何とはなしに、きつねとコーラ。

管理人のきつねとその相棒のべっつりコーラが、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。

カマキリだと思ったらカマキリじゃない?香川照之さんの名前の新種

琥珀のカマキリ

日本で唯一のカマキリの化石というものがあるらしいですね。

どうやら岩手県久慈市にて2006年に発掘されたものなのだそうです。

久慈市は世界有数の琥珀の産地で、「日本唯一のカマキリ化石」も実は琥珀なのですね。

琥珀というのは大昔の木の樹液が化石になったもので、たまに虫や小動物などが中に閉じ込められて保存されていますね。

太古の生き物が封じ込められているという所にロマンを掻き立てられるのか、色々なフィクション作品にもキーアイテムとして登場します。

某有名な恐竜映画では琥珀に閉じ込められた遺伝子を元に恐竜を復活させましたし、某「夜が明けることがない世界」の郵便屋さんは特殊な琥珀を使用して自身の「『こころ』の欠片」を武器に転用し、配達の邪魔をする巨大昆虫に敢然と立ち向かっていました。


今回の琥珀はおよそ8600万年前の白亜紀後期の地層から発見されたもので、中にカマキリが閉じ込められているのですね。

カマキリの琥珀や化石は今の所日本ではこれ1つしかなかったのですね。


なるほどそれは貴重な化石です。


……ですがこの「日本唯一のカマキリ化石」、あとでよく調べてみたら実は残念ながら「日本唯一のカマキリ」ではなかったのですね。
というより、そもそもカマキリですらなかったようです。

一体どういうことでしょうか。


実は別の昆虫

琥珀の中の昆虫は大きくて鎌のような形をした前脚を持っています。

そのため発見当初からカマキリだと考えられていたようなのですが、実は当時は時間が無くて十分な鑑定ができなかったのだそうです。

……つまり、最初から「カマキリらしい」ということはわかっていましたがカマキリだという決定的な証拠があったわけではなかったのですね。
どうにも成り行きでカマキリだということになっていたようです。

……なんだかこの時点で既にアヤシイ匂いがしてきましたが……。

そのため……なのかどうかはわかりませんが、大阪府箕面市にある箕面公園昆虫館館長の中峰空さんが、この琥珀をことし4月頃から調べなおしていたのですね。

その結果、触覚の形や翅の模様、前脚の「跗節(ふせつ)」部分のトゲ……などのカマキリには無い特徴が見て取れたのだそうです。

カマキリはとても長い触角を持っていますが、この昆虫は違ったのですね。

また「跗節」というのは昆虫の脚の「節」の一つで、一番先の方の細かくなっている所です。

昆虫の脚は根元から順に「基節」「転節」「腿節」「脛節」「跗節」……という部品(節)が繋がってできています。
人の脚が「もも」「スネ」「足」「指」とつながっているのと同じですね(厳密にはもっと細かいですが)。

この部品の中で、一番先の方にある細かい所……普通は1~5個ほどの関節が集まってできている所……指のように……を「跗節」といいます。

この跗節の一番先には通常2本程度の鉤爪がついていて、この爪のおかげで昆虫は壁や天井を歩くことができるのですね。

カマキリの前脚は鎌の形をしていますが、よく見ると実はそのさらに先にちゃんと跗節がついています。
カマキリの跗節にはトゲはありません。
ですが化石の虫の跗節にはトゲがある……。


……つまり、どうやらこの昆虫はカマキリではなさそうだということがわかってきたのですね。

………案の定。


正体は「トガマムシ

中峰さんたちが文献をあさり調べてみると、琥珀の虫は「アミメカゲロウ目トガマムシ科」の昆虫であるということがわかったようです。

カマキリは「カマキリ目」の昆虫のことですから、全く別の種類の虫だったのですね。

また、トガマムシ科の昆虫の化石も、2006年当時のカマキリ化石と同じく国内ではこれまでに発見されていなかったのですね。

つまり、「日本唯一のカマキリ化石」は、実はカマキリではなく「日本唯一のトガマムシ化石」だったのですね!


残念ながら「日本唯一のカマキリ」ではありませんでしたが、トガマムシであっても「日本唯一」であることには変わりません。


……これはこれで大発見だ……!


