謎の星の正体は宇宙船?
またしても……
宇宙の話です。
昨日「最近宇宙の話ばかり書いてるから気分転換にエビ」とか言っていたばかりなのですが……どういうわけか私はこういう話題に目を留めてしまうようです。
去年のちょうど今頃、ハワイの望遠鏡が太陽系を横切っていく謎の天体を発見しました。
一見すると彗星のようでしたが、彗星らしい特徴が無い上に形が独特だったため、その正体がいろいろと議論の的になっているようです。
そしてことし11月12日(つまり昨日)、なんと「正体は宇宙人の探査機だったのではないか」という内容の論文がアメリカの専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されたのですね。
……宇宙人の探査機……。
地球人が小惑星探査機を作り、イトカワだのリュウグウだの小惑星を調べているのと同じように、太陽系の外にある星に住んでいる人たちが似たようなことをして太陽系に探査機を飛ばしていたのでしょうか……。
ともかく、いきさつ含めて詳しく見ていきましょう。
謎の葉巻型天体「A/2017 U1」、発見
事の発端は2017年……去年……の秋。
10月19日、ハワイの望遠鏡により、太陽系を横切るように飛ぶ未知の天体が発見されました。
「A/2017 U1」と呼ばれた天体は9月の時点で既に太陽に最接近していたらしく、当初その正体は彗星もしくは小惑星だと思われていたのですね。
最接近時点での太陽との距離は3700万キロ。
これは太陽とそこからいちばん近い惑星である水星の間の距離(5800万キロ)よりも近いですね……。
謎の彗星……水星以上に太陽とお近づきになるとは……いやはや侮りがたし。
彗星とは楕円形の軌道を描きながら太陽の周りを回っている星のことで、普通は岩や氷でできていますね。
普通の彗星の場合、これだけ太陽に近づけば表面の氷が解け、蒸気となって太陽と逆の方向に向かって噴き出すのですね。
これがいわゆる「彗星の尾」です。
ですがこの星、どういうわけか太陽に近付いたにもかかわらずこの「尾」が出ません。
このことに端を発して、一体この星の正体は何なのだという議論が巻き起こったのですね。
尾が出ないのだから氷でできた彗星ではなく岩や金属でできた小惑星なのではないか……いや、小惑星にしては形が変です。
この星は長さが400メートルもあるのに、幅がその10分の1程度しかありません。
極端に細長く、「葉巻型」などと言われたのですね。私たちの知っている小惑星は真ん丸か、そうでなくてもいびつな楕円といった形をしており、葉巻形ではないはずです。
表面はどうやら小惑星と同じ石や金属のような密度の高いものでできているようですが……。
では一体何なのか……。
当初から「宇宙船ではないか」という説がまことしやかにささやかれていたらしいのです。
ですがその後の調査により、実は表面は炭素の膜でおおわれているということがわかり、またエンジンなどの動力による動きも見られない事から宇宙船説は一度は否定されたのですね。
2017年11月にはそれが太陽系の外から飛来した星「恒星間天体」であることが確認されました。
宇宙船ではありませんでしたが、太陽系の外から飛んできた星が観測されるのはこれが初めてなので、どの道大発見です。
そして11月7日、今まで「A/2017 U1」と呼ばれていたこの星に「オウムアムア」という名前が付けられたのですね。
ハワイ語で「最初の使者」……という意味なのだそうですが、発見されたのがハワイの望遠鏡であり、また最初に観測された恒星間天体であることからこのような名前が付けられたのだと思われます。
……まさか「宇宙人の使者」という意味ではないと思います。
そしてこの星、地球にもなんと2400万キロまで近付いたのですね。
これは地球に最も近くなる惑星である金星が、地球に最接近した時の距離3962万キロよりも近いですから、ほとんどすれすれまで近付いたのですね。
もちろん月(38万キロ)よりかはずっと遠いですが……。
太陽系外からの使者……?
