は私の説には敵わない!」……と自負しているのだそうです。

……ここは研究が正しかったことが証明されてよかったですね!と言っておくべきだと思うのですが、こんなことドヤ顔で言われてもなぁ……。


なんにせよ生物と研究者の多様性の不思議がわかる記事でした……。

きっとこの研究も、われわれ一般人にとってはくだらな……じゃない、よく分からなくても、その道を究めんとする研究者たちにとっては性器のじゃなくて世紀の大発見なのだろう。
ランドレさんはこの後いつの間にか偉い選考委員会の人たちに選ばれ、数年もたたないうちに見事に「イグノーベル生物学賞」の授賞式に参列しているに違いない!………あれ。

ともあれランドレさん、お疲れ様でした!