しかも、話はそれだけでは終わりません。
この虫……どうやら新種だったのですね………なんと!!さらなる大発見です!


新種の生き物の名前は、それを発見した人がつけることができます。
さっそく中峰さんたちは名前をつけることにしたのですね。

そして和名を「クジコハクトガマムシ」、学名を「Kujiberotha teruyukii(クジベローサ・テルユキイ)」と命名したのですね。

和名は「久慈市琥珀」にちなんだ名前ですね。

学名の「Kujiberotha(クジコハクトガマムシ属?)」にも久慈市の名前が入っています。
また種小名の「teruyukii」は昆虫好きな俳優、香川照之さんの名前にちなんだのだそうです。

香川さんといえばNHKの「昆虫すごいぜ!」でカマキリ先生を演じていることでも有名ですね。
また毎回毎回体を張って珍しい昆虫を探し回ったり昆虫の能力を体験したりなさっています。

「teruyukii」は「照之」のラテン語綴り「Teruyukius」の単数属格で、「照之の」という意味ですね。

香川さんが子供たちの昆虫への関心を高めているということに敬意を表して付けられたのだそうです。

中峰館長いわく、「昆虫館で子どもと接していると、香川さんのおかげで子供の昆虫に対する敷居が低くなったことが実感できる」……のだそうです。

……香川さん、そんなに子供たちの昆虫好きに貢献なさっていたのですね……。
昆虫もすごいですが、香川さんもすごいですね。


………照之すごいぜ!


もちろん命名するにあたり本人の許可は取ってあるのだそうです。


また、このクジコハクトガマムシの件は4日付で動物分類学の国際専門誌「ZooKeys」のオンライン版に発表されたのだそうですね。

……動物分類学の雑誌……そんなのがあるのですね……。

何だかすっごくそそられるのですけれども……!

きつね、分類学とか解剖学とか好きなのですね……!
……マニアックだと言われそうですが。


そういえばトガマムシって何?

……今まで何気なくスルーしていましたが、そう言えば聞き慣れない名前です。

昆虫に関しては相当な知識を持っていると人から言われるきつねですが、「トガマムシ」なんて名前は聞いたことがありません。

おそらく日本に生息していないから……なのだとは思いますが、一体どんな昆虫なのでしょうか。


……例の如くちょっと……調べてみました。


それによると……ええと……、トガマムシは現在はアフリカ南部にのみ生息する昆虫なのだそうで、カマキリモドキに近い仲間なのですね。

サハラ砂漠よりも南の地域に3属13種が分布しているのだそうです。


……これだけではイマイチよくわかりませんね。
そもそも「カマキリモドキ」って何だよというツッコミが飛んできそうです。


カマキリモドキは……簡単に説明するとカマキリに似ているけれども別の昆虫です。

分類を見てみると一目瞭然です。

カマキリは上にも書いた通り

昆虫綱-カマキリ目

に属する動物の総称ですが、カマキリモドキは

昆虫綱-アミメカゲロウ目-カマキリモドキ上科-カマキリモドキ科

に属する昆虫の総称です。

……この時点で既に分類が違いますね。

「カマキリ目」ではなく「アミメカゲロウ目」の昆虫です。
「目」レベルで違うので、「昆虫」であるというところ以外は「別物」だと思って差し支えありません。

アミメカゲロウ目というとわかりづらいですが、有名な所では「ウスバカゲロウ」が属していますので、とりあえずは「ウスバカゲロウの仲間」だと思えば問題ないでしょう。

「ウスバカゲロウ(Hagenomyia micans)」を知らない人はまずいないでしょう。
これは

アミメカゲロウ目-ウスバカゲロウ上科-ウスバカゲロウ科-ウスバカゲロウ属

に属する昆虫で、その幼虫は地面に穴を掘ってすり鉢状の巣を作り、アリが落ちてくるのを待ち構えて食べるとても有名なあの虫……………


……「アリジゴク」ですね。


カマキリモドキはどちらかというとカマキリではなくアリジゴクつまりウスバカゲロウの仲間なのですね。


そしてカマキリモドキは、その名の通りカマキリに似た姿をしたアミカゲロウです。
前足はもちろん鎌の形をしています。ただしカマキリとは微妙に格好が違いますが……。

ですが用途は同じで、この鎌を使って小さな昆虫をとらえて食べるのですね。


また今回の新種は

アミメカゲロウ目-カマキリモドキ上科-トガマムシ科-Paraberothinae亜科-Kujiberotha属
(※ラテン語の部分は和名が無い所です。すみません……)

