何とはなしに、きつねとコーラ。

管理人のきつねとその相棒のべっつりコーラが、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。

ミノムシの糸、クモより強し!?土にかえる最強の繊維!

ええと、みのむしの……?

昨日に引き続きまた昆虫の話題なのですが……。

なんだかすごい技術が生まれたらしいですね。


名古屋市中区の医薬品メーカー、興和さんと、茨城県つくば市農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)さんとが共同で、なんとミノムシの糸を取り出す技術を開発したのですね。

技術については5日つまり昨日に発表したようで、現在特許を出願中なのだそうです。


興和さんと農研機構さんには「繊維卸部門」なる部門があったのですね。

2年前の2016年から共同でつくば市に「興和先端科学研究所」を設立し、そこでミノムシおよび他の数十種類の昆虫の糸について共同研究を進めていたのだそうです。

……昆虫の糸が次世代の繊維素材になると当時から目を付けていたのでしょうか……。

研究所は数ある「糸を吐く昆虫の糸」の中で、ミノムシが蓑を作る時や移動するときに吐き出す糸に注目するに至ったのですね。

ミノムシの糸は真っ直ぐ取り出せないという難点があったため、今までは繊維としては使えなかったのだそうです。

それが今回特殊な装置を使うことにより可能になった、ということなのですね。

また、取り出した糸の性能を比べてみたところ、これまで自然界最強とされていたクモの糸(オニグモの糸)よりも強度があったのだそうです。

引っ張っても元に戻る力が3倍近く、伸ばした時の糸の切れやすさは半分……などと言われているのですね。


なんと……これは大発見です。
あのクモの糸を上回る性能の糸を作る生き物が他にいたのですね……しかもすごく身近な虫だったのですね……。


…………ミノムシすごいぜ!


ミノムシ

さて、今日の主役の虫ですが……、一口に「ミノムシ」と言っても実は何種類かいるのですね。

広義では「チョウ目ミノガ科」に属するガの幼虫全般を「ミノムシ」と呼びますが、狭義ではその中の「オオミノガ」と「チャミノガ」の幼虫をこう呼び、興和先端科学研究所で飼育されているミノムシもこの2種類なのですね。

それぞれ同じ

節足動物門-六脚亜門-昆虫綱-鱗翅目(チョウ目)-ヒロズコガ上科-ミノガ科-Eumeta属

に属する昆虫で、それぞれ学名を「Eumeta japonica(オオミノガ)」、「Eumeta minuscula(チャミノガ)」というのですね。

Eumetaという属前の和名はないらしく、意味も残念ながらわからなかったのですが、学名はそれぞれ「日本のEumeta」「小さいEumeta」という意味なのですね。

名前のとおり、チャミノガオオミノガよりも大分小ぶりなのですね。


それで、この2種類の昆虫については……あまりにも身近なので今更説明するまでもないでしょう。
たぶん、ミノムシを知らない人を探す方が困難だと思います……。


とりあえず、ミノムシは葉っぱや木の枝の破片などを集めて蓑の形をした巣を作りますね。
ですがこれらは必ずしも葉っぱや木の枝である必要はなく、「細かく切った色紙」や「毛糸のくず」など、およそ材料になりそうなものなら何でも良いのですね。

これらの「材料」とミノムシを一緒に小さな箱の中に入れておくと、翌日には立派な蓑が出来上がっている……などという遊びをしたことがある方も多いでしょう。

私も昔やったことがあります……あれはたしか……「細かく切った色紙」だったと思いますが、翌日にはそれはそれは色鮮やかな蓑が出来上がっていたのでした……。


「そのカラフルな蓑は君にあげよう。」


……なんか違う気が……。


心の糸はどうやってとるのか

しかし……ミノムシの糸って、いったいどうやって取り出すのでしょうか。
そもそもあまりミノムシと糸とが結びつかない気がするのですが……。

蓑から取り出すにしても、あまり大した量が取れない感じがします。
ミノムシが蓑を作る時には確かに糸を使って材料を縫い合わせますが、材料の殆どは葉っぱや小枝なので、あまり糸の出番はないんじゃないかという気もするのですが……。


……そう思っていたら、実は意外にも、ミノムシの方があのカイコよりも糸をたくさん作れるのですね。

カイコは一生に一回、繭を作る時にしか糸を出さないそうなのですが、ミノムシは餌を与えれば生きている限り何度でも糸を吐いてくれるのですね。

また、大体のイモムシがそうするように、ミノムシも歩き回って移動する時には糸を吐き続けるのですね。
これは糸につかまりながら歩くことにより足元を安定させるという効果と、万が一足を踏み外して落ちそうになっても糸が命綱になって助かるという効果の2つがあります。

