きつねとべっつりコーラのブログ。

きつねとべっつりコーラの2匹が、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。生物多め。

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだ」というフレーズの本当の意味について最近やっと気づいた気がする

いきなり何の話だ……と思われた方、失礼しました……。

ですがタイトルの通りなのですね。

よく小学生とかが

オカムラ、バカー!」
「うるさいバカっていう方がバカなんだぞ!」

……みたいなやり取りをしている光景が浮かぶのですが(本当だろうか)、その時に(?)使われるこの「馬鹿と言う方が馬鹿」というフレーズの意味を、最近になってこうなのではなかろうかと理解したのですね。


……なにぶんこれはきつねの見解ですし、それにこれほど有名な言葉なのですからどこかに真意について書かれた文献もありそうなもので、わざわざ私がいまさらここに書く意味も無さそうなのですが、敢えて書くことにしました。

あまり真に受けないで参考程度にお読みいただけると幸いです……。


なんにせよ、きっかけをくれたのは私の友人のひとりだったのですね。

……ここで勝手に名前を出すと後で本人に大目玉を食らいそうなので、とりあえずTさんと呼んでみます。

ともかくこの出来事があってから、私にはこれがただの「悔し紛れの小学生の反論」ではないように思えてならなかったのですね。

まずは事の成り行きから説明しないことにはどうにもならないと思いますので、最初にそのTさんの話を書きますね。


友人の話

まず、Tさんについての説明です。

Tさんはは私と同じくお絵描きさんで、また私に同じく動物の絵を専門的に描いている方……われわれの間で通じる言葉で言うところの「ケモノ絵師」というジャンルに属する方です。

絵の腕前は相当なもので、毎回毎回素晴らしい作品を仕上げてくるのですね。
その上他の人が知らないような動物に関する色々なことをごく当たり前のように知っていたりするので、絵の技術ともどもどこかで習ったのだろうかと勘繰りたくなるのですが、本人いわく「自分には先生はおらずお金も無いので、全部全て独学」なのだそうです。

一体どうやって学んだのだろう……。
……Tさん、恐るべし……。


そして事の発端なのですが……ある日そのTさんが私の所に凄まじい怒りの形相で来たのですね。

たいそう怒っていたので少々ためらったのですが、おそるおそる一体どうしたのだと訊いてみると、その訳を話してくれました。


どうやら少し前に、知人と雑談をしていたらしいのですね。

そしてひょんなことから絵の話になったのだそうです。

普段は口数の少ないTさんですが、この話題は得意分野ですから、水を得た魚の如く色々と喋ったらしいのですね。


……やめておけばいいのに……。


そしてTさんが、どうやら「自分は骨をちゃんと描けるようになりたい」みたいなことを言ったらしいのですね。


その途端、今まで興味深げに話を聞いてくれていた人たちに思い切り引かれてしまったのだそうです。

あまつさえその中のYさんという方に言われてしまったのだそうです。

「おまえ……馬鹿?」

……と。

……本当に「馬鹿」という言葉を言われたのかどうかは定かではありませんでしたが、なんにせよかなり馬鹿扱い……いや、おかしな人扱いはされたようです。

ありゃりゃ……。


その後Tさんはどうやら怒りを抑えながら必死に自分の言葉の意味を説明しようとしたらしいのですが、私には「果たして相手がちゃんと理解できたのかどうかは疑わしい」と言っていました。

……Yさんというのがどこの誰で、一体どんな状況でそんな話になったのかは聞かずじまいだったのですが、文脈からするとどうやら話していた相手はみんな絵描きではない第三者で、職場の同僚か誰かだったようなのですね。

なんにせよその後のTさんの怒り心頭ぶりは凄まじいもので、なだめるのにはいささか苦労しました。
挙句の果てには私にまで八つ当たりしてくるものですからもう……。

その後私が一緒にチェスをやろうと勧め、彼も乗ってきたのでその後は事なきを得たのですが(チェスをやると盤面に集中しなければならないため、他のことは考えられなくなります)、機嫌を損ねないようにこっそりとわざと負けるのは本当に苦労しました……。


それにしても一体どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか。
どうしてYさんはそんなことを言ってしまったのでしょう。


おそらく……いや、ほぼ確実に間違いないと思うのですが……Tさんの話を聞いた時、Yさんはこのように思ったはずです。


……コイツ、一体何を言ってるんだ!?


