何とはなしに、きつねとコーラ。

管理人のきつねとその相棒のべっつりコーラが、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。

iPS細胞、慶応大がおおむね承認?いよいよ脊髄を治せる時代が来るか

慶応大、承認へ

慶応大でがiPS細胞を使った脊髄損傷の治療が認められそうなのですね。

今月13日、つまり昨日、慶応大の審査委員会が同大の研究チームの治療計画を大筋で認めたのだそうです。
正式に許可が下りれば、近いうちにチームは厚生労働省にも許可を求めに行くようですね。

そこでもし許可が下りさえすれば、来年夏ごろにはいよいよ臨床試験ができるのですね。

……なんだか「いよいよか」という気もしますし、「まだやっていなかったのか」という気もします。

脊髄損傷にiPS細胞を使った治療が効果があることはだいぶ前から言われていたと思うのですが、おそらく効果ではなく安全面での問題を解消するのに時間がかかったのでしょう。

脊髄損傷は今の所効果的な治療方法が確立しておらず、一度損傷した脊髄は現時点では治せないというのが通説だったので、この治療法が確立すれば多くの患者さんたちに希望をもたらすことになりますね。

許可が下り次第、とりあえず損傷から2~4週間程度のあまり時間の経っていない患者さんで治療の効果を試すようです。

脊髄は傷ができると傷以外の部分も炎症を起こして壊れていき、時間と共に傷が広がってしまうのですね。
また、傷ついてから2~4週間の間は傷の治りが早くなるようです。

そのためにあまり時間の経っていない患者さんで治療を行うのですね。

また、この治療で使われるiPS細胞の数は200万個ほどだと言われています。

iPS細胞は癌化することがあるなどと言われていますが、治療で使う細胞が増えるほど、腫瘍になるリスクも高まるのだそうですね。
そのため移植後1年ほどをかけて安全性を確認していくようです。

そしてうまくいったらゆくゆくは損傷してから時間の経った人……おそらく患者さんの殆どがこちらだと思いますが……も治療できるようになりそうなのですね。

間もなく脊髄損傷を治すという多くの人たちの夢が現実のものとなるのですね。

それにしてもiPS細胞……理化学研究所の網膜治療をやり、その後ついこの前京都大のパーキンソン病の治療をやったと思ったら次は同じく中枢神経系の脊髄を治療ですか。
最近何かと大活躍ですね。


脊髄

それにしても……記事だけでは脊髄損傷にどうしてiPS細胞が必要なのかがちょっとわかりづらいですね……。

「脊髄損傷は効果的な治療法がない」と色々な所に書いてあるのですが、そもそもなぜ治療法がないのでしょうか?
「体の一部に傷がついた」わけですから、普通に考えると「放っておけば傷は治る」となるのではないかと思います。

ですが脊髄というものはそう簡単にはいかないのですね。なぜならば……とその前に、まずは脊髄についての説明が必要ですね。
ここでちょっと補足を入れますね。


脊髄は脳から延びる長い神経の束で、頸椎(首の骨)や脊椎(背骨)、仙椎(骨盤に繋がっている背骨で、仙骨ともいう)、尾椎(尻尾の骨、ただし途中まで)……の背中側にある、「椎孔」と呼ばれるトンネルの中に納まっていますね。
その中には脳からの命令を筋肉に伝える「運動神経」、各センサーからの信号を脳に伝える「感覚神経」、また「交感神経」や「副交感神経」などの「自立神経」が含まれています。

脳と共に「中枢神経系」と呼ばれており、脳が思考などの高度な機能を司るのに対し、脊椎は反射などの原始的な機能を持っています。

熱いやかんに触れた時、手が勝手に引っ込むのは脳ではなく脊髄が反射行動を起こしているからですね。
こういう緊急の時にいちいち上層部(脳)にお伺いを立ててその判断を待っていては現場で働いている手がやけどをしてしまうので、現場近くにいる自分たちだけで手に撤退命令を出すという行動を起こすわけです。

実に合理的かつ機能的な見事な統率体系ですね。まるで責任分担が明確にされていて指令を上にたらいまわしにする必要がない国外の企業みたいだ。

脊髄は脳から離れるにつれて(つまり尻尾の方に行くにつれて)徐々に枝分かれしていき、それぞれの枝は体の末端部分にまで伸びる「末梢神経」となっていくのですね。
神経が枝分かれするにつれて脊髄自体は細くなっていき、ちょうど仙骨の辺りで「馬尾」と呼ばれる馬の尻尾(というより箒?)のように幾つにも枝分かれしたブラシ状の形になります。
その一部が仙骨に開いた穴である「仙骨孔」を通って足や腰に伸びていき、残りが尻尾の神経として尾椎の中(途中まで)を通って延びていくのですね。