に属する「クジコハクトガマムシ(Kujiberotha teruyukii)」なのですね。

トガマムシ科は「Rhachiberothinae亜科」と「Paraberothinae亜科」とに分かれますが、「Paraberothinae亜科」は絶滅グループで、現存するのは「Rhachiberothinae亜科」のみなのですね。

……つまり、「クジコハクトガマムシ」の仲間は亜科ごと絶滅してしまったのですね…………。


……なんだか色々な虫の名前が出てきて混乱しそうですが、要するに「トガマムシ」は「ウスバカゲロウやカマキリモドキ」と同じ仲間で、「カマキリモドキと同じくカマキリに似た姿をしている」のですね。


白亜紀には今よりもたくさんいたということは知られていたらしいのですが、東アジアで見つかったのは初めてなのだそうです。


……この時点ですごい発見じゃん。


なお、「トガマムシ」という名前は今回の発見に伴って鋭い鎌を意味する言葉「利鎌(とがま)」から付けた名前のようです。

…………「利鎌」……!
なんだかかっこいいですね!

この単語の中に戦国武将の魂が渦巻いているのを感じたのは私だけでしょうか。
何やらほら貝の音とともに「種子島型心弾銃」の銃声が聞こえた気がするのですが……。

もともと現在では日本に生息していない虫ですから、今まで和名が無かったのですね。
アフリカはトガマムシ、日本その他はカマキリモドキ……と住み分けているみたいですね。

……と、いうことは……。
きつねが名前を知らなかったのも無理はないのですね。


カマキリじゃなかったが大発見

………それにしても、カマキリだのカマキリモドキだのトガマムシだの……まったく別の昆虫なのに似たような形をしているなんて……。


……収斂進化ですね。


収斂進化というのは「全然違う生き物なのに同じような環境で同じような用途で体を使うことにより似たような格好に進化した」という現象で、身近な生き物の例ではモモンガとフクロモモンガ、イルカと魚竜、アルマジロダンゴムシ、ノートパソコンと電子辞書などが挙げられますね。

この収斂進化のおかげで最初はカマキリだと間違えられていた「クジコハクトガマムシ」ですが、調べ直したら日本唯一……いや、下手をすると東アジア唯一のトガマムシで、しかも新種だということがわかったのですね。

「日本唯一のカマキリ化石」ではありませんでしたが、これはこれで大発見です。
もしかすると……いや、確実に、「日本唯一のカマキリ化石」よりも凄いものだと思われます。

……なんだか何の気なしに「なんでも鑑定団」に出したら値段が付けられないくらいの高価な品物だった……みたいな展開ですね。

おそらくこれを機に東アジアにもかつてはトガマムシがいたということがわかり、また新たな化石の捜索や研究に拍車がかかるかもしれません。
また、きっとこれを機に香川照之さんのカマキリ先生はさらに子供たちの注目を集め、「昆虫すごいぜ!」は近い将来朝ドラの視聴率をも上回るNHKの主力番組へと変貌を遂げるのだろう。
子供たちの将来の夢は「ユーチューバー」から「昆虫博士」になり、将来箕面公園昆虫館は就職希望者でパンク寸前になって中峰館長は嬉しい悲鳴を上げながら自らもトガマムシの着ぐるみをまとい「トガマムシ先生」となって新しい仲間たちと共に新たな発見への道を突き進んでいくに違いない!

国内にも「日本唯一のカマキリ化石」と同じくちゃんとした調査がされていない化石が数多く眠っているそうなので、もしかしたらその中から第二第三の新種が発見されるのかも……!
そして新たなる「昆虫琥珀」の謎と秘密が次々と開かれ、世界中で昆虫学者たちが自らの「『こころ』の欠片」を「心弾」に変え、秘密の「スキマ」目掛けて祝砲を放つんだ、絶対そうだ!!


昆虫は素晴らしい動物なのになぜか何かと好き嫌いが分かれますが、これをきっかけに子供たちの昆虫好きが加速してくれると嬉しいですね。