森の中を歩いているとたまにイモムシが木から糸でぶら下がっていたりしますね。
あれはうっかり足を滑らせて落ちてしまったイモムシです。

ですが糸の命綱のおかげで地面に落ちずに済むのですね。

農研機構さんはこの習性に着目したようです。

つまり、ミノムシが歩き続けることができる長い一本道の装置を用意し、そこを歩かせたのですね。
移動している間はずっと糸を吐き続けるので、道が長ければ数百メートル単位の長い糸を取ることもできるのですね。

……なんと、蓑から取り出すのではないのですね。
カイコの繭の先入観があったのでてっきり蓑を煮て取り出すのかと思っていました……。
蓑は繭と違い、取り上げれば何度でも作ってくれますからカイコよりもたくさん取れるのかなと……。

………歩いた跡の糸を取る。
…………その発想はなかった……。

きっと今まで「糸が真っ直ぐ取り出せない」と言われていたのも、「蓑から取り出したから」だったのでしょう……。

まさに発想の転換ですね。


オニグモ

さて、今回ミノムシと引き合いに出されているオニグモについて、せっかくなので書いておきましょう。

イモムシと並んで糸を出す生き物の代表格であるクモを忘れるわけにはいきません。

オニグモ

節足動物門-鋏角亜門-クモ綱-クモ目-コガネグモ科-オニグモ

に属する節足動物で、学名を「Araneus ventricosus」というのですね。

大きくてごつくて見るからに強そうなクモです。
きっとだから「鬼蜘蛛」という名前になったのでしょう。

オニグモの毒は人間には効きませんが、それでも咬まれるとチクリと痛むそうですから牙もかなり強力なのですね。

ですが色合いは割と地味で、このクモがあのカラフルな「コガネグモ」と同じグループに属しているのはなんだか不思議な感じがします……。

また、コガネグモに同じくオニグモも典型的な「網を張るクモ」で、オニグモ属の学名「Araneus(アラネウス)」もラテン語で「クモ」という意味なのですね。


……そのまんまじゃん。


ミノムシの時代が訪れる前は、このオニグモが出す糸が自然界最強の繊維だと考えられていたのですね。

その強度は鋼鉄の5倍もあると言われ、エンピツほどの太さの糸を作ってそれで大きな網を作ることができれば、理論上は旅客機ですらも受け止めることができると言われています。

制御不能になった旅客機を丸ごと救出するシステムなんかが作れそうですね。
それで中の人たちを無事に救出できるのかどうかは別として。

なんにせよオニグモはこの強靭な糸を使い、飛んでくる昆虫を捕まえるための定置網を作るのですね。

ごつい外見に似合わずこのクモが作り出す網は非常に繊細で美しく、その技術はまさに職人技としかいいようがないのですが、それに触れると長くなりそうなのでまた今度にしましょう……。

……獲物が掛かるのをじっと待っている間は退屈じゃないのか知らん……。


また、余談ですがクモも歩き回る時には糸を出しながら進みますね。

よく天井からクモがぶら下がっていたりしますが、クモの糸もイモムシの糸と同じく足を滑らせた時のための命綱なのですね。
万一足を踏み外してしまっても、クモはこの糸を器用に手繰り寄せて天井に戻ることができます。

イモムシは……どうだったかな。


当然土にかえるので環境対策もバッチリ

さて、ミノムシの糸に話を戻しましょう。

クモの糸よりも遥かに強靭だということがわかったミノムシの糸ですが、実際にこれを加工して素材を作ってみたのですね。

自動車の外装などに使われる素材に「繊維強化プラスチック(FRP)」というものがあります。
このFRPに、一般的に使われる「エポキシ樹脂」の繊維の代りにミノムシの糸を組み込んだところ、普通のFRPの数倍の強度になったのですね。

……どうやって作ったんだろうと疑問が湧くのですが、おそらく企業秘密だろうと思われるので触れないことにしましょう。

この「ミノムシFRP」、丈夫なだけでなく従来よりも軽かったのですね。

またミノムシの糸には340度の高温にも耐えることができる能力があるため、将来的には従来のシルク繊維や合成繊維に代わる素材として実用化が期待されているのですね。

当然ですがたんぱく質でできているため、使用後は自然界で分解されて土にかえります。

つまりプラスチックごみを出さない「生分解性ブラスチック」よろしく、廃棄時に環境に負担をかけない夢の素材なのですね……!

興和さんと農研機構さんは今後素材メーカーさんたちとも連携を進め、数年以内の実用化を目指すのだそうです。


興和さんと農研機構さんは既にミノムシをたくさん飼う方法も見つけているそうですね。
今は研究員さんたちが手作業で数百グラムずつ糸を取っているらしいのですが(どれくらいの量だ?)、既にミノムシはたくさん飼えるようになっているので、今後は機械化などにより量産できるようになるものと思われます。

そうすればゆくゆくはシルクと同じくらいの値段で提供できるとのことです。


強度、耐熱性、自然にやさしい……3拍子揃った夢の素材が間もなく割と安い値段で一般に流通する日が訪れそうです。
用途は今の所防弾チョッキや車や飛行機などの分野になりそうですが……。