土星の環、あと1億年で終了のお知らせ
何やらショッキングな研究結果が出てきたようです。
我らが土星を象徴するあのワッカ!
既に「あれが無きゃ土星じゃない!」ともいえるほどおなじみとなっているあの土星の環が、なんと近い将来無くなってしまうというのですね。
なんだかあまりにも唐突な話なのですが、どうやら今は亡きアメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機、「カッシーニ」の調査により判明したのだそうです。
カッシーニは去年2017年9月15日に役目を終え、土星の大気圏に突入して土星の藻屑とな……じゃない、焼滅した無人土星探査機なのですね。
敢えて大気圏突入させたのは、もしかしたら探査機には地球の微生物が付着している可能性があり、生命がいると言われている土星の衛星に万が一ぶつかると、衛星の生態系に悪影響が出るかもしれないからなのですね。
……なんだか無人木星探査機である「ジュノー」の未来の姿にそっくりなのですが、きっと去年の9月にはNASAさんの多くの職員たちがカッシーニの最期の勇姿を見届け、涙を流しながら敬礼して見送ったのだろう。
この時にカッシーニが撮影した「土星の地表近くから見える土星の環」の写真が割と有名ですね。
そしてそのカッシーニは殉職……じゃない、職務を全うするまでの間に様々なデータを地球に送ってくれたのですね。
……な……なんと!!
いまさらだけど、さようなら、カッシーニ!
君のことは絶対に忘れないよ……!!
……などと感慨に浸っていたら話題が土星からカッシーニに変わってしまうので、話を元に戻しましょう。
どうして土星の環が消滅してしまうのでしょう。
というより、そもそもあのワッカは一体何なのだろうか……。
どうやらこのニュースを理解するためにはまずそこから知らなければならないようです。
なので調べてみましょう……そもそも土星ってどんな星でしたっけ。
土星 Saturnus
土星は太陽系第6惑星……つまり、内側から数えて6番目の惑星なのですね。
1つ手前の第5惑星である木星に次ぎ、太陽系で2番目に大きな星なのですね。
英語名は「サターン(Saturn)」といい、ローマ神話の農耕の神様であるサートゥルヌス(Saturnus)に由来します。
……決して悪魔のことではありません。
分類としては木星に同じく「木星型惑星(巨大ガス惑星)」に属するのですね。
……ん……?
ということはまさか……。
……まぁいいか。
大きさはなんと地球の直径のおよそ9倍。
木星の「地球の10倍」よりも少し小さいですが、それでもかなりの大きさです。
ただ、材質が材質なので大きさの割には密度は地球の8分の1、質量は95倍しかないのですね。
……スカスカ……。
そのため土星を受け入れるだけの巨大なプールとそれを満たす大量の水があれば、なんと土星は水に浮かんでしまうのですね。
土星がのんびり海や温泉やプールに浸かっているだなんてなんだかシュールな光景ですが、ほとんどがガスでできているがゆえにこのような現象が起こるのですね。
また表面には木星に同じく雲の模様があり、これも木星に同じく自転によるものなのですね。
自転周期は10時間とちょっとなので、木星よりも少し遅いのですね。
また、形は正確な球形ではなく、赤道直下が10%ほど膨らんだ楕円形になっているのですね。
木星や海王星などのガス惑星も膨らんでいますが、木星でも7%程度なので、タテとヨコの大きさの差は土星が太陽系一大きいのですね。
……太陽系一歪んでいる惑星……。
嬉しいような、そうでないような……。
土星としては複雑な気持ちでしょう。
おそらく自転速度が速い上に殆どが液体や気体でできた星であるため、赤道直下は遠心力による影響がもろに出てしまうものと思われます。
また、地球も実は赤道付近は微妙に歪んでいるのですが、さすが硬い岩石でできているだけあって土星ほどあからさまには変形しないのですね。
土星の内部構造に関しては例の如くWikipediaに面白い図がありましたので見てみました。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2d/Saturn_diagram.svg
とても興味深い図です。
こういう解剖図とか内部図解とか見ているとそれだけで時間が過ぎていってしまいますね。