脳から下に行くにしたがって木のように枝分かれしていくという構造上、根元である脳に近い部分を損傷すると、それだけ広い範囲に悪影響が出てしまうのですね。

末端の方の神経は運動による伸び縮みなどにも対応できるようにゴムのように弾力があり、丈夫にできていますが、脳や脊髄は固く、あまり伸び縮みはできないのですね(そもそもする必要が無いのですが)。

神経も皮膚や骨と同じく、細胞という小さな部品が沢山集まってできていますね。
また、方法はそれぞれ違うものの、皮膚や筋肉や骨などの細胞は生きている限りどんどん新しいものが作られていきます。

ですが神経は違い、ずっと同じ細胞が使われ続けるのですね。

神経細胞は本体である「細胞体」と、そこから伸びる「軸索」、軸索の末端にあって他の神経細胞の細胞体(の端子である「樹状突起」)とつながる「軸索末端」からなります。
軸索末端にある端子が、隣の神経細胞樹状突起にある端子とつながることによって回路を作るのですね。

まるで複雑に枝分かれしたUSBハブ付きのケーブルをいくつもたこ足につないでいるみたいですね。

しかし怪我をしたりしてこのUSBハブ……じゃなくて細胞体が死んでしまうと、その部分の細胞は修復できないのですね。

また神経細胞はお互いに「神経栄養因子」と呼ばれる細胞の生存に必要な物質を交換し合っているのですね。
つまり、ある神経細胞が死んでしまうことによりその隣の健康な神経細胞にこの物質が供給されなくなり、一緒に死んでしまうことがあります。

神経が傷ついてから時間が経つと傷が広がってしまう、というのはこのために起こる現象なのですね。

隣の人と、死なばもろとも。
神経細胞……手を繋ぎ合った見た目だけではなくその生き方も、まさに運命共同体だ……。

体の末端にある神経の場合、たとえ細胞が傷ついても本体である細胞体が生きていればまた新しいUSBケー……じゃなくて軸索を伸ばして他の神経細胞とつながり、生き返ることができます。
ですが脳や脊髄などの中枢神経の場合はこの能力が低く、なかなか生き返らないのですね。

そのため脊髄に傷がつく「脊髄損傷」も、普通の方法では治せないのですね。

治す方法は一つ。傷ついた神経細胞を丸ごと新しいものと取り替えてしまうしかありません。
ですが先にも書きましたが、神経はそもそも新しい細胞が作られません……。

修理しようにも、修理のための部品が無い。
新しいUSBハブ付きケーブルを用意しようにも、どこにも売っていない。

……それで今まで治療ができなかったのですね。

しかしiPS細胞の登場により、それが可能になったわけです。

iPS細胞は幹細胞ですから、どのような細胞になることもできます。
つまり、iPS細胞から新しい神経細胞を作り、それを壊れた神経細胞と交換すれば、たとえ相手が中枢神経でもその傷を治せるのですね。

……やっと今回の話題であるiPS細胞とつながりました……。
やっと本題のハブにUSBプラグを差し込めました。

これでどうして治療にiPS細胞が必要なのかがわかりましたね!


……生物の進化は、脳を含める中枢神経をいかにして保護するかに掛かっていたと言っても過言ではありません。
一度傷つくとなかなか修復できない組織ですから、保護することが大事なのでしょう。

われわれ脊椎動物は中枢神経を「骨の鎧で包む」ことで保護する道を選んだわけですね。

しかしそれ以前に、なぜ「神経を守る進化」をしたのに、「傷ついた神経を作り直す進化」はしなかったのだろう……。
そもそも神経が「傷ついても再生する組織」だったら良かったんじゃ……?

どうせなら両方やった方が良かったんじゃないかと思うのですが、この話は少々話題から外れるのでしないことにします……。


臨床試験に期待!

……今の段階ではこれしか言いようがないのですが……。

今回のニュースは「慶応大で許可が大筋で出た」というだけであって、この後実際に治療するにはまだ色々と手続きが必要なのですね……。

……医療ってめんどくさいなぁ……。

なんにせよ、今回の件は医学にとって大きな一歩であることは間違いないのだとは思います。
引き続き今後の展開を見守って行きましょうか……。