そして、しばらく考えようとしたのでしょう……いや、そう信じたいです。きっと考えようとしてくれたのでしょう……「どうしてこいつはこんなことを言うのだろうか」と。

しかし、残念ながらその答えは見つからなかったのですね。そして思わず言ってしまったのでしょう……「馬鹿」と。


……ここまで考えるとなんとなく、「馬鹿という方が馬鹿」という言葉の真意が見えてきましたね。

もちろんYさんが実際に「馬鹿」と言ったのかは定かではありません。
もしかしたら「おまえはおかしい」だったかもしれませんし、「それ絶対変だって」だったかもしれません。


なんにせよ、いずれにしても同じことです。


なぜでしょうか。
さらに詳しく見ていきましょう。


「知っている人」だからこそ理解できる。理解できないのは「知らない人」

Tさんの、一見すると不可解な言葉は、実は私には理解できました。

いや、私だけではないでしょう。
おそらく私たちに同じく絵を描く人なら、Tさんの言った言葉の意味はちゃんと理解できるはずですし、Tさんを馬……じゃないや、おかしな人扱いもしないはずです。

理由を説明しますね。


まず前提として。

「絵を描く」という行為は、「描きたい物」の構造をキャンバス上に再現する作業ですから、その構造をどれだけ熟知しているかで結果が大きく変わってしまうのですね。

……何だか難しい言い方になりましたが要するに「『描きたい物』の構造をちゃんと知っていなければ絵は上手く描けない」ということです。

多くの人が勘違いなさっているようなのですが、寸分の狂いもない綺麗な線を引く技術だとか、特別な画材を使いこなすスキルだとか、そういうものは実はあまり関係ないのですね。

もちろんその類の技術も大切ですが、それは「枝葉」であって「幹」ではありません。

それらは全て、「物の構造」をちゃんと把握している……もしくは「初めて見るものでも瞬時に構造を把握できる能力」があって、初めて役に立つものです。
「枝葉の技術」はそれらの「幹」を表現するための手段でしかないのですね。

ペンを持てても字を知らなければ字は書けません。

「物の構造を瞬時に把握する能力」は、「複雑な構造をより単純な構造の集まりとしてわかりやすく認識する力」、とも言えますね。

今回のテーマは「絵描き論」ではありませんから、詳しい話は省くことにしますが、なんにせよ上にも書いたとおり、Tさんはケモ……じゃないや、動物を専門に描く方です。
つまりTさんは動物を上手く描くために、「動物の体の構造をきちんと知らなければならない」のですね。

実際彼は「動物解剖学」……つまり、「動物の体の構造を研究する学問」ですが……についてはかなり……いや、相当詳しい方です。

おそらく私なんかよりもよほど詳しいでしょう。

「最近肩のヘンな所が凝る」と言うものですから私がどこが痛いのかと訊くと、「僧帽筋の一番下の縁の背骨との境界近くに触ると『ヒュッ』と痛い」などという答えが返ってきました……。


……な、何を言っているんだ……。


他にも「太ももが痛い。内転筋のでかい方が筋肉痛だ」だの「中臀筋が凝ってる」だの「菱形筋の上の方が痛い」だの「そろそろ肩甲下筋が凝り固まってきたから伸ばしたい」だの……「患部」の名称がピンポイントで返ってきます。

あなたは整体師かストレッチトレーナーか何かかとツッコミを入れたくなるのですが、どうやら彼は脊椎動物というものの全身隅々の骨や筋肉の名前、構造、位置関係などを把握しているようなのですね。
(人も犬も猫も鳥も、全ての脊椎動物は同じ基本構造を持ちます。細かいところは違いますが。)

自分の筋肉に至っては、どこの筋肉を触るとどんな感覚がするのかということまで把握しているようです。
なんと、触られただけでその場所にある筋肉の名前がわかるのですね。

筋肉どころか、骨の名称も位置関係も全て把握しているようなのです。

ドンだけ詳しいんだよとツッコミたくなるのですが、彼がそこまで知っているのには理由があります。

なぜなら、彼が頻繁に描くのは哺乳類です。

哺乳類含める脊椎動物の体の構造は、まず最深部に「骨格」があり、その周りを「筋肉」が取り囲み、そしてその周りを脂肪や筋膜などの「皮下組織」、その上を「皮膚」、そして一番表層の部分を「体毛」が覆うことで形作られていますね。

しかし脊椎動物は「外側が軟らかく中が硬い」生き物ですから、外側の構造は水のように流動的で、把握するのは雲をつかむように難しいのですね。特に毛皮の輪郭を追ってみても、ちょっとした寝ぐせ1つで輪郭線の位置が大きく変わってしまいます。

特に毛の長い動物の場合、外から見ただけでは構造は把握できるものではありません。

逆にいちばん内側……「骨格」……は硬く、ポーズが変わることによる位置関係の変化はあっても皮膚や筋肉や毛のように流動することはありません。

そのため脊椎動物を描く時は基本的にこの「骨格」の位置関係をまず把握し、そこに筋肉と皮膚を追加し……最後に毛を生やしていく、という形で描いていくのが最も合理的なのですね。
(時と場合にもよりますが。)

骨の位置や状態(ポーズなど)がわかれば、そこについている筋肉がどのような状態か(伸びているか、縮んでいるか、それに伴う厚さの変化はどうか、など)もわかりますし、筋肉の状態がわかれば皮膚が、皮膚がわかれば毛皮が、それぞれわかるのですね。


