こうのとり地球へ
こうのとりの7号機が地球へ向けて出発しました。
こうのとり……は、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届けるための宇宙船ですね。
食料や服など最大6トンの生活用品……じゃなくて荷物を運ぶことができる無人の輸送船です。
H-ⅡBロケットにより打ち上げられ、高度400キロの高さに浮かんでいる国際宇宙ステーションを目指すのですね。
また宇宙ステーションに荷物を運んだあとは要らないもの(ごみ?)などを積み込んで地球に持ち帰ります。
持ち帰ると言ってもそのまま大気圏に突入して燃やしてしまうみたいですが……。
なんという……。
ごみ処理場の焼却炉を使わなくて済む分経済的なのだろうか……。
こうのとり、ことし9月23日に7号機が打ち上げられ、今の今まで宇宙ステーションに滞在していたのですね。
それが今月8日、ごみ……じゃなくて不要な荷物を乗せて地球に帰るため宇宙ステーションを出発しました。
ただ今回こうのとりに乗っているのは不要な物だけではないようです。
宇宙ステーションには日本の無重力実験棟である「きぼう」がありますが、ここで行った実験により生み出された物質を持って帰るのですね。
この持ち帰りの過程そのものがどうやら壮大な実験のようです。
宇宙ステーションで作られた物質を持ち帰る実験は日本では初めてらしいのですが、そこにはなんと、あの有名な会社が関わっていました。
究極の魔法瓶、誕生
大阪府門真市の有名なあの会社、「タイガー魔法瓶」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と一緒に「真空二重断熱容器」というものを開発しました。
事の発端は2015年だったようで、JAXA側からタイガー魔法瓶に開発を持ちかけたのですね。
その目的は「宇宙ステーションの実験で作られた物質を、冷蔵状態のまま地球に持って帰る」こと。
そのための条件として、大気圏に入った際の高熱から中身を守り、なおかつ海に落ちた時の衝撃に耐えられるほど丈夫な容器が必要だったのですね。
そこで目を付けたのがタイガー魔法瓶だったのですね。
タイガー魔法瓶は魔法瓶業界の中では後発でしたが、「虎のように強く、壊れない魔法瓶」をコンセプトにその勢力を伸ばし、今ではお馴染みの魔法瓶メーカーになっていますね。
その強度が宇宙分野で活かせると思われたのでしょう。
「断熱容器」の仕組みは基本的には普通の魔法瓶と同じなのですね。
容器を形作っているのはステンレス製の二重構造を持つ壁で、間に真空の空間を作ることで熱を通さず、中身の温度を一定に保つのですね。
ただし大きさは直径29センチ、高さ34センチ、重さ10キロと、普通の魔法瓶よりずっと大きいので、ステンレス板同士を溶接するときに精度が落ちる上に、単純に大きいため凹んだりなどして変形しやすいのだそうです。
……写真を見ましたがなかなかの大きさでした。学校の給食でスープとかを作るのに使う「寸胴」くらいの大きさがあるんじゃないかな……。
先日私が買った「煮込み鍋」よりも大きいかも……。
そこで1年半設計を試行錯誤し、その結果壁に使うステンレスの厚さは普通の魔法瓶の4倍になったのですね。
また、真空容器自体も内側の容器と外側の容器の二つを用意して、それぞれを箱のふたのように重ねあわせて二重にしたようです。
(段ボール箱……じゃなくてご贈答用のおせんべいが入っている厚紙の箱のふたみたいな形です。)
これにより重ねあわせる部分の面積が大きくなるので、より断熱性が増し、保温性に優れた設計になったのですね。
また強度の面でも無事に条件を満たすことができたのですね。
まさに「宇宙魔法瓶」です。
宇宙で作ったものを地球に送る時はふつう、電気を使って温度を一定に保つそうです。
ですがこの容器は電気を使わずに保冷剤のみで温度を維持できるので電気代がお得なのですね。
つまり、「冷蔵庫」と「魔法瓶」の関係なのですね。
…………そのまんまじゃん。
また、今までは宇宙ステーションで作ったものを地球に持ち帰るにはアメリカやロシアの宇宙船で運んでもらうしかなかったのですね。
ですが今回の宇宙魔法瓶の実験により日本独自の回収方法を確立でき、また将来的には物だけでなく人を地球に持ち帰るのにも役に立つのではないか……と言われています。
……ま……まさか……!