このオウムアムア、宇宙船ではありませんでしたが宇宙船のような構造をしていると言われていますね。
光のスペクトルの解析の結果、その表面は30~40センチほどの厚さの炭素の多く含まれる乾燥した層で覆われている……のだそうです。
物質によって反射する光の波長(≒色)が違いますから、オウムアムアが反射する光がどのような色を含んでいるかを調べれば、オウムアムアの表面の物質が何かわかるのですね。
内部は彗星と同じく氷だと言われていますが、表面の炭素の殻が宇宙船の外殻のような役割をして、中の氷が保護されて蒸発しなかったのですね。
どうやらそのせいで太陽に近づいても「彗星の尾」が出なかったようです。
スペクトル解析によるとオウムアムアはかなり前から凍っていたそうで、その成分は太陽系外縁部の星の成分と似ているのだそうですね。
木星より遠い場所では星が太陽から十分に離れ、温度も下がるため、表面も内部も大量の氷を含むのではないか……という説があるようです。
つまり、あまりの寒さに星が凍ってしまうのですね。
数十億年前、木星などの外惑星(地球より外側の軌道を回っている惑星)が作られた時に、太陽系の外側にあった「凍った星」の多くが、太陽系の外に放り出されてしまったのですね。
放り出されずにすんだ一部の星たちは太陽系の周りに留まり、今現在「オールトの雲」と呼ばれるものになっているのですね。
「オールトの雲」とは太陽系の外側を囲んでいると言われている小さな星の集まりのことですね。
殆どが水や二酸化炭素などの氷でできていると言われ、彗星はここからやって来るのではないかとも言われていますね。
この雲から外側にあふれてしまった星は、太陽の重力圏から離れてその後何十億年にもわたり宇宙を放浪することになったものと思われます。
また、太陽系と同じような恒星系が他にもあるとすれば、そこでも同じ現象が起こり、いくつもの天体が外に放り出されたと考えられます。
そしてそれらも「オールトの雲」を形作っている星と同じく氷でできているのではないか……と考えられるのですね。
つまり、オウムアムアもどこか他の恒星系から放り出された「凍った星」であり、氷でできている、と考えるのが自然なわけです。
……ちなみにこのような星は毎年4600万個程度太陽系を横切っているらしいですね……なんだか途方もない数ですが観測できたのは今の所オウムアムアだけなのですね……。
また、凍った星が宇宙空間を何億年にもわたって飛び続けることで、宇宙を満たしている放射線……いわゆる「宇宙線」で表面が焼かれて炭素の殻ができるのですね。
どれくらいのスピードで殻ができるのかはよく分からないそうなのですが、一説によれば50センチの厚さの殻ができるのに1億年かかるとも言われています。
オウムアムアも最初は普通の氷の星だったと思われますが、何億年も宇宙空間を放浪しているうちに表面がすっかり日焼けならぬ宇宙線焼けをしてしまい、炭素の殻に覆われてしまったのですね。
この殻のおかげで「彗星の尾」ができなかったのだとすればこの星は……
………あれ……。
「オールトの雲」の「凍った星」が「彗星」になるんですよね……。
オウムアムアもどこかの恒星系の「雲」になりそこなった星だとすると……つまりやっぱりオウムアムアも「彗星」だということなんじゃ……?
ただし表面が宇宙線焼けしていて「尾」が出ない彗星……
……「焼けた」彗星……でしょうか……。
太陽系から遠ざかる……
このオウムアムア、その後は太陽と水星の間を通り抜け、また太陽の重力で軌道を変え、太陽系外に向かって飛んでいったのですね。
現在も太陽系から時速15万キロ以上という恐るべきスピードで遠ざかりつつあるようで、既に現在の技術では観測できないほど遠くへ行ってしまったようです。
殆どニアミス……というか、一瞬すれ違っただけの出会いだったのですね……。
……なんだったんだ、一体。
……その正体は今もって謎のまま。
そして昨日、とうとう「宇宙人の探査機説」が正式に発表されました。……あくまでも仮説ですが……。
一度は否定されたはずの宇宙船説がなぜまた盛り返してきたのかは定かではありませんが、おそらく何らかの新しい情報がつかめたのではないか……と思われます。
オウムアムアは既に見えない所へ行ってしまったので、既存のデータを解析した結果何かが出てきたのだろうと思います。
……私としてはやはり「焼けた氷の星」説の方がしっくりくる気がするのですが……。
また、2020年に運用開始予定のすごい電波望遠鏡、「スクエア・キロメートル・アレイ(SKA)」を用いればもしかしたらまだ見えるのかも……?
………それにしてもオウムアムア、一体何だったのだろう……。
もしかしたら本当に宇宙船……なのだろうか……。
しかもただの宇宙船ではなく、母星の未来を背負った最後の一隻だったりして……。
もしかすると、遥か彼方にある「異星人の侵略により滅亡まであと1年となった滅び行く惑星」に住んでいる人たちが、「自分たちの星を救うための最後の希望」として遠く離れた味方の星に遣わした最後の宇宙船が、道中偶然地球の近くを通りがかった姿なのではなかろうか……。
エンジンをふかしている気配がしなかったのは、おそらく次のワープに備えて次元波動エンジンからのエネルギーを充填するため慣性飛行をしている最中だったからなのだろう。
太陽系を通過したオウムアムアは、ワープを繰り返しながら16万8000光年かなたの星に行き、そこで母星の環境を再生させる装置を手に入れて再び戻って来るに違いない!
その時にまた地球の近くを通るかどうかはわかりませんが……2年後に運用開始を控えた高性能電波望遠鏡、SKAに期待?