こうのとり7号、カプセル着水
昨日の記事にも書いた話題なのですが……。
あれから進展がありました。
今日の午前7時6分、例の「小型回収カプセル」が小笠原諸島の南鳥島沖に無事着水したようです。
カプセルは午前6時20分頃に高度300キロの空の上で「こうのとり7号機」の「補給キャリア与圧部」から放出されたのですね。
スラスタ(姿勢制御用の小さなロケットエンジン)を使って姿勢を制御しながら日本列島の上空約100キロで大気圏に再突入したようです。
その後パラシュートで降りていき、着水して……午前10時半頃に海の上で待機していた船に回収されたのですね。
10時半って……これを書いている時点でつい一時間前ですよ……!
そんなリアルタイムでこのようなドラマチックな展開が進んでいたとは……。この後のニュースも是非チェックせねば!
また、歴代こうのとりは南太平洋上空で大気圏突入していたのですね。
ですが7号は日本の上空でカプセルを落とすためにわざわざ突入場所を変更したのだそうです。
ごみを持ち帰って燃やすだけの歴代こうのとりと違い、7号はカプセルを日本に持ち帰る役目があったため、特別なルートを通ったのですね。
問題のカプセル
カプセルは直径84センチ、高さ65.7センチの円錐形で、重さは180キロもあるのですね。
中には「究極の魔法瓶」である「タイガー宇宙魔法瓶」を入れるための円柱型の空洞がありますが、それ以外にも姿勢制御のためのスラスタや、着地のためのパラシュートなどが入っているのですね。
スラスタがあるおかげで落ちる場所やスピード、姿勢などを自分で調節できるのですね。
……写真を見ましたが私にはどうしてもこれがグリコカフェオーレの円錐型のパックにしか見えないのですが……。
カプセルの中に入っている「タイガー宇宙魔法瓶」の内部温度は常に4度に保たれているのですね。
大気圏突入時はカプセルの表面温度は2000度を超えるといいますから、カプセルともども相当な断熱性能です。
さすがカフェオーレパックと魔法瓶……究極の組み合わせですが、もちろん中身はカフェオーレではありません。
魔法瓶には国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で作られた「たんぱく質の結晶」と「金属酸化物」のサンプル計約1キロ、それから中身の温度を4度に保つための保冷剤が入っている……のだそうです。
「たんぱく質の結晶」と「金属酸化物」……。
今日の記事を読んで、初めて新しく「金属酸化物」が一緒に入っていることがわかりました。中身は「たんぱく質の結晶」だけではなかったのですね。
ですがこれらは結局一体何なのだろう……。
「人工肉」と「錆びた鉄」みたいなものだろうか……。
いやいやわざわざ国際宇宙ステーションで作ったものなのですから、もっと凄いものに決まっています。
……でも中身がよく分からないので……どれほどすごいのかもイマイチピンと来ませんね……。
どこかで中身についても解説してくれていると良いのですが……う~ん……、どこを見ても「たんぱく質の結晶」としか書いてありません。一体何がそんなにすごいのだろう……。
たんぱく質結晶の意義
……もしかして、たんぱく質の「結晶」という所に何か重大な意味があるのでは?
そういえば石や金属ならともかく、たんぱく質が「結晶」になるなんて、ちょっとイメージがわきません。
……そう思って調べてみると……あ!ありました!JAXAさんのサイトにこの実験の解説が出ています。
ここですね……。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/theme/first/protein/index.html
それで、内容を要約すると……
・たんぱく質を研究することにより、医療、廃棄物処理、エネルギーなど、様々な分野の研究に活かすことができるので、ぜひ研究したい。
・たんぱく質を研究するためには、その分子構造を解明する必要がある。
・たんぱく質分子はとても小さく、顕微鏡などを使って見ても構造がよくわからない。そのため構造を解明するには結晶を作り、それをX線で観察する手法を使う。
・結晶は無重力の環境で作らなければ品質が悪くなり、観察が難しくなってしまう。
・重力の無い宇宙ステーションで結晶を作ろう!
……ということのようです。
なるほどそういうことだったのですね!!
結晶を作って研究しようにも、地上ではうまく作れないのでわざわざ宇宙ステーションで作るのですね!
そして「回収カプセル」と「宇宙魔法瓶」を使ってそれらを持ち帰って観察すれば、たんぱく質の詳しい構造がわかるのですね!
これはすごい研究だ……ようやっと「たんぱく質の結晶」の意味が解りました。
そしてようやっと、「宇宙魔法瓶」の凄さもわかりました。
今まではずっと地上で結晶化をしていたため、重力の影響で質の良いものができず、観察が思うように進まなかったのですね。
ですが国際宇宙ステーションの登場により無重力状態で質のいい結晶を作れるようになったのですね。
でも、そうして作られたたんぱく質結晶も、今まではアメリカやロシアの助けを借りなければ地上に持ち帰ることはできませんでした。
持って帰れなければ、せっかく結晶を作ってもたんぱく質の構造はわかりません。
そこで登場したのが「宇宙魔法瓶」の技術なのですね。
これによりアメリカやロシアに面倒……じゃないや、手数を掛けなくても、自分たちだけの力でたんぱく質を持って帰れるようになりました(成功していれば)。
……これによりようやっと、
1.宇宙ステーションでたんぱく質結晶を作る
2.作ったたんぱく質結晶を持ち帰る
3.構造を調べる
の全てが揃ったのですね。
長い間3しかなかったところに宇宙ステーションの登場で1が加わり、今回ついに2が加わった、というわけなのですね。
いよいよJAXAへ!
さて、あとは持って帰って研究するだけですね。
今回初めて国際宇宙ステーションの実験で作った物質を自力で回収したわけですが……実はそれだけではまだ終わっていないのですね。
これから中身をJAXAに持ち帰って「たんぱく質の構造を調べ」なければ。
魔法瓶の荷物はこれから南鳥島経由で飛行機で運ばれて13日に茨城にあるJAXAの筑波宇宙センターに届く予定なのだそうですね。
そこから2週間ほどかけて中身の無事を確認するのだそうです。
おそらく「構造の観察」が「無事の確認」を兼ねているのでしょう。
今現在おそらく船に積み込まれている(もしくは既に飛行機に乗せられている?)魔法瓶ですが、そういえば開封はまだしていないのでしょうか……?
……上の情報によると、魔法瓶を開封するのは13日以降になりそうなのですが……。
魔法瓶のスペックとしては「内部温度を4日間4度に保つ」というのがあります。
こうのとり7号が国際宇宙ステーションから分離されたのが8日の朝ですから……今の時点で既に3日が経っていることになりますね……。
そろそろ「保冷剤」を入れ替えた方が良いのではないかなんて思ってしまったりするのですが、船で回収した時点で既に一旦「中身の無事」を確認したり「保冷剤」を交換するために一度開封されたのだろうか……。
……JAXAに着いてから開けてみたら「落下の衝撃でぐっちゃぐちゃになっていた」とか「保冷剤が切れてクサってた」みたいな展開には流石にならないと思いますが、でもちょっと気になります。
やはり2週間後の続報を待つしかなさそうですね……。この記事もまた続きを書くことになりそうだ。
そういえば「たんぱく質の結晶」って……カタいのだろうか?