これによると真ん中に岩と氷でできた核があり、その周りを金属水素やヘリウムの層(マントル?)が覆い、その外側を(普通の)液体の水素が、その周りを気体の水素、そして外側を大気と雲の層が覆っているようです。
……なんでしょう、この既視感は。
前に「木星の雲のイルカ」の記事を書いた時に木星の内部図解を見ましたが、それにそっくりなような……。
土星の大気は96.3%が水素で、3.25%がヘリウム、残りはその他の成分なのですね。
そして気になる雲の材質は……ああ、やっぱり……
………アンモニア。
………なのですね。
かんじんの土星の環
……雲がアンモニアでできているとか、殆どがガスだとか、そういう所は置いておいて……本題に入りましょう。
土星の大きな特徴として知られているのはなんといってもあの環ですよね。
この環はどうやら赤道上空6630キロから12万700キロの間に広がる途方もなく大きなものなのですね。
ですが厚さはなんとたったの20メートルしかないのだそうです。
……面積は地球の表面積よりも何倍も大きいのに、厚さは小学校のプールよりも薄いのですね。
気になる材質ですが、殆どが水の氷の粒でできているのですね。
また粒の大きさは顕微鏡サイズのものから数メートルを超えるものまでさまざまなのだそうです。
なんで高度10万キロのところを氷の粒が漂ってるんだよとツッコミを入れたくなるのですが、何やら過去にいろいろあったようです。
この環の起源については2つの説があり、昔存在していた「ヴェリタス」という衛星が砕けて環になったという説と、土星の材料となった星雲……つまり、宇宙空間を漂うガスやちりなど……が余ったものが環になった、という説とがあるのですね。
また、環ができた時期にも諸説あり、土星と一緒に40億年ほど前に誕生したという説と、後で数億年ほど前にできたという説があるようです。
……要するに、よくわかっていないのですね。
それにしても数億年前といえばおそらくちょうどカンブリア紀~デボン紀の間くらいのどこかなのでしょうか。
もしカンブリア紀の初めの方に既にワッカが形成されつつあったのだとすると、カンブリア紀序盤に遠浅の海に生息していたはずのベッツリコーラが土星の環誕生の瞬間に立ち会っていたとしても不思議はありません。
色々気になるところですが、どうにも最近では後者の説が有力なようです。
私が見たニュースの記事でもこちらの「最近誕生した」説を採用していたのですね。
……というか、「環ができてから1億年もたっていない」と書かれていたのですが……。
「数億年前」じゃなくて「1億年前」……?
そうだとすると「1億年前に誕生し、1億年後に無くなる土星の環の年齢は今現在丁度真ん中」だということになりますが、新しい説だろうか……。
いずれにせよ、そこまで最近になってやっと環ができたというなら、40億年も前に土星を作った材料が余ったから……ではなくて衛星が砕けたというのが本当らしい気がしてきますね。
何にせよ環の形成には衛星の一つであるエンケラドゥスが噴出した氷も一役買っているらしいのですね。
エンケラドゥスは西暦2199年に地球最後の宇宙戦艦が船体修理のため「コスモナイト90」という鉱物を取りに上陸し、そこで行方不明になっていた仲間の宇宙駆逐艦を発見、ついでに敵のアンドロイド兵を捕まえたことでも知られていますね。
木星の衛星であるエウロパと共に、地球外生命がいるのではないかと言われている星です。
両方とも表面は氷で覆われていますが、地下深くには海があるのではないかと考えられており、エンケラドゥスでも定期的に表面の氷の裂け目から熱水が噴き出すのですね。
先日殉職した探査機カッシーニが、この星を詳しく観測した結果、どうやら水蒸気の大気があるらしいことがわかってきました。
噴き出した熱水が気化して大気になるのではないかと思われますが、エンケラドゥスは重力がとても小さいため、大気はすぐに宇宙へと逃げてしまうのですね。
どうやらこの大気……いや、熱水が氷となり、土星の環に加わったもの思われます。いつごろの話かはわかりませんが。
またエンケラドゥスは「太陽系で最も白い星」とも言われているのですね。
その表面は南極のように美しい雪と氷で覆われているのだろう。
何だかロマンを感じますが、いつか地球人類がこの星まで行けるようになり、そこに埋蔵されている「次元波動エンジンのコンデンサを作るのに必要な金属コスモナイト90」を採掘しに来るころには、おそらくこの星にいるであろう地下生命についてももっと詳しいことがわかっているはず!?
