何とはなしに、きつねとコーラ。

管理人のきつねとその相棒のべっつりコーラが、日々の出来事について思ったことや感じたことをただ淡々と述べていくだけのブログ。

童謡「赤とんぼ」の町で赤トンボの繁殖に成功!着々と数を増やす!?

トンボ

言わずと知れた人気者の昆虫ですね。
夏になるとそこらじゅうを色々な種類のトンボが飛び回り、よく子供たちが網を持って走り回っていますね。
シオカラトンボ、オニヤンマ、ギンヤンマ……自然の豊かな場所だけでなく、街中でもこれらのトンボを見かけます。

このトンボ、実は昆虫の中でもかなり古いタイプのもので、およそ3億年ほど前の石炭紀には既にご先祖様が生息していました。

別々な方向に自在に動く四枚の翅と大きな眼により、昆虫の中でもずば抜けた飛行能力・運動能力と視力を持っています。
同じく高い飛行能力と動体視力を持つ昆虫であるハエを空中で捕まえることができるのですから相当な運動神経ですね。

昆虫に限らず節足動物の眼は「複眼」といって、「個眼」と呼ばれる小さな望遠鏡のような形の目が沢山束になって集まってできていますね。
5億年以上前のカンブリア紀頃に皮膚から進化したものだと言われており、この個眼の数が多いほど解像度も高くなります。

個眼一つでは一つのピクセルしか認識できませんが、たくさん集まることで高解像度の画面として周囲の景色を見ることができるのですね。

トンボの個眼はなんと3万個!
……とんでもない数ですね。現生の節足動物の中では唯一、カンブリア紀の最強の生物と言われる節足動物アノマロカリス」の1万6千を超える解像度です。

「とんぼのめがね」はすごいのですね。


アキアカネ

さて、今回の話題は童謡「とんぼのめがね」ではなく……童謡「赤とんぼ」の方です。

赤トンボは「赤卒(せきそつ)」とも呼ばれ、広義には

ナツアカネ(Sympetrum darwinianum)
アキアカネ(Sympetrum frequens)
ノシメトンボ(Sympetrum baccha matutinum)
ミヤマアカネ(Sympetrum pedemontanum elatum)
ヒメアカネ(Sympetrum parvulum)

など、シンペトルム属(赤トンボ属)のトンボの総称ですね。

世界ではおよそ50種類の赤トンボが見つかっており、うち日本で発見されているのは21種類いるのですね。

狭義にはアキアカネのみを指し、童謡に歌われている赤トンボもアキアカネなのですね。


アキアカネ Sympetrum frequens(シンペトルム・フレクエーンス)はナツアカネと近縁のトンボで、見た目もナツアカネにそっくりですが、最近では数が減り続けています。
多分、普通に遭遇できる赤トンボは今ではほとんどがナツアカネで、アキアカネに遭遇することは稀なのではないでしょうか……。

元々暑さが苦手なトンボで、6月下旬ころにヤゴからトンボに羽化した後は気温が低い山奥で夏を過ごすようですね。
そして涼しくなる秋頃に平地に降りてきて、田んぼや湿地に卵を産むようです。
子供は卵の状態で冬を越し、翌年の春にヤゴとなって水中でミジンコなどの小さな動物を食べながら成長するのですね。

ただ、近年では休耕田が増え、また一部の農薬の影響で幼虫であるヤゴの数が減り、全国的に絶滅の危機に瀕しているようです。
平成に入ってからは全国の半数以上の都道府県で生息数が1000分の1以下に減っていると思われ、鹿児島、富山、大阪、兵庫、徳島、長崎などは既に「レッドリスト」に登録しているようですね。

1000分の1!!
このたった30年間で!!
それは大変だ……早く保護をしなきゃ!

……ご安心下さい。幸いなことに、本当にアキアカネを保護してくれている人たちがいます。


兵庫県たつの市NPO法人「たつの・赤トンボを増やそう会」

先に挙げた童謡「赤とんぼ」の作詞をした三木露風さんの生まれ故郷、兵庫県たつの市で、地元有志が集まり2008年に結成されたNPO法人があります。
その名も「たつの・赤トンボを増やそう会」!