高度400キロから人を乗せた巨大魔法瓶を投げ落とすつもりなのでしょうか?
帰りのロケット代をケチったJAXAが「大丈夫大丈夫、タイガーなんだから!」と言って宇宙飛行士たちを棺桶よろしく巨大な魔法瓶に乗せ、そのまま地上へポーン……!
確かに魔法瓶は大気圏突入時の熱に耐え、また海に落ちても壊れませんでしたが、その中に乗っている人は着水時の衝撃をもろに受けて………。
……………などという恐ろしい展開にはならないですよね、きっと。
JAXAさんなんですから何とか安全無事に帰還できるようにしてくれるでしょう。
……でも確かに疑問です。
魔法瓶自体はものすごく頑丈で壊れなかったとしても、その中に入っている物はどうなのでしょうね……?
……余計な事は気にせず、本題に戻りましょう。
この宇宙魔法瓶、もし回収に成功すれば「電源無しで冷蔵品を回収できる日本初の断熱容器」になるのだそうです。
現在タイガー魔法瓶はJAXAと共にこの容器の特許を出願中なのですね。
……究極の魔法瓶……市場に出回るのだろうか……?
JAXAのオーダーメイドになりそうな気がするのですが……。
今回の宇宙魔法瓶の役割
ところで、今回この宇宙魔法瓶の中に積み込むのは「宇宙ステーションの無重力の中での実験で結晶化されたたんぱく質」……なのだそうです。
……なんだかよくわかりませんが凄いものなのでしょう。
また魔法瓶に入れるくらいですから「要冷蔵」なのでしょう。
たんぱく質……だからスーパーで売られているお肉みたいなものなのだろうか……。
前に冷凍状態のお肉を夏の暑い日にハラハラしながら持ち帰ったことがありましたが、あの時このような容器があったら便利だったのに。
とにかく、この「たんぱく質」を宇宙魔法瓶に入れ、それをさらに「小型回収カプセル」に詰め込んでこうのとりと一緒に地球へ落とすのですね。
回収カプセルはアポロ宇宙船の司令船……もしくはグリコカフェオーレの容器を縦に押しつぶしたような「とがっていない」円錐型をしていて、落下のためのパラシュートや姿勢制御のための補助エンジンがついているようです。
また中には円柱形の空間があり、この中に宇宙魔法瓶を入れるのですね。
このカプセル、現在はこうのとり7号の頭にある「補給キャリア与圧部」という部分に積み込まれているようですが、大気圏に入る前にこうのとりから分離されるのですね。
こうのとり自身はいつものように大気圏に入ってからは燃え尽きるようです。
……こうのとりと一緒に大気圏に突入するとカプセルも一緒に燃えてしまうのだろうか……?
無事に成功するか
気になる宇宙魔法瓶とカプセルの行く末ですが、カプセルは明日11日朝にパラシュートを開いて太平洋、南鳥島の近くに着水する予定なのですね。
その後海にプカプカ浮かんでいるところを船で回収して日本へ持ち帰るようです。
こ……これは……!!!
歴史的で壮大な実験が今現在まさに進行中で、しかも明日には結果が出ると!?
なんという瞬間に立ち会うことができるのでしょう!これは明日の朝を待つしかありません!
できれば正確な着水・回収の時間が知りたいところですが……具体的に言って何時頃なのでしょうね……。
あっでも魔法瓶の要求仕様に
時速200キロでコンクリートにぶつかっても壊れない強度と、大気圏突入時の高温下でも中の温度を4度前後に保てる耐熱性。
さらに中身を取り出す時間を考えて4日間以上内部温度4度を維持できる保温性。
……とありましたので……、実際にカプセルが回収されて魔法瓶が開けられ、中身の無事とミッションの成功が確認できるのは4日後くらいになるのかな……。
……………続報を待ちましょう!