……などと遠い宇宙に浮かぶ小さな白い雪の星に想いを馳せているうちにどうやらこの星は今回のテーマである「土星の環の消滅」とはあまり関係がなさそうだという驚愕の事実が明らかになってきたので、話を土星の環に戻しましょう。
土星のような環は木星や海王星などの他のガス惑星にもありますが、一番目立つのはなんといっても土星なのですね。
諸々の事情により大きな環が出来上がったようですが、この環は今現在も土星の重力に引かれて内側の方から分解されつつあり、地表に「環の雨」となって降り注いでいるのだそうですね。
なんと、「高度10万キロ前後のところを浮かんでいる氷の粒」は、常に「重力に引かれて落ちている」のですね!
てっきり土星の重力と、環自身の公転もしくは土星の自転による遠心力とが釣り合う微妙な軌道上に位置しているため環としての形を保っているものとばかり思っていたのですが、実際は重力の方がごくわずかに強いようです。
そして気になる「雨量」なのですが、30分でオリンピック用プール一杯分ほどの雨が常に降り注いでいると研究者たちは考えていたのですね。
なにかと土星とプールが引き合いに出されますが、その場合計算上あと3億年は持つことになるのだそうです。
ですがカッシーニが実際の降雨量を調べたところ、実はその3倍もの激しい雨であるということがわかったのですね。
つまり、土星の環はあと1億年で全てが雨となり土星本体に降ってしまうのですね。
……そして後には何も残らない……。
これでは土星は我々の知っているワッカの付いた星ではなく、何の特徴もないただの星になってしまいます。
まるで禅智内供さんの鼻が一夜にして普通の大きさになってしまったような喪失感です。
そして人々は「せめてワッカのお墓を作ろう」と近所の衛星エンケラドゥスに「氷原の墓標」を建て、今は亡き土星の環を弔うに違いない!
実は奇跡だった「土星の環」
しかし……土星の環が誕生してから数億年……いや、最近の説では1億年か……。
それが1億年後には無くなるのだとしたら、「環が付いた土星」は2億年間限定の「期間限定モデル」ということになります。
2億年というと長く感じますが、土星の年齢が40億歳を超えていることを考えると、殆ど一瞬です。
たとえて言うなら去年からとある芸で人気を集めている40歳のお笑い芸人が、「人気のところまことに遺憾ながら来年中にはこの芸を辞めます」と言っているようなものでしょう。
2年間限定の芸だなんて……我々はなんという奇跡の瞬間に立ち会ったのでしょう!
また、これらの研究結果から、木星や天王星や海王星にもむかしは大きな環があったのではないかと言われているのですね。
つまり、最初は大きかった木星や天王星や海王星の環も、その後雨となって惑星本体に降り注ぎ、今のように小さくなってしまったと考えられているのですね。
……ジュノーによって木星の「環の雨」は観測されなかったのだろうか……。
むしろ逆に「これから環が成長を続けて大きくなるのではないか」などと考たくなってしまうのですが、その可能性は低いのでしょう、きっと。
……実際あのワッカはどれくらいのスピードで誕生したのだろうか……。
ある日突然……とまではいかないにしても、数十年ほどの短い期間に形成されていった……のでしょうか。
残念ながら現時点ではワッカの誕生のメカニズムはまだ解明されていないようなのですが、これも近い将来わかってくるのかもしれません。
……人類がエンケラドゥスに行けるようになるころ……まではさすがに待てませんが……。
ともあれ、土星のワッカはあと1億年は持つそうなので、われわれが生きている間になくなってしまう心配は無さそうです。