全国的に減っている赤トンボを増やそうと赤トンボ(アキアカネ)の繁殖活動を10年も続けているのですね。
これまでに1354匹のアキアカネを羽化させることに成功したそうです。

アキアカネに対する愛とネーミングセンスの光る法人名だけでなく、実績も素晴らしいですね。


事の発端は2007年だそうで、この年にNPOの理事長、前田清悟さんは、地元の旅館の社長さんに「どこに行けば赤トンボを見られるのか尋ねられて困った」と打ち明けられたのだそうです。

童謡の「赤とんぼ」は三木さんが子供のころに見た故郷の風景を思い出してつづったと言われています。
50年以上前、前田さんがまだ中学生だったころは童謡のとおり赤トンボがそこらじゅうにいたたつの市でしたが、2007年時点で既に確実に赤トンボを見られる場所は無くなってしまっていたのですね。

これはいけないと思った前田さんは、13人の仲間を集めてNPO法人を立ち上げ、アキアカネの繁殖活動を始めたのだそう。

……すごいですね、この行動力……。
きっとアキアカネに対する思いが溢れて止められなくなっていたのでしょう。

最初は知識もなく、手探りで失敗を重ねながら繁殖を続けていったのだそうです。
そして専門家の方の協力もあり、2011年に初めて15匹の羽化に成功したのですね。
それからは2012年に68匹、2015年には303匹と誕生するトンボの数は年々増えていき、今年2018年夏には351匹と過去最高の数の羽化に成功したのだそうです。

また、繁殖活動以外にも、「赤トンボを増やそう会」はアキアカネに優しい農薬を使ったり、稲刈りが終った後もアキアカネが卵を産めるように田んぼに水を残しておく農法を提唱していて、地元農家の人たちも協力してくれているみたいですね。

これを見てトンボの生態に詳しい石川県立大の上田哲行名誉教授は「アカトンボの人工繁殖は全国でも珍しい。たつのは乾燥しやすく、アキアカネの繁殖は難しい土地だが露風の故郷という危機意識がここまでの実績に繋がったのだろう」と仰ったそうです。

……すごい……!
町のみんなが協力し合ってアキアカネを守ろうとしているのですね!
きっと前田さん以外にも、赤トンボの町なのに赤トンボがいなくなってしまったという危機感を持っている人は大勢いたのでしょう。
「たつの・赤とんぼを増やそう会」が先駆けとなってこんな動きが全国各地で広まれば、きっとアキアカネが絶滅することもなくなるのでしょうね。

きっとこれから至る所で同じような活動をする人たちが現れて「鹿児島・赤トンボを増やそう会」とか「大阪・赤トンボを増やさん会」とかが結成され、いずれ全てのレッドリストからアキアカネが削除される日が来る……といいなぁ……。
そして近い将来にはナツアカネもアキアカネも同じように夏と秋の風物詩となる時代が取り戻され、童謡「赤とんぼ」の風景を「今時非現実的なファンタジーだ時代劇だ明治時代だ」などと思う子供たちはいなくなるに違いない。

余談ですが今日きつねも赤トンボに遭遇したのです。
なぜか町の自動販売機のディスプレイの缶が並んでいるところを飛び回っていたのでした……一体何をしていたのだろう……ジュースが欲しかったのかな?

おそらくアキアカネかナツアカネかのどちらかだったと思うのですが、如何せん素早く飛び回るばかりで止まってくれないのでどちらだったのか判別ができませんでした……たぶんナツアカネだと思うけど。
すぐ手の届くところまで下りてきたのですが捕まえられたのかな……?でもヘタに手を出して怪我をさせてしまっても申し訳ないですし……。

アキアカネとナツアカネ、似ているようで微妙に違います。
もし赤トンボに遭遇する機会がありましたらどちらなのかをじっくり観察してみるのも面白いかもしれませんね。
アキアカネに遭遇できたら、きっといいことがある……かも……?