そのため、「全ての始まり」である「骨格」のつくりを詳しく把握しておくことは真の意味での「上達」に関係してくるのですね。……多分。


もちろんそこまでやらなくても最低限の骨格と筋肉の構造・位置関係、内蔵の位置、皮膚の分布、毛の流れと生え方……などがわかれば動物は描けますし、きつねレベルだとそれくらいで事足りてしまうのですが、残念ながらTさんはそのような中途半端な知識で満足するような方ではないのですね。

筋肉は基本的に「骨と骨を結ぶ線分」ですから、始まりと終わりの詳しい位置を把握することにより、お互いの位置関係に対する理解をさらに深めることができます。

そして筋肉は骨についていますから、骨の構造を理解することで、筋肉のついている位置がわかり、筋肉どうしの位置関係もわかるのですね。

Tさんはおそらくさらに貪欲に知識を集めようとしたのでしょう。
そして動物の体の構造を徹底的に究めようと、骨のスケッチか何かをしていたのだと思います。

ですが難しいと感じていたのでしょう。おそらくもっとうまく描けるようになりたいと思っていたに違いありません。


……そのような態度があの発言につながったのですね。

よくもまぁそこまで文字通り「深い」ところを研究するなと思うのですが、これでどうしてTさんがあのようなことを言ったのかが理解できましたね。


「馬鹿」という言葉は即「思考停止」を招く

……なんだかここまで考えると、Tさんは「全然馬鹿じゃない」ですね。

それどころか私から見れば彼は、他の人が思いもよらないようなところまでちゃんと手を抜かずに研究しようとしている「すごい人」です。
これは本人も自虐的に言っていましたが、「妥協ができない職人気質の人」なのでしょう。

私にはそこまでの研究なんてとても真似できません。

相当な覚悟と忍耐力と知識に対するどん欲さが無ければできないでしょう。
Tさんはそれらすべてを兼ね備えたとても優秀な人なのだと思います。

むしろ私は、自分には理解できないことを言ったTさんに対して、このような理由がある可能性を深く考えることもなく思考停止に陥り、速やかに

「なぜこいつはこんなことを言ったのか? → 馬鹿だから」

という短絡的な結論を出してしまったYさんの方こそ馬……じゃないや、思慮が足りなかったのではなかろうかと言わざるを得ません。


……「馬鹿という方が馬鹿」……。


つまるところ、この言葉の本当の意味はそういうことなのではないでしょうか。


自分に理解できないことをする人がいた場合は、まずはどうしてその人がそのようなことをしているのかを理解しようと考えを巡らせることが大事なのだと思います。
相手が自分に理解できないこと(失敗なども含めて)をする時は、その裏に自分が知らない何らかの理由や事情があるはずです。

それを理解しようとすることを怠り、考えることを放棄してしまえば、そのまま思考停止に陥ってしまいますね。

ですが人間そんな風に考えることを放棄しても、「なぜこいつはこんなことをするのか」という疑問に対する答えは知りたいのですね。

知らなければ安心ができないのだと思います。相手の不可解な行動に対して、一定の理由を与えなければ不安で仕方がないのですね。

そしてその時、おそらく最も出してはいけない「間に合わせの答え」が出てくるのだと思います……「なぜなら馬鹿だから」と。


……ですがそんな答えを導いて、なおかつそれを相手に向かって言ってしまう時点で、その人は

「私はなぜあなたがそのようなことをするのか理解ができません。なぜならその理由を考えることができないからです。私はそれほど思慮が足りない浅はかで愚かな人間なのです」

と言っているに等しいのですね。

そして理由が考えられないため、とりあえず「間に合わせの答え」を出し、自分でその答えに納得するため、その答えが正しいものだと決めつけておくのですね……「あなたは馬鹿だ」と。

ですがこんなやり方……誰がどう見たって「賢いやり方」だとは言えませんね。

考えることを放棄している時点で既に建設的とは言えませんし、そもそも何の解決にもなっていません。

さらに自分が考えないことを「相手が馬鹿だから」と間に合わせの答えを決めつけることで正当化しています。

この時点で現実から目を背け、事実を捻じ曲げて自分にとって都合のいい形にでっち上げようとしていますね。

自分にとって都合が悪いことを認めようとせず、自分こそが正しいのだと思い込もうとするほど愚かなことはありません。


おおおお……!

……こ……これは……!!


まさに「馬鹿と言った方が馬鹿」なのですね。

 

……これが、きつねが理解したこの言葉の真意です。


つまり、この言葉は「馬鹿」という言葉を使うかどうかに関わらず、

「相手の不可解な行動の理由を理解しないまま、それを否定することは愚かである」

という意味であると、私は解釈しました。自分が理解していないものなんて、否定も肯定もしようがありませんものね。


実際はこのような意味があって作られた言い回しなのか、それとも本当にただの子供の負け惜しみだったのか、真偽のほどはわかりません。

ですが今のところこれを上回るほどの答えは私の中で出て来そうにありません。

ですのできつねは当分この解釈でこの言葉を使っていこうと思います。

 

…………………どこで!?