火星のクレーター湖?
何やら欧州宇宙機関(ESA)さんのサイトで先日荘厳な写真が発表されたのですね。
http://www.esa.int/spaceinimages/Images/2018/12/Perspective_view_of_Korolev_crater
私はてっきり凍りついた冬のカルデラ湖の写真かとおもったのですが、どうやら火星のクレーターだったようです。
これはESAさんの火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、氷の積もった巨大クレーターを撮影したものなのですね。
どうやらこの氷は正真正銘水の氷らしく、将来火星に人が行く際には貴重な水資源、もしくは一度に数万人単位で利用可能な巨大スケートリンクとして実用が期待できそうです。
写真を撮影したマーズ・エクスプレス
そういえば……こんな素晴らしい写真を撮影したのはどのような探査機だったのでしょう。
たしかインサイトの記事を書いた時に名前だけ見た気がしたのですが、具体的なことまでは調べませんでした。
というわけで、せっかくなので調べてみました。
まず、マーズ・エクスプレスというのは上にも書きましたがESAさんの火星探査機なのですね。
どうやら7つの観測機器を搭載しているようです。
ESAさんとしては初の火星探査……いや、惑星探査ミッションなのですね。
火星上空を探査する親機「マーズ・エクスプレス・オービター」と、地上を探索するイギリスの探査機「ビーグル2号」の2基からなるようです。
ビーグル(1)号というのは進化論で有名なチャールズ・ダーウィンさんが世界を航海するのに使った船の名前なのですね。
ダーウィンさんのビーグル号が地球の生物の進化に対して多くの知識をもたらしてくれたように、このビーグル2号も火星の生物に対して同じ役割をして欲しいという願いを込めてこの名が付けられたのだそうです。
また、マーズ・エクスプレス本体と合わせて火星と地球がまもなく最接近する2003年6月2日に、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたのですね。
打ち上げに使ったロケットはロシアのソユーズで、打ち上げからおよそ半年後の2003年12月25日……つまりクリスマスに火星に到着したのだそうです。
……きっとこれはESA職員にとって最大のクリスマスプレゼントだったことでしょう。
火星到着後はビーグル2号を地表に投下し、地質や生命の痕跡の調査をする予定だったのですね。
ですがビーグル2号の計画は結局失敗してしまったのですね……。
投下そのものには成功したのですが、太陽電池パネルを全て開けず、親機との通信ができなくなってしまったのですね。
ビーグル2号は無線通信で動き、また太陽電池パネルを全て開かない限り通信ができない構造のため、それ以上の活動を行うことはできなかったのですね。
……ビーグル2号開発の背景にあったであろう「下町ロケット」的なドラマを想像するとなんだかとても残念に思うのですが、その後親機であるオービター単体でミッションを進めていくことになったのですね。
またマーズ・エクスプレスは探査機というものの従来の考え方……1基に途方もない力を入れて作る……を捨て、「大量生産」型モデルとしてわりと低コスト・短時間で作られたのだそうです。
そのため設計寿命は火星の1年にあたる687日の予定だったのですが、実際はしぶとく15年以上も活動を続け、現在に至るのですね。
……まるで愛用していたペンケースが壊れたので、とりあえずの間に合わせに百均で買ってきたケースが、結局10年以上も壊れずにいまだに使い続けられ、1000円で買ってきた先代のケースの立派な後継機を務めているというような現象ですね。
割と「適当に」作ったものが成功したという例は創作の世界ではよくあることです。
なんにせよ地下にある氷の存在や、水が存在するという証拠、またつい最近まで火星にも火山活動があったという痕跡、はたまた生命のいる可能性を示唆するメタンガスの発見など、マーズ・エクスプレスの功績と恩恵は数知れないのですね。
「量産型」探査機……恐るべし。
火星のスケートリンク
さて……写真を撮った探査機のことがわかったところで本日の主役の登場です。
