何とはなしに、きつねとコーラ。

管理人のきつねとその相棒のべっつりコーラが、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。

よく考えると全然昆虫っぽくない?いもむしはなぜあのような姿なのか

いもむし……

何分今回も非常にマニアックな内容になってしまうのですが……最後までお付き合いいただけると幸いです……。

いもむし……というのは、チョウやガの幼虫、もしくはそのような姿をした昆虫のことですね。
これは今更説明するまでもないでしょう。

元々はサトイモやサツマイモなど、イモの葉っぱを食べるスズメガ科の昆虫の幼虫のことをこう呼んだのですが、それがいつの間にか「スズメガの幼虫やそれに似た姿をする幼虫」全般をいもむしと呼ぶようになったのですね。
その中には「アオムシ」や「シャクトリムシ」などの細かい区分があり、また似たようなのに「ケムシ」というのがいるのですが、ややこしくなるのでとりあえず「ああいう形の幼虫全般」のことをここでは「いもむし」と呼ぶことにします。

ちょっと……いもむしについて最近気になることがあったのですね。
なので今日はそれを書こうと思います。


ぜんぜん節足動物っぽくないいもむし

……さて、キーワード「いもむし」を「#defineマクロ」のように再定義したところで本題です。

知っての通りいもむし含む「昆虫」という動物は、エビやカニやクモやダンゴムシやムカデやカブトガニに同じく「節足動物」というグループに属しているのですね。
分類学的には

動物界-節足動物門-六脚亜門-昆虫綱

に属する動物のことを「昆虫」と呼びますが、より広い意味では「昆虫綱」に限らず「六却亜門」に属する動物全てを「昆虫」と言ったりもするのですね。

また、同じ節足動物にはそのほかにもエビやカニダンゴムシなどの「甲殻亜門」やクモやカブトガニなどの「鋏角亜門」、ムカデなどの「多足亜門」が含まれていますね。
ですが「亜門」に関わらず全ての節足動物の共通点として挙げられるのが、

・クチクラでできた殻(外骨格)に覆われた硬い体を持つ
・それ故に体の各関節が節になっている(関節肢・体節制)
・表面が硬い殻であるため、成長するときは古く小さい殻を脱ぎ捨てる必要がある(脱皮)

……などの特徴なのですね。


……ですが最近ふと思ったのですね………。
いもむし、よくよく考えてみると昆虫どころか、全然節足動物っぽくありません。

……きつね、小さいころから昆虫図鑑などをよく読んでいましたし、どの図鑑にも「いもむし→さなぎ→チョウと変態する、これぞ完全変態でありこれぞ昆虫の醍醐味!」みたいに書かれているので、何の違和感なく「いもむし=昆虫」というイメージを持ってしまっていたのですね。

大人になったチョウの体は確かに硬い殻で覆われていますし、よく見るとエビやカニを思わせる関節の付いた足を持っています。
完全変態」をする昆虫なので幼少期であるいもむしとは似ても似つかない姿をしているのは当然なのですが、考えてみるといもむし、チョウどころか他の昆虫にも似ていません。

確かに体は節でできていますし脱皮もするのですが……他の昆虫の表面はカチカチに硬いのに対しいもむしの皮膚は軟らかいですし、他の節足動物のようなごつくて頑丈なイメージもありません。

また、その名の通り6本の足を持つことで知られている「六却亜門」に属してはいますが、いもむしの足の数はそもそも「6本」ではありません。
胸部にある「6本の足」のほかに、腹部にも「腹脚(属に言う「いぼ足」)」と呼ばれる足があるのですね……。


こ……これは……!!

……誰だよおまえ。


それにしても……なんか、既視感があります。
これらの体の特徴……、昆虫どころか節足動物ですらない、ある動物にそっくりなのですね………。


節足動物の前身「葉足動物」?

さて、ところ変わりまして過去の話です。

今からおよそ5億4000万年前のカンブリア紀の海で、大繁栄をしていた動物のグループがあるのですね。

その名を「葉足動物 Lobopodia」と言います。

なんだか聞き慣れない名前なのですが、実はここに属してる動物は結構な数が知られており、有名な所では「アイシュアイア」「ハルキゲニア」「ディアニア」などがいますね。


皆さんも一度は聞いたことがある名前なのではないでしょうか。

……一度も聞いたことがない……?


……まぁいいか……。


この「葉足動物」、節足動物と同じく「脱皮動物」というグループに属する仲間で、名前のとおり成長するときに脱皮するのですね。

また、この葉足動物、最近の学説ではのちに節足動物に進化したと言われているのですが、その基本の姿は「円柱状の胴体に、いくつもの足が付いた軟らかい動物」なのですね。


……どこからどう見てもいもむしです。


この葉足動物の系統の動物は今でも生き残っていて、節足動物と一緒に「汎節足動物」などと呼ばれています。
その中にはミイラ化すると無敵となるあのクマムシ(緩歩動物)や、イモトアヤコさんと世界の果てで戯れたカギムシ(有爪動物)が属しています。

どうやら大昔のある時点で「葉足動物」から「節足動物」「緩歩動物」「有爪動物」の3つに分かれたようなのですね。


なんにせよここで押さえておきたいのは、昆虫含む節足動物のご先祖様は「いもむしのような姿」をしていたということです。


それがそののちに体を硬化させ、ムカデのような姿に進化したと言われているのですね。

つまり、背中とお腹、2枚の硬い板と、1対の関節の付いた硬い足(付属肢といいます)からなるブロック(「体節」もしくは「節」)が、電車のように幾つも繋がってできた姿になったのですね。

ムカデやヤスデなどの多足亜門の動物は、節足動物の古い姿をそのまま受け継いでいると言われています。
……なんと、生きている化石だったのですね。

そしてムカデのような姿をしたご先祖さまからさらに進化が進むうち、体が「食べたり見たりするための部分」「歩いたり走ったりする部分」「生命維持や消化、生殖を司る部分」と機能ごとに分割されていき、「頭」「胸」「腹」の3つの部位からなる現在の昆虫の姿になっていったものと言われています。

昆虫の3つの部位はそれぞれ複数個の「節」が合体して1つになったもので、「頭」は7個、「胸」は3個の「節」からできていると考えられています。
「腹」は……よくわかりません。


なんいせよ「頭」についていた付属肢は触角やあごとなり、「胸」についていた付属肢は「足」として残り、「腹」に付いていた付属肢は必要が無くなり退化して消えてしまったのですね。


そのようにして6本の足を持つ現在の昆虫の姿になったのですね。
たくさんの足を持っていた祖先と比べると、かなりシンプルな形に進化したのですね。

いや、わざわざ部分ごとに役割分担を決めて必要な足を残して不必要な足を削っているので、その分遺伝子的には複雑になったのでしょう。翅も生えたし。
(このような役割分担をさせない場合、単純に同じ形のブロックをいくつも複製してつなげばいいので遺伝子的な処理は単純なものになります。)

またこの「昆虫の姿」は、体の各部位が専門の機能に特化し、部位ごとに完全な役割分担をさせることに成功した、節足動物の究極の姿であるとも言えます。


……そこで……思ったのですが。


昆虫のいもむしがあのような姿をしているのは、一種の先祖がえりのようなものなのではないだろうか……。

人間の胎児が羊水の中で、最初は尻尾やえらが付いた「魚のような形」をしているというのは有名な話ですね。
生物は生まれてくる前に子宮や卵の中で、その祖先となる動物の姿を再現することで体が形作られていくのですね。

これは遺伝子の進化の上でのメカニズムと関係しているのですが、なんにせよ動物というのは生まれる前に一度今までの進化のプロセスを再現するのですね。
これはどの動物でも共通のことで、昆虫も例外ではありません。

つまり昆虫も卵の中では一旦はご先祖様である葉足動物の姿になり、それから昆虫らしい姿になって生まれてくるはずです……多分。


……だとするとふと疑問が浮かびます。


この「再現」が最後まで行かず、「進化の途中の姿」のまま生まれてきたとしたら……。
昆虫が卵の中で「昆虫たる節足動物の姿」にならず、そのいくつか前の段階である「葉足動物に似た姿」のまま生まれてきたらどうなるのだろうか……。


……ま、まさか……!!


いもむしの正体って、そういうことなんじゃぁ……?


先祖がえりするように進化した!?

調べてみると……どうやら思った通りなのですね。
いもむしというのはやはり完全に昆虫の姿にならないまま幼虫としては完全な姿となり、生まれてくるようです。

……なんだかややこしいですが、卵の成長過程を見るとそれがわかるのですね。

卵の中の昆虫の子供……つまり「胚」は、大きく分けて3つの成長過程を経て昆虫の姿になっていくのですね。

1つめは「原肢期」……形ができ始めたばかりでまだほとんどの器官が出来上がっていない時期。
2つめは「多肢期」……体節ができあがりはじめ、またほとんどの節に付属肢がある姿になる時期。
3つめは「少肢期」……余分についていた腹の付属肢が無くなり、昆虫らしい姿になっていく時期。

バッタやセミなど、幼虫が親とほとんど同じ姿をしているいわゆる「不完全変態」の昆虫の場合、3までいってから生まれてくるようです。

ですが……おお……ビンゴです……!
チョウやガなどの「いもむし」として生まれてくるいわゆる「完全変態」の昆虫の場合、2の段階で早くも幼虫としての体を完成させ、生まれてきてしまうのですね。

そしてどうやらその後の3の段階に当たる時代は、新たに「さなぎ」というシステムを設け、その中で行うように進化をしたようです。


た……卵の最後の方をあとでやり直す……?

……まるでわれわれ学の無い者どもに「大学を出ていなくてもそんなものは社会人になったあとで入り直せばいい」と言っておるようじゃ……!
そうか、「卵の段階」を最後までクリアせず、「不完全な状態」で「社会人」になってしまったとしても、後で新たに「さなぎ」の時期を設けて「完全な姿」に「変態」すればいいんだ……!
き……希望はまだある……のだ!

まるで人生哲学のようですが、それを地で行くのがこの「完全変態」という進化の本質に違いない!


これにより完全変態昆虫は幼虫と成虫とで大きく姿を変えることができるのですね。
そしてそれにより「幼虫期は食べて成長することに専念し」「成虫になると動き回って活動し、結婚相手を探すことに専念する」と、幼虫・成虫とで役割分担をすることができるようになったようです。

こ……これは……!
ただでさえ「頭」「胸」「腹」で役割分担をするように進化した昆虫が、今度は自分の人生における「時代」で役割分担するようになったのですね!


まるで20台は「タダの無学な青年」として「アルバイトの掛け持ち」をしていた人がその後「大学社会人枠」という名の「さなぎ」の期間を経ることで後から「エリート層」に「完全変態」して仲間入りするかのようだ!
……なんと完成された人生システムなのでしょう!


「体のつくり」と「成長過程」、2つのベクトルにおいて役割分担化に成功してしまうだなんて……


……まさに究極の進化だ……。


昆虫の中でも最も進化している「完全変態昆虫」

なんにせよ、彼らにとっては幼虫の姿としては節足動物としての姿よりも「葉足動物のような姿」の方が都合がよかったのですね、きっと。

それにしても今まで進化の過程で通り越してきた段階の姿をまた持ち出して再利用するなんて……。

節足動物で最も進化した生き物は昆虫である……昆虫の中で最も進化しているのは完全変態を行う昆虫である……。

それは知っていたのですが、改めてこういうメカニズムを知ると、その意味が一層深く理解できます。
もはや「過去の遺物」と化したはずの「葉足動物のボディプラン」をロスト・テクノロジーとして永久に放棄しておくのではなく、敢えて現代によみがえらせて役立てようという方向性なのですね。

なんだかまるで「プロジェクトX」的な試みですが、やはり思った通りいもむしのあの姿は葉足動物の姿を再現していたのですね……。

しかもこれにより「幼虫と成虫との役割分担」が実現されたのですね。

これで全ての謎が解けました……やはりすべての手がかりはカンブリア紀にあったのですね!

昆虫に限らず全ての生命の本質を探る手がかりはカンブリア紀にあると思うのです……。


なんにせよこれで明日からいもむしを見る目が変わりそうです。
今までなんだかもにゅもにゅしてるだけのただのかわいい虫だと思っていたいもむしが、実は究極の進化の結果時空を超えて復活した葉足動物の要素を取り入れた形態だったとは。

これは、私にとって大いなる発見です……!


……そんなことどうだっていい?

……虫嫌いの人にはそうでしょうとも、ええ!