この写真の撮影日はどうやらよくわからないようなのですが(ESAさんが発表していないだけ?)、とりあえずESAさんが写真を公開したのは今月12月20なのですね。
移っている火山のカルデラ湖のようなものは火星北部の低地にある「コロリョフ(Korolev)」というクレーターなのですね。
「コロリョフ」というのはどうやらロシアのロケット開発において多大なる功績を遺した人の名前なのですね。
クレーターの中に雪のように白い氷が厚く積もっており、その厚さは年間を通じて1.8キロメートルなのですね。
……もしかして最初は液体の水だったのではないだろうか……。
火星は今でこそ凍りついた寒い星ですが、一説には昔は地球のように温暖で海があったと言われていますね。
もしかしたらこのコロリョフクレーターも、最初はクレーターに水が溜まったいわゆる「クレーター湖」だったのかもしれません。
その後火星が寒冷化し(氷河期?)、今の姿になる過程で凍り付いてしまったのでしょう、きっと。
なんにせよ中の氷によって大気が冷やされ、冷やされた大気が下に沈んで氷を覆い、熱をさえぎるため、氷は解けないのですね。
……とけないこおり……。
きっと「氷の抜け道」その他に落ちているアレと同じ成分なのでしょう。
持たせると「氷タイプ」の技の威力が上がるのですね。
クレーターそのものは直径82キロメートル、深さ1.9キロメートルなのだそうです。
……厚さ1.8キロメートルもそうですが、これはとてつもない大きさですね。
アメリカにもそのものずばり「クレーター湖」という名前の湖があり、アメリカで最も深い湖なのですが、それでも水の深さは594メートル、直径は最大で9.7キロメートルしかないのですね。
問題の火星のクレーター湖(?)はそれよりも遥かに大きいですね。
82キロといえば日本ならば新宿から富士山まで届いてしまうのですね。
……こんなに巨大な氷の湖……。
スケートリンクにしたらいったい何人同時に滑れるのだろうか……。
また、肝心のアメリカの「クレーター湖」は、名前こそ「クレーター湖」ですが、実際はクレーターに水が溜まってできた「クレーター湖」ではなく、火山の火口に水が溜まった「カルデラ湖」なのですね……紛らわしい!
いつか利用可能に!?
さて……近い将来、火星への有人飛行が可能になる日が来るだろうとは今現在一般的に言われていることですね。
このコロリョフクレーター、その時には大いに重宝しそうです。
氷の成分が本当に水なのだとしたら、滞在している人たちにとって貴重な水場ということになるのですね。
生活用水は言うまでもなく、地球行きのロケットの燃料の材料やその他工業用水としても利用されていくものと思われます。
また、外見の通りスケートリンクとしても使えそうなので、宇宙飛行士や、荒野ばかりで何もない火星で退屈している民間の火星移民の人たちには数少ない娯楽の1つとなるのでしょう。
きっとこれから宇宙航行技術が進歩し、ついにワープ機構を備えた「次元波動エンジン」のキーデバイスが地球で完全内製化されるようになり、官民問わず火星へ自由に行き来できるようになったころ、地球人口増加のため地球から火星に移り住んだ人たちがここで巨大なスケートリンクを共同経営し、まだ開拓が始まったばかりの火星での数少ない娯楽産業になるとともに、スピード、フィギュア問わずあまたの火星出身のトッププレイヤーたちが育ち、いつしかコロリョフクレーターは「火星スケート発祥の聖地」と呼ばれるようになっていくのだろう。
その頃には未来の羽生結弦選手や高木菜那選手……いや、もしかしたら「本人」が火星のスケートリンクを滑りまわり、「スケートリンク・コロリョフ」は同じく火星に移住したファンたちとの交流の場として、末永く愛用されていくに違いない!
問題なのは一体いつ次元波動エンジンのキーデバイスが完全内製化され、16万8000光年かなたの異星人の手助けを必要とせずとも気軽に民間人が火星に向かえるようになるかということなのですが、そればかりはさすがに宇宙航空の専門家でもなければ正確な答えを出すことは不可能に思われますので、ここでは敢えて触れないことにしておきましょう。
ともあれ、火星のスケートリンク……今後の将来に大いに期待